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2000.11.27
 
 


80年代から始まっていた大きな変化…

  「失われた10年」を語る人が多い。たいていは、バブル破綻の後遺症という見方だ。ところが、技術屋が集まり議論すると、見方は異なる。
 80年代から始まっていた大きな変化への対応を先延ばしにし、バブル破綻後も70年代型の繁栄に戻ろうと画策したのが間違いと考える。

 実は、政治の話しだけでない。コンピュータ産業界が典型例だ。
 ダウンサイジング(パソコンの爆発的普及)とネットワーク化の重要性はわかっていた。価格低下が進むことも理解していた。しかし、グローバル展開力を欠く日本のコンピュータ・メーカーは動けなかった。自社の屋台骨を揺るがしかねないから、動きを遅らせたともいえる。日本でパソコン低価格化(半額化)の風穴を開けたのは外資だ。日本企業の打ち手は限られており、動くことは困難だった。一方、政治は企業の動きを追認するだけだった。
 その結果、経済沈滞を切り開く牽引車は登場しなかった。要するに、政治家はITの重要性が理解できないのだ。

 最近、政治家は一転して、IT投資を進めて経済成長実現、を主張し始めた。しかし、ITの見方が変わった訳ではない。
 IT製品の凄まじい価格低下による爆発的な普及が進むことで、産業構造変革が加速され、経済が活性化する。構造変化無しに、成長するとは考えにくい。「前川レポート」の約束はほとんど反故にされ、突然、IT重視型の財政政策を展開しても、構造改革は進まない。ところが、政治家は、構造改革せずにIT投資を進めて効果をあげようと考えている。驚くべき発想だ。

 日本の政治家は、時代感覚が70年代のままなのである。80年から始まった凄まじい「デフレ」環境を認識していないのであろう。日経商品価格指数(17種)を眺めるとよくわかる。(為替など、すべての要因に敏感な指数)1980年から2000年のグラフを見ると、1980年の170近辺から2000年9月の77まで、バブル期も無関係に一貫して凄まじい低下傾向だ。1970年より下回っている。(http://www.indb.co.jp/graph_new/html/BUKKA107.htm)
 この状態は、常識からいえば、モノ余りだ。供給過多の状況で、ニーズを掘り起こして成長すべし、との主張はミクロには正しいが、マクロでは無理だろう。産業構造を変えて、新しい成長余力を生み出すしかあるまい。そのきっかけを作るのがITである。---ITは打ち出の小槌ではない。


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