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2001.5.8
 
 


科学技術系経済学者の主張…

 科学技術を経済的視点から眺めるプロフェッショナルの意見に耳を傾ける国とそうでない国があるようだ。日本では、このような学者自体が目立たない。一方、米国では、“経済科学技術政策学者”Nathan Rosenbergの名前はウォールストリートでもよく知られている。

 21世紀は、科学技術政策立案過程に、科学技術系経済学的な視点が組み込まれるかどうかで、国の優位が決まると思う。これからは、科学技術がどのように生産性向上に寄与するかという洞察力が重要である。こうした見方を欠いた経済論議を繰り返しても、先進国では経済発展は期待薄ではなかろうか
 エコノミストのITによる生産性向上についての議論と違い、科学技術系経済学者には根底に科学技術の歴史観がある。この歴史観に基づいた洞察力なくして、経済発展の原動力を見つけることは無理だろう。

 Nathan Rosenbergの見方は説得性がある。(シュンペーターが指摘したイノベーションの意義の重要性を語っている。)
 電気の発明が生産性向上に寄与するのに40年かかったが、コンピュータの発明から40年たっても生産性向上は顕著とは言いがたい。このように技術が生産性向上にインパクトを与えるまでに時間がかかる理由は、当該技術自体の問題ではなく、補完技術開発と普及がなかなか進まないせいだというのだ。
 実務者の言葉に翻訳すれば、キーアプリケーション開発が生産性向上の鍵を握るという指摘といえよう。
 ということは、補完技術創出の仕組みが国力の源泉だ。基礎的な科学技術で力量不足なら、資源を投入すればよいといった表層的政策ばかり推奨する「権威者」の見方とは180度違う。
 勿論、米国には、このような技術が生まれてくる基盤があるからこそ、世界のリーダーとして君臨できるとの主張である。
 (参考文献:Nathan Rosenberg & David Mowery: "Paths of Innovation: Technological Change in 20th Century America", Cambridge University Press, 1998)


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