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2001.8.10
 
 


シリコンサイクルは続くのか…

 SIA(Semiconductor Industry Association)の2001年8月発表の統計によれば、6月の半導体の販売額は対前年比3割減、対前月比8.8%減である。(http://www.semichips.org/news/archives/gsr08012001_16.htm)
 アメリカ、ヨーロッパ、日本、アジアの4市場のすべてが落ち込んでおり、一番落ち込みが激しいのがアメリカで対前年比45.1%減、一番軽微な日本ですら対前年比20.0%減という、凄まじい変化である。
 過去40年間、業界は、平均成長率17%で伸張してきたが、シリコンサイクルと称される4年毎のアップダウンを経験している。そのため、今回の落ち込みも、いつものシリコンサイクルと見る人が多い。
 シリコンサイクルは、参入企業が競って大型の設備投資を進めるために、需要と供給のギャップが急激に広がり、値崩れが発生する現象といえる。習熟曲線(生産コストは累積生産量に対して指数関数的に低下)が成り立つとすれば、いち早く次世代製品を大量生産することが、成功の鍵となる。このため、どうしても製品の世代替わり期に生産能力過剰が発生するのだ。
 SIAの見通しによれば、DRAM市場は2001年に29%減、2002年は29%増、2003年は31%増になる。(http://www.semichips.org/news/archives/gsr06062001_10.htm)この数字を見ると、2001年の落ち込みはいつものシリコンサイクルだという気になる。しかし、そう単純に考えてよいだろうか。
 注意すべきなのは、今までの需給ギャップの基本は供給過剰だった点だ。需要自体は、若干のブレはあるものの、堅調に伸びてきた。いうまでもないが、コンピュータの需要が牽引車だった。
 問題は、今回の落ち込みも同じかどうかだ。例えば、指標製品ともいえるDRAM価格は1年間で約8分の1になるという、かつてない変化のスピードである。かつての経験では、生産過剰が明らかになると調整が始まるから、これ程急激な動きになることはなかった。ということは、調整で対応できるようなギャップではなかったといえよう。
 今回の需給ギャップは供給側の問題もあるが、衝撃を与えたのは需要側と考える方が自然だ。コンピュータ需要が急速に萎んだことで発生したのであろう。コンピュータのバージョンアップ需要だけでは成長鈍化は避けられないということではなかろうか。新しいキーアプリケーションが産まれないと需要の伸びが期待できなくなった可能性すらある。もし、そうなら、シリコンサイクルとは全く異なる現象だ。従って、生産側の対応が進めばいずれ市況は復活する、というシナリオが成り立たない可能性がある。


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