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2002.10.27
 
 


無責任なエコノミスト…

 調整が片付く2002年後半から企業業績はV字型回復、との予測を聞かされてきたが、TOPIXが850に達し、流石に楽観論は消えたようだ。
 そのかわり、今こそ政府の財政出動を、との昔からの主張が息を吹き返しつつある。さらには、大規模企業減税しか活路無し、という意見まで登場した。
 論点も整理せずに政策論議を続ける、エコノミスト達の無責任な主張にはあきれかえる。なかには現状認識が違うままで議論を始める。議論が空回りするのは当たり前だ。

 そもそも、世界経済はデフレ傾向にある、との認識が一致していない。
 発展途上国経済のロシア・東欧、インド、中国が、モノが有り余る先進国経済に組み込まれグローバル化すれば、先進国で価格低下圧力が発生するのは当たり前だ。
 中国本土でさえ生産量増強でデフレ傾向が現われているのだから、日本だけがデフレ圧力を免れる方策がある訳がない。
 従って、デフレ抑制型金融政策は、他の政策をスムースに行うための、一時的、かつ、補助的政策でしかありえない。

 次ぎは、国内経済の課題解決を海外に頼るべきではない、との意志一致が重要だ。
 米国は膨大な貿易赤字を抱える国であり、これ以上増やせばドルへの信頼が失われかねない。円安は輸出産業を活性化させるし、輸入品価格上昇でデフレ抑制にもなるが、世界の枠組みを崩しかねない。為替相場操作や輸出振興策で国内経済を活性化させる試みは、冒険的な動きと見なすべきだ。

 こうした前提のもとで、日本における企業の資金需給状況の実態認識を共有することが議論の出発点といえよう。
 日本企業は相変わらず借入金削減を図っているし、手持ち株の処分も続いている。同時に、設備・労働力過剰の是正が進んでいる。企業経営としては当然の流れだ。今や、健全企業は資金流入先ではなく、資金流出元である。しかも、スリムで強靭な経営を目指す企業ほど、社内のキャッシュフローで回すから新たな借入れを避ける。
 従って、実質ベースで超低金利を実現しても、一向に健全企業の借り手は増えない。逆に、借りたい企業は問題企業ばかりになりかねない。このような状況で金融緩和を進めても、経済状況好転などあるまい。減税したところで、国内投資に動くとは思えないし、ましてや雇用が増えることなどありえまい。
 金は余っているが、借り手は政府だけだ。

 問題ははっきりしている。伸びる産業登場の兆しが全く無いのである。
 産業勃興に繋がらない無駄な施策を続けた結果といえよう。産業政策の失敗である。

 ところが、エコノミストは、これを金融業界の問題に転嫁したいようだ。確かに、経済の根幹たる金融問題を解決しなければ一歩も進まないが、解決した所で、一歩進むとも思えない。にもかかわらず、エコノミストは産業政策については語ろうとしない。
 エコノミストは政府を批判するが、最初に批判されるべきはエコノミストの無責任な姿勢ではないのか。


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