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2002.12.7 |
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狡猾なデフレ克服論者…21世紀はデフレの時代であり、弱肉強食の世界になるのは間違いない。ところが、この流れを変えようと、必死にもがく政治家がいる。そして、その後押しをするエコノミストがいる。主張は勝手だが、優良企業に余分な借金をさせて、設備投資に踏み込ませようとの画策だけは許し難い。 デフレ進行とは、債務の自然増を意味する。優良企業が借金を避けるのは当然の成り行きである。 このような時代、短期資金は別だが、研究開発費や設備投資は自社キャッシュフロー内か増資でカバーするのが基本である。間接金融市場で借り手不足だからといって、優良企業に借金経営を勧めるなど、言語道断である。 そもそも、グローバル経済下では、従来型施策でデフレ潮流が変わる訳がない。世界的に見れば、労働力と生産能力の需給ギャップが余りに大きすぎ、1国の政策では対応しようが無いからだ。 エコノミストなら、この需給ギャップが、どの程度か示してから、施策を主張すべきだ。 ところが、このような指摘から巧妙に逃れる能力が、エコノミストの特技らしい。 グローバル競争に巻き込まれている企業関係者なら、上記の需給ギャップは肌身で感じており、「常識」である。ところが、それ以外の人にとっては、必ずしも「常識」ではないらしい。そのため、説得には、データが要求される。 しかし、グローバル経済に対応する統計は乏しい。その上、統計のとりかたによっては、「常識」に反するようなデータもある。そのため、需給状況の認識を曖昧にしたまま、議論ができるのである。 典型例は、米国の失業率問題だ。失業率が低下するとインフレ圧力が高まる、との古典的主張を続けるエコノミストが多い。従来型施策しか考えられない人達の代表である。労働需給がタイトになるから、給与水準が高まると考える訳だ。 しかし、現実にそのようなことがおきるだろうか。統計に含まれない移住者の数は巨大である。底辺では職をすぐに埋める余力がある。しかも、企業は徹底的な合理化を進めてきたから、労働者全体の所得低下が続いてきた。すこしでも高所得な空きポストができれば、労働者は殺到する状況にある。従って、失業率が下がっても、賃金上昇どころか、低下圧力が強い。IT技術者不足に至っては、インドや中国の労働力を活用できるから賃金は益々下がる。 中国でさえ、同じ状況である。普通なら、顕著な経済成長に伴って賃金は高騰する筈だ。現実にはこのような事態は発生しない。続々と新規低賃金労働者が登場するからだ。賃金は下に張りついたまま変化しないのである。 世界的に見て、賃金高騰によるインフレ圧力など無い。基本的にデフレ傾向である。 生産能力問題については、自動車産業が好例といえよう。アップダウンはあるが、消費が大きく増える可能性は低い。低迷する需要に対して、供給余力は巨大である。当然、業績不調企業は、設備削減とコスト競争力強化を図る。これに対して、勝ち組も、コスト削減競争に注力せざるを得ない。価格低下は必然である。しかも、新モデル導入による価格上昇もできなくなった。業界全体が、基本的にデフレ傾向だ。 家電にしても、中国市場の競争を見ればわかるように、とてつもない生産過剰状態だ。 どこを見ても、先進国の消費量増加は期待薄なのである。その一方で、供給サイドは、この市場を対象に生産能力拡大を続けてきた。すでに大きなギャップが生じている。しかし、過剰是正の動きはない。 統計データからは読みにくいが、日本だけがデフレ化した訳ではない。世界中で進行したのである。米国の医療サービスのように、高騰した例外部分があるため、統計上の変化を和らげ、動きが緩慢に見えるのである。 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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