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2003.4.10
 
 


日銀の賭け…

 年2回の恒例である、IMFの「World Economic Outlook」が2003年4月9日に発表になった。(http://www.imf.org/external/np/tr/2003/tr030409.htm)

 これによると、2003年の経済見通しは暗い。

 世界全体での成長率は3.2%である。
 GDPの約5分の1を占める米国の成長率が2.2%、約6分の1を占めるユーロ圏は1.1%、日本は低迷し0.8%だ。アジアの新興地域だけが6.0%と気を吐くが、SARSが四半期続くと0.4%減少する見込みだという。
 要するに、先進国は潜在成長率にも達しないのだ。
 しかも、世界全体の予測値は前回から0.5%も落ち込んでおり、状況悪化が顕著である。回復基調が始まるのは相当先と読んでいるのだ。2004年の後半に、どうやら通常に戻るとのシナリオだ。

 こうした状態を突破するには、欧日米の当局(ECB/BOJ/Fed)がインフレーション目標を明確に示すべき、というのがIMFの主張だ。
 特に、日銀に対しては、デフレ阻止に動くべきとの指摘がなされた。金融緩和策を進め、インフレ率2%以上を狙え、というのだ。

 デフレ克服が重要なのは、素人でもわかる。穏やかなインフレも、皆が熱望しているといえる。
 しかし、ゼロ金利が続いており、従来型政策が全く機能しない。IMFのエコノミストが語るように、ゴルフでいえば、バンカーから抜け出ようと、からまる砂と格闘している状態だ。
 この状態では、ターゲットを設定しても、期待感によるデフレ終息などありえない。にもかかわらず、ターゲットを設定しろ、という。
 当然ながら、尋常な施策では約束は果たせない。約束を守ろうとするなら、それこそ、輪転機を回すような「猛毒」の服用に踏み込むしかない。リスクは覚悟し、不退転の決意で臨め、ということだ。

 日本経済はついに断崖にまで追い込まれており、リスクを張るしかない、と諭された訳だ。

 確かに、今の状況では、日本は世界経済の足を引っ張っり続けるだけで、回復の見込みが立たない。世界的視野で見ているエコノミストがが苛立つのも当然だ。
 しかも、日本政府にまかせておけば、何時までも放置しかねない。実際、産業再生機構は、どう見ても企業淘汰ではなく、政府による企業延命策でしかない。銀行部門も、自己資本の質の向上とは思えない資本増強策に走っている。とても金融改革が進んでいるとは言い難い。「竹中改革」は絵は描いたが、結局のところ、何も変わっていない。

 こうなると、日銀政策を問題視するしかあるまい。日本の状況を変えられそうな機構は、日銀以外、残っていないということだ。
 ついに、日銀が、賭けに出ざるを得なくなった。


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