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2003.4.15
 
 


構造改革派の大分裂…

 2003年4月14日、日経平均がバブル後最安値の7,752.10にまで下落した。日本の代表的企業の株価が軒並み歴史的安値を記録している。マスコミは、このような報道になれ切っているようで、問題の深堀もしなくなった。

 報道のトーンは大同小異で、ポジティブな話しは全く聞こえてこない。・・・企業業績はリストラ効果がでてきたから回復基調とはいえるが、外需/個人消費のどちらも期待薄だから、この先の見通しは暗い。政策論議は、「先送りと凍結」が中心であり、改革効果は何時現われるのかわからない。新たな景気回復策が登場することもなさそうだ。.....こうしたなかで、市場の売り圧力は極めて高い。積極的な買い手は見つからない。政府のPKOも限界がきている。

 要するに、ほとんどの人が、株価が下げ止まる可能性は薄い、と見ている訳だ。

 どう考えても、妥当な予測である。しかし、余りに妥当すぎ、この予測に衝撃を受ける人もいないようだ。今まで、その場しのぎで、なんとかなってきたから、危機感を失ってしまったようだ。

 日経平均は、日本を支える企業の株価指標である。ベンチャー企業の株とは違う。その値が7,000円に近づいている。10,000円や9,000円レベルで下落している話しとは本質的に違う。このラインを切れば、解散した方がまし、との意見がでる。こうなれば株式市場瓦解だ。
 変化は予想以上に早い。今や杞憂とは言えない状況である。14日の市場状況を見れば、ビジネスマンなら平常心を失いかねまい。

 同日夕刻に、日本経済団体連合会/日本商工会議所/経済同友会が、今後1年間適用すべき証券税制措置要望書を提出したが、当然の動きだろう。(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2003/030.html)
 尤も、内容はたいしたものではない。
    1 株式相続課税をさらに半分に軽減
    2 譲渡益/配当課税を非課税化
    3 譲渡損失と給与/事業所得の合算課税

 この提言に対して、同日夜開催された月例経済報告関係閣僚会議は、消極的姿勢を貫いた。 (http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=80000004&sid=ahu38slBWdmo&refer=top_mof)
 自民党麻生太郎政調会長も「それをやったから株価が上がるか、何とも難しいと思う。」「もっと下がるかもしれない」し、「第一、買うのかね」、と語ったという。 (http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=80000004&sid=avVaGetNL4gk&refer=top_mof)

 対策の効果についてだけ見れば、もっともな発言といえよう。たいした効果が期待できない施策なのだから、政府が乗り気にならないのも当然に映る。
 実は、一番の問題は、こうした見方にある。

 以上は「平常時」の見方である。このままでもなんとかなるなら、冷静に効果を判断して決断すればよい。正論である。
 しかし「非常時」に、なんの対応もしなければ、事態は悪化一途になりかねない。対応にスピード感が無ければ、危機が増幅されるからだ。
 「非常時」の観点で見ると、14日夜の政府の態度は最悪だった。

 問題は2つある。

 第1に、政府関係者には、このまま放置すれば経済が瓦解しかねない、との認識が無い点。・・・日本の株価低落を、世界的な株価低落の一環と見なし続けている。日本市場が深刻な問題を抱えているとは思っていない。
 第2に、すでに基本的な施策は導入済みだから、粛々と改革を進めると問題は解決できると考えている点。・・・「平常時」なら、その通りである。まだ「非常時」では無いと判断していることになる。

 つまり、日本に危機が迫っていると考えていない。・・・正しい判断だろうか。もし、判断を誤れば、悲惨な状況に落ち込む。
 この点で、改革派の一部に危惧感がある。このまま、のんびりとしたスピードで改革を進めると、奈落の底に突き落とされるのではないかと感じ始めたのである。正論追求の時期は終わった、との見方ともいえる。

 ところが、この見方をとると、急進改革側にもかかわらず「正論反対」になる。見かけ上は、守旧派と同じだ。改革派は突然の大分裂に見まわれる。そして、大混乱が始まる。


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