↑ トップ頁へ

2003.4.29
 
 


ハードランディング政策の開始…

  ITバブル期 当時の高値 直近 最近の安値
ソニー 2000年3月1日 32,600円 2003年4月28日 2,720円
富士通 2000年1月4日 4,730円 2003年4月14日 302円
TOPIX 2000年2月7日 1,754.78ポイント 2003年3月11日 770.62ポイント
 日本を代表する優良銘柄の現物売りが殺到し、株価がつるべ落し状態になっている。
 2003年4月25日(金)/28日(月)と2営業日連続で、ソニーの株価が、値幅制限500円いっぱいまで下落した。しかも、ストップ安比例配分となり、売り注文が残っている。年初から46%下がったにもかかわらず、まだ止まらない。純資産倍率は1.1に達した。
 富士通の低落も厳しいものだ。純資産倍率は1を切っている。
 89年12月18日にはTOPIXが2,884ポイントだった、とはとても信じられない状況だ。惨憺たるものである。

 政府の遅々とした政策がどれほど実害を与えるか、教科書に載せたいような展開である。

 2002年暮れにかけては、大量の個人売りが出た。・・・業者も説明が難しい税制改定のお蔭で、個人株主がお蔵入り株を換金せざるを得なくなったからだ。それでなくとも僅少なシェアの個人株主がさらに減った。
 そして、2003年3月末にかけて、企業が持ち株売りに走り始めた。・・・当たり前である。2002年期決算が赤字になれば、銀行が資金引き上げに図ることは見えている。利益が出るなら、何でも売り払う。

 株価下落で青くなったのが銀行だ。ITバブルの頂点だった2000年3月期に、貸出資産の悪化をカバーするために、手持ち株の含み益はすでに吐き出し済みだ。といっても、帳簿上の辻褄合わせだから、手持ち株の株価が下落すればひとたまりも無い。株式売却しか道は残っていない。お蔭で、金融システム安定のために、中央銀行が株を買うはめになった。
 あげくの果てに、銀行が増資要請を始めた。こうなれば、企業は、ほかの株を売って、銀行株を引き受けざるを得まい。

 さらに、年金返上のための株の換金売りが加わる。・・・売り一色になるのは当たり前だ。

 イラク戦争、米国景気、北朝鮮リスク、を株価低落の根拠として指摘するのも結構だが、上記の流れを無視できる訳があるまい。しかも、素人でも想定できる内容だ。プロにとっては、こうした流れこそ、レバレッジをかけて大儲けを狙うチャンスだ。従って、政府が対応しなければ、市場は大きく揺らぎかねない。

 しかし、小泉政権は、「市場にまかせる」方針のようだ。ハードランディングやむなしということだろう。


 「政治経済学」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com