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2003.5.21 |
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米国デフレ報道を読む…日本の新聞の経済欄を読む気がしない、と語る人が増えている。断片的な情報と、政争がらみの背景説明ばかりだからだ。知っていて隠しているのか、あるいは全くわからないのか、どちらか判然としないが、肝心な情報や本質を突いた解説には滅多にお目にかかれない。 これでは、新聞購読はお金と時間の無駄でしかない。 無料のインターネット版NYTimesを読んだ方がましだ。海外ニュース中心とはいえ、見方を提起する記事や、オピニオンが満載だから、ずっと役に立つ。意見の違いのポイントも、日本と違って分かり易い。 投書を読むだけでも、頭の整理につながる。 例えば、これだけ物価が上昇しているのに、どこがデフレだ、との短いレターが掲載されたりする。グリーンスパンにこのメールを回せ、と立腹している様子が見てとれる。(http://www.nytimes.com/2003/05/13/opinion/L13FEDD.html) 経済問題論議の難しさが、このレターだけでも、よくわかる。・・・日本でも、内閣府の2003年4月のレポートでは、米国はインフレ国と見なされている位だ。 (http://www5.cao.go.jp/keizai3/2003/0426sekai031-s.pdf) 見た目では、デフレ傾向を感じなくても、デフレは始まっていることが多い。こうした兆候を読めるかどうかが、エコノミストのセンスだ。初期に対処できるかどうかでで、勝負がつく。 新聞への期待は、こうした先読みのプロフェッショナルの意見や、見逃しがしがちな動きの指摘である。日本の新聞は、こうした観点では極めて貧困と言わざるを得ない。というより、意図的に議論を避けているのかもしれない。 NYTimesでは、2003年5月9日の記事「Fed Is Starting to Fret Over Falling Prices」で、FRBもついにデフレを本格的に心配し始めた実態が明らかにされている。(http://query.nytimes.com/gst/abstract.html?res=F40810FC3C5B0C7A8CDDAC0894DB404482) FRBが一枚岩という訳ではないから、こうした記事は貴重といえる。 当然ながら、こうした話しが広がれば、状況は変わる。新聞の影響は大きい。 今や、デフレ懸念論者が多数派になりそうな勢いになって来た。イラク戦勝利で、石油価格が低下し、景気も回復する、との楽観論を語っていた人達が姿勢を変え始めたのだ。 例えば、WashingtonpostのコラムニストSamuelsonは2週続けてデフレ問題を取り上げている。(「Deflation Boogeyman」「Stubborn Stagnation」 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A52286-2003May13.html http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A22863-2003May6.html) このままなら、日本型の新式停滞が米国でも起きるとの主張である。 ドラスティックな不況ではなく、スローモーな経済低迷が、世界中に蔓延し始めたのではないか、と危惧しているのだ。日本のように、「まもなく回復」との意識を捨てきれずいると、低迷から脱出できない、と見ているのである。 USA Todayにも、5月16日に「Inflation? Deflation? Basic knowledge can aid investing」との分かり易い記事が掲載された。(http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/usatoday/20030516/bs_usatoday/5165112) 楽観主義の塊のような米国人が、デフレを気にし始めた点に注意すべきだ。考え方が変われば、マネーの流れも一気に変わるからだ。 米国の状況は深刻である。5000億ドルを越す経常赤字の上に、2003/4年には巨大な財政赤字が発生する。しかも、金利低下一途の状況下なのだ。 常識的に考えれば、FRBは、さらなる短期金利低下策と、長期金利低下策に動くことになる。しかし、日本の90年代の教訓を生かすなら、これに留まる筈があるまい。十分なインフレ余地を残せる方策を加えざるを得まい。そうなれば、ドル安の推進だ。 こう考えれば、投資家がドル売りに動くのは当然である。 この読みが広がれば、アジアやロシア危機並の通貨激動もあり得る。日本の新聞を見ていると、こうした状況が、さっぱりわからない。 せいぜいが、サミットでは、世界デフレとの共通認識には至らなかった、との見解を伝える程度だ。 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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