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2003.8.4
 
 


Fortune500を読む(3:医薬品産業)…

 
資産収益率 北米企業 欧州企業
10%以上 MERCH
J&J
PFIZER
ABBOT LABORATORIES
WYETH
ELI LILLY
SCHERINGT-PLOUGH
GLAXOSMITHKLINE
NOVARTIS
ASTRAZENECA
0〜9% BRISTOL-MYERS SQUIBB(8%)
PHARMACIA(3%)
AVENTIS(6%)
赤字 ROCHE GROUP
 (出典) "FORTUNE" 2003年7月21日 F-21
 Fortune500の医薬品産業産業には欧米の14社がランクインした。このハイテク産業には日本企業は登場しない。企業規模が全く違うのである。

 この産業の収益性はナンバー1である。
 例えば、WYETHの利益率(対売上高)は30%に達している。業界の中央値でも17%という高さである。
 しかも、資産収益性が高いから、投資家にとっては魅力的な産業といえよう。PFIZERはなんと20%に達している。500社中2位だ。(中央値は13.6%)

 この産業の成功の鍵は製品であるから、研究開発方針如何で収益性は大きく左右される。

 この議論での、一番の問題は、研究開発における規模の経済が成り立つかどうかだ。おそらく、大雑把な分析なら、成り立つまい。リード段階で見た生産性は、どう考えても規模の効果は薄いからだ。

 しかし、問題は開発段階にある。臨床領域の活動を考えれば、規模の効果は絶大である。
 開発業務とは、医薬品成分の効果をヒトで実証する単純作業ではない。当該医薬品を使った治療方法のノウハウを開発する複雑な作業なのである。しかも、この業務には、どう見てもクリティカルマスが存在する。
 そうなると、巨大な開発プラットフォームを維持し続けている企業は強い競争力を発揮できる筈だ。
 プラットフォームと簡単に呼んだが、その実態構造は、社内外の「知」のネットワークである。このネットワークの魅力を保たないと、開発力は低下する。そのため、ネットワーク維持のために、基礎研究も必要となるのだ。社内の基礎研究は、この点でも極めて重要なのである。この観点で社内の基礎研究を進めているから、社外からリードを調達しても、一向にかまわないのである。

 要するに、欧米企業は規模の経済を生かして、グローバルに開発プラットフォームを維持できるだけの巨大な開発費を投入し続けているのだ。そして、「そこそこ」の研究費を投入して、トータルで、研究開発費比率を抑えている。
 潤沢なキャッシュフローに支えられて、「安定した自転車操業」の研究開発運営を進めているとも、いえよう。必ずしも安泰とはいえないモデルなのである。

 といって、日本企業にチャンスがあるとも言い難い。
 日本企業はFortune500に出番が無いほど規模が小さい。ほぼ10分の1だから、世界レベルで開発のプラットフォームを維持するのは難しい。従って、まともに欧米のリーダーと戦おうとすれば、「それなり」の研究開発費を投入するしかない。同じやり方なら、欧米企業並の収益性実現は無理なのだ。


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