↑ トップ頁へ |
2003.8.5 |
|
|
Fortune500を読む(4:写真フィルム企業)…写真フィルムの世界では、中国のローカル製品を除けば、Fuji、Kodak、Agfa、Konica(Sakura)の4ブランドしかない。昔から、寡占化された業界である。Fortune500では、この分野は「科学・写真・制御機器産業」区分だ。写真フィルムなら化学材料産業だが、どちらかといえば機器産業という位置付けになっているといえよう。このカテゴリーに属すのはFujiとKodakの2社だけである。
よく知られているように、富士写真フイルムは、20年にわたって高収益を続けている優良企業である。巨人コダックに対する日本企業の挑戦との図式で語られる時代はとうに去り、いまや富士写真フイルムは売上高でコダックを抜く世界一の会社だ。しかも、独自の技術を活用したイメージング市場の多角化に忙しい。 特に、銀塩写真技術とデジタル技術の融合に優れており、独自のCCD開発にも成功している。 技術マネジメント力には定評がある。(例えば、橋村晋著「富士フイルム 日本型高収益経営の秘密」2002年) ところが、Fortune500のデータを見ると、日本の優等生も、普通の会社に近づいてきたように映る。 売上は伸びたが、利益は低下した上、資産利益率が2%程度なのだ。 この状況は、日本のエレクトロニクス機器大手の状況を彷彿させる。 技術進歩が速いから、研究開発費用負担がきついし、生産設備更新の投資も頻繁に必要となる。シェアを失えば壊滅的打撃を被る、ダイナミックなビジネスである。一寸の間でも独走できると、巨大な利益が実現できる一方、熾烈なシエア争いが続けば、増収減益になったり、突然、膨大な赤字に遭遇する。技術マネジメントが稚拙であると、資産利益率は極めて低くなる。 収益性が低い企業と、同じような体制で優劣を競うだけなら、高い資産利益率など期待できない産業なのである。高収益なフィルム産業から、低収益なエレクトロニクス産業へと、事業基盤が移動していることを意味するのかもしれない。 ということは、エレクトロニクス産業で高収益を実現できる、新しい技術マネジメントの仕組みに挑戦する必要があるということになろう。 一方、EASTMAN KODAKはキャッシュフローの最大化一直線の経営を進めている。 欧米では、旅行者数の減少がフィルム消費量低下に直結する。当然の売上低迷にもかかわらず、増益である。お蔭で、2002年の配当込みの一株当り利回りは25%だったという。ダウ・ジョーンズ工業株価指数構成銘柄の中で最高値である。 不振事業を切り、優位な技術の早期収益化を狙い、外部との戦略的連携も活発だ。 エレクトロニクス産業における新事業も、ディスプレイ分野に絞り込み、先を走れそうなOLEDに資源を傾注している。 デジタルカメラでは日本企業と日本のエンジニアの力を活用する方策を採用することで、高収益を実現しているようだ。 イメージング産業をどう変えるかというビジョンをもとに、2社が競争しているといえよう。 画像出力をどう捉えるかという観点で見れば、両者は知の巨頭といえる。 高度な技術を駆使する一方、フィルムカメラを登場させたり、Yジェネレーションにモノクロ写真を流行らすなど、新しい文化を作り出す力量を持っているのだ。 一見、エレクトロニクス企業のデバイス開発力が産業発展を牽引しているように見えるが、実は、イメージング企業が新しい産業を切り拓くかもしれない。高収益企業の挑戦が始まる。 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2004 RandDManagement.com |