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2003.8.11 |
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Fortune500を読む(10:化学産業)…
[尚、ASAHI GLASSは仏のSAINT-GOBANと同じ「BUILDING MATERIALS, GLASS」産業に分類されている。] 1990年代は、不調な産業だったため、資本市場からのプレッシャーで変身せざるを得なかったといえよう。 1990年の発表リストを比べると、この産業の変貌がよくわかる。 かつての化学の巨人は、医農薬、プラスチックス、化成品、機能材、等のポートフォリオ経営を進めていたが、現在の欧米化学企業にはその面影は無い。 コア事業の収益力強化と非効率事業撤退を迫られ、事業売却・買収で大幅な事業再編を進めたからである。医薬/農薬の完全分離とコア事業の統合集約が一気に進んだ訳である。特に、原料サイドの新興勢力の勃興で、コモディティ型の産業の大胆な統合で、業界地図は一変したといえる。お蔭で、懐かしい企業名が消滅した。
[1990年発表リストで示すなら、両社の売上合計は、119億ドル(86+32)になる。] しかし、ランクインしたといっても、欧米企業とは意味が異なる。欧米企業がやめてしまった総合化学業態を今もって続けているからだ。 このことは、日本の巨大化学企業は、国際競争に無縁の市場で生きていると言えよう。 [実際、三菱化学の国外売上は微々たるものである。] 欧米の化学企業は、自社の特徴を生かせる戦略策定に力を注いでいるのだが、日本だけは今もって均質競争モデルから抜け出せないのである。 要するに、売上規模は大きいが、その内容は、小さな事業の集合体にすぎない。つまり、競争力があるからランクインしている訳ではない。日本の特殊性なのである。 特に問題になるのが、研究開発分野である。総合化学という業態は、非効率な分散投資を行っていることに他ならない。グローバルな視点では、クリティカルマスに達しない研究開発体制の事業が揃っているともいえる。 従って、独自技術開発を狙っても、圧倒的な力を発揮できる程には資源投入ができない。結局は、技術提携で地位保全するしかないのである。 換言すれば、コア領域で技術の深堀りをすることはできないのである。従って、常に、チャンスありそうな領域に手を広げる経営になる。自転車操業型技術展開なのだ。 このような上澄みで生きようとする企業が存在する限り、明確なコア領域を持つ化学企業は、チャンスがあっても、拡大には躊躇することになろう。低収益でも参入してくる可能性が高いからである。従って、狭い範囲で、技術リーダーを目指すことになろう。 しかし、このような企業は、技術を武器に、買収や合併を進めれば、奏効する可能性が高い。世界に雄飛するチャンスが転がっている、といえよう。 技術経営に邁進すれば、間違いなく高収益企業に変身するだろう。但し、市場自体は大きくないから「Fortune500」に登場することは難しいかもしれない。 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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