↑ トップ頁へ |
2003.8.19 |
|
|
Fortune500を読む(18:欧州のエネルギー/ユーテリティ産業)…日本人は、「ENERGY」分野と言うと、どうしても石油精製業を思い浮かべてしまう。油井探索から、巨大精製プラント運営、その下流の石油化学業までの、壮大なコンプレックス事業が代表と考えがちである。しかし、精製施設運営を主体としないエネルギー企業もある。「Fortune500」ではこれを「ENERGY」分野として別途取り扱っている。 ところが、よくみると、電力やガス業界に参入している企業も数多い。電力・ガス事業はもともと「UTILITIES」産業として定義されていた企業群である。 つまり、産業構造が大きく変わりつつあり、公益と非公益の区分も意味が薄れてしまい、従来の分類では業態が見えなくなっているといえよう。 エネルギー分野は国情で産業構造が大きく異なるから、欧州系と米国系企業に分けて見てみよう。
「ENERGY」産業の動きを理解するのに最適な分野は水道事業だろう。 日本では、水道といえば、自治体サービスと考えるが、世界の潮流から見れば、この分野は民営化が進み始めている。その結果、多角化エネルギー企業が力を発揮している。 (但し、日本でも、2002年4月に水道法が改正され、民営化の動きはある。) 民営水道市場では、仏SUEZと仏VIVENDYがシェアの過半を占めていると言われており、これに独RWEが続くといった状況のようだ。 (VIVENDYはランクに登場しないが、コンゴロマリットなのでエンタテインメント分野でランクインしている。) 発展途上国の水道も多く、カントリーリスクを抱える事業である。国情で妥当なサービス品質を変えざるを得ないのだが、要求の方は厳しいし、投下資本も膨大になるから、マネジメントが極めて難しい事業といえよう。 (http://www.worldbank.org/wbi/B-SPAN/docs/SAUR.pdf) 現実に、SUEZはアルゼンチン経済の混迷で赤字に直面している。 常識で考えれば、カルテルを駆使して、公共サービスを独占的に取り仕切らない限り旨みがなさそうなビジネスである。 発展途上国ビジネスの急成長は目立つが、エネルギー/ユーテリティ産業を大きく変える原動力になっているのは、欧州における公的サービスの民営化の流れである。 例えば、イタリアの電力公社はガス分野等にも参入している多角化企業EDISONと、ENDESAに発電事業を譲渡した。 (注: ENDESAは石油精製分野でランクインしている。) 当然ながら、、米国企業の欧州市場参入も盛んだ。一方、東欧市場開拓に注力する欧州企業も多い。欧米企業が急速にグローバル化し始めたのである。 要するに、電力、石油、ガス、熱といった形態で分かれていた産業分類に意味が薄れ、垣根を越えた競争が始まったのである。しかも、この周辺に位置する水道や廃棄物処理業もこの中に含まれるようになった。 欧州政府の基本は、自由化だから、上流のエネルギー源探索機能から、下流の配給までの流れについても、分解・統合の動きが発生している。 政治主導で、エネルギー産業の再興が始まっているのである。 といっても、この先も紆余曲折がある産業といえる。例えば、英国では電力価格が低下したが、電力事業者が採算割れに直面することになれば、産業そのものが成り立たなくなる可能性がある。政府も新たな施策を打ち出さざるを得まい。 尚、GASUNIEは、もともとはオランダのガス田からのガス供給ビジネスの半官半民企業である。こちらは、エネルギー多角型事業を目指すことはあるまい。井戸開発は実態的にはSHELLやEXXONのような企業が担当しており、最終的には地域配給企業や、ガス輸送企業に変身することになろう。 GAZPROMはロシア最大の企業である。資源国だから、膨大な量の天然ガスを供給している。当然ながら、民間企業とはいうものの、政権と密接に係わる政商だ。 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2004 RandDManagement.com |