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2003.8.20
 
 


Fortune500を読む(19:米国のエネルギー/ユーテリティ産業)…

 「ENERGY」「UTILITIES」分野のランキングを見ると、石油、ガス、電力、地域熱だけでなく、水道や廃棄物処理まで、業種の垣根を越えた競争が始まっているのが見て取れる。
 欧州企業に引き続き、米国企業の動きを見てみよう。

分類 米国企業
ENERGY AMERICAN ELECTRIC POWER
TXU
EL PASO(ガス系)
CINERGY
RELIANT RESOURCES(RELIANT ENERGY)
UTILITIES DUKE ENERGY
EXELON
PG&E CORP.
FIRSTENERGY
EDISON INTERNATIONAL
SOUTHERN
AES
XCEL ENERGY
DOMINION RESOURCES
 (出典) Fortune 2003年7月21日 F-18/22
 「ENERGY」では5社、「UTILITIES」では9社がランクインしている。

 「ENERGY」分野のトップ、AMERICAN ELECTRIC POWERは米国最大の発電業者である。今では、オランダでも発電業務を行っている。

 2位のTXUは、企業名でわかるように、もともとはテキサス地域の石油・ガス企業だった。ところが、1990年代後半に、英国政府がエネルギー分野で競争政策を採用したことから、企業買収で国際化を始めた。今では、英国のCENTRICAの競争相手である。
 米国内の電力自由化にともない、運営形態も大きく変わっている。発電企業、送電企業、配電(小売)企業、マーケット企業、ガスパイプライン企業といった組織構成だ。
 この状況を見ると、小売企業と卸企業を分割した自由化したところで、競争力とは、結局のところ資本力ではないかという印象を与える。

 米国の電力業界はもともとは地域毎の企業から構成されていた。これが、1996年の送電線開放策で状況は一変した。地域独占の規制業種が、自由競争産業に変わったのである。
 この結果、地域を越えた動きが始まる。
 例えば、1999年にNORTHERN STATES POWERとNEW CENTURY ENERGYが合併してXCEL ENERGYが生まれている。地域専業の業態からの離脱が始まったのである。
 電力需給が切迫していたこともあり、各地域で新規参入が相次ぎ、業界構造は大きく変わる。
 すべての企業が自由市場化に合わせ一挙に動いたのである。

 しかし、カリフォルニアの電力危機や、ENRON問題が発生し、順調な推移とは言い難い状況である。今後についても、どのような展開になるかは不透明である。
 といっても、米国では自由化が停滞することはあるまい。
 すでにトレーダーが参加できるエネルギー市場は十分機能しているようだし、エネルギー/ユーティリティ産業に対する様々なサービス産業もできあがっているからだ。

 ここまで進むと、勝者と敗者の差は今後拡大一途と思われる。実際、2003年7月にはMIRANTがチャプター11適用企業になっており、コスト競争が熾烈化するのは間違いあるまい。

 自由化問題については、様々な議論があるが、この業界の技術進歩が止まった点を忘れるべきでない。1990年代に入ってから、エネルギーコスト低下を実現する効率向上に飽和感が生まれたのである。従来型の産業構造の場合、効率向上で販売価格低下を実現すれば、エネルギー/ユーティリティにもメリットが働く仕組みを基本としてきた。この仕組みが機能しないのなら、競争の仕組みを取り入れざるを得ない。抜本的な合理化や、新しい方法で低コストを実現できる供給者が勝者になるように仕向けるしかないのである。


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