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2003.8.22 |
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Fortune500を読む(21:金属)…
鉄鋼関係は5社だから、日本の存在感はあるが、厳しい産業である。JFE HOLDINGS売上利益率1%だったが、NIPPON STEELや欧州2社は赤字である。 鉄鋼産業の上流、原料側の代表である鉄鉱石産業で見ると、トップ4グループ企業が市場の過半を占めている。 一方、下流の顧客側代表、自動車産業で見ても、トップ6グループ企業が市場の過半を占めている。 ところが、鉄鋼業の集約化だけは大きく遅れている。 この原因は、欧州を中心に、1国1高炉型のナショナリズムが基調にあったからだ。しかし、ついにその時代に終わりが来たようだ。 といっても、企業統合が多少進んだというだけで、今もって上流・下流産業のような寡占状態には程遠い。 その理由は、日欧米で大企業が統合しても、それ以外の地域が十分な生産能力を持っているからである。 韓国POSCO、台湾CSC、中国上海宝山鋼鉄、といった新興企業組は機会を求めて常に伸張を図っている。実際、ランクインしたPOSCOは売上高利益率8%を実現し好調である。後発ほど最新の合理的設備を持てるし、労働コストも低いから、当然の結果といえよう。中国に至っては、生産能力増強を続け、今や、鉄鋼生産量世界1である。旧ソ連の鉄鋼産業もダンピングせずに生きのびれるまでに回復してきた。もちろんブラジルも堅調のようだ。 お蔭で、日欧米は抜本的対応を迫られることになった。 最悪は米国である。2002年には、ついに壊滅的状況に陥った。政府の支援を受けても、再生可能か疑わしい。USSを核とした再編に進む以外に手はないだろう。米国企業の特徴は、とんでもなく古い大型工場をスクラップにせず稼動し続けた上、人員削減も回避してきた、消極的な経営姿勢にある。いよいよ、どうにもならなくなったといえよう。 (米国の統合の動き:USS+National Steel, ISG+Bethlehem Steel) 一方、欧州では統合が進んだ。2001年に、粗鋼生産世界最大の企業ARCELORが誕生したのである。欧州では、早くから、工場のスクラップ・アンド・ビルドを進めた上、人員削減にも取り組んできた。さらに規模の経済を生かせる方策を選んだ、といえよう。 (ARCELOR:ルクセンブルクARBED+西COCKERILL-SAMBRE+仏USINOR SACILOR) 日本は、長らく高炉6社体制を続けてきたが、こうした圧力にさらされ、ようやく、新日本製鉄・住友金属工業・神戸製鋼所グループとJFE HOLDINGSの2グループ体制ができあがった。 (旧6社:新日本製鉄、NKK、住友金属工業、神戸製鋼所、川崎製鉄、日新製鋼) こうした状況下では、日本企業の強みは技術力しかあるまい。 研究開発費は小さくなってしまったが、営々と磨き続けてきた金属組成コントロールのスキルやコンピュータ活用能力は今もって世界トップレベルにある。これを生かせれば高い競争力を実現できる筈だ。 実際、新日本製鉄は日本の自動車メーカー8社向け薄型鋼鈑市場で約4割のシェアを獲得しているそうだ。高張力鋼製造技術や、プレス成形シュミレーション技術で優位に立っていることを示すといえよう。 一方、JFEも、方向性電磁鋼板、自動車用ナノハイテン材、シームレスパイプといった高度技術製品を持っている。 しかし、こうした市場セグメントは一部にすぎない。コモディティでも、ある程度のコスト競争力を発揮できる技術開発ができない限り、飛躍は難しいといえよう。 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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