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2003.8.31
 
 


Fortune500を読む(30:環境ビジネス)…

 「Fortune 500」の業種分類の最後、MISCELLANEOUS分類に入った雑多な企業、10社のなかの、特徴的な企業のもう1つが環境ビジネスである。
 (出典:Fortune 2003年7月21日 F-22)

 まずは、この分類で、トップ売上のVEOLIA ENVIRONMENT [仏] だ。
 環境ビジネスでは早くから有名になったWASTE MANAGEMENT [米] もランクインした。

 “Environmental Services”は米国では古くから業種化しているから、WASTE MANAGEMENTは当然のことだが、欧州のVEOLIA ENVIRONMENTが登場したことで、この分野でもグローバル化が始まったことがわかる。

 一口に環境ビジネスといっても、機器や設備といったハードビジネスから、施設運営や廃棄物運搬といったサービス事業まで幅広い。新産業といっても、既存産業の組替え部分が多く含まれている。
 この組替えを促進できるかが、環境産業創出の鍵といえよう。

 法律による環境規制をいくら進めても、性格上、環境法は産業の構造転換を実現するものではない。従って、誰が作っても、ザル法にならざるを得ない。しかし、こうした動きにのって、民間企業が動ける余地を広げれば、新しい産業構造を作ることはできる。環境優先の社会に変えたいなら、核となる新しい企業を育てるべきである。
 日本は、この施策が決定的に遅れている。

 特に重要なのは、サービス企業の育成である。知識やスキルで差別化できる企業が育たなければ、一部の産業だけが環境対応するという歪な状況になりかねないからだ。
 すでに、その弊害は顕著である。

 日本は、鉄や紙のリサイクル水準は高い。それ以外の産業でも、環境対応は進んでいると言ってもかまわないだろう。
 しかし、ほとんどが既存産業構造を前提した、ハード絡みの技術活用だ。
 強固な産業基盤が存在している分野は、環境コスト負担が重くても、業界安定策でもあるから、環境対応を進めるインセンティブが存在する。当然ながら、技術も、仕組みも、高度化する。
 ここだけ見れば、日本は優等生であることは間違いない。

 しかし、その一方で、ヘドロや、混合廃棄物のような、既存産業が対処できない分野では対応が遅れる。こうした分野では、多少の規制を始めたところで、企業にとっては、環境コスト負担者に見合うメリットなど見えないから、なんの効果も生まれまい。おそらく、こうした分野では、問題は深刻化一途だろう。
 マクロで見れば、日本は、極めてバランスが悪いのである。問題は放置されたままになりかねない。

 環境問題で緊要なのは、こちらの方であり、優等生が片手間に取り仕切れるものではない。

 膨大な量の様々な廃棄物を、低コストで処理する技術やスキル開発と、運営インフラを担える企業の育成を急ぐべきといえよう。
 この分野の企業が、「FORTUNE 500」に登場できそうにないなら、環境対応先進国との看板は外すべきだろう。


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