↑ トップ頁へ

2003.9.2
 
 


Fortune500を読む(32:保険)…

産業 企業総数 日本企業数
銀行 62 6
証券 4 0
生保(相互+株式) 13+19 8+0
損保(相互+株式) 2+15 0+3
多角化金融 6 0
 (出典) Fortune 2003年7月21日 F-16/17/19/21
 金融業については、連載の冒頭で「銀行」を取り上げたが、続いてその他の金融業を取り上げなかったから、こちらもざっと眺めておこう。

 Fortuneの金融関連分野は表に示すように7つに分かれている。銀行以外は、証券、生保、損保、多角化金融(GEのような業態)である。
 証券は企業数が少なく、日本企業はランクインしていない。  保険業の企業は、銀行同様、数が多い。日本企業は生保に8社、損保に3社がランクインした。

 メーカーや流通と違って、金融業は実態がわかりづらいので、日本の生保の経営実態をS&Pの格付けで見てみよう。

 ランクインした日本の生保8社のうち、STANDARD & POOR'S格付け(2003年6月27日)で、AAA/AA/Aとの評価を受けたのは僅か3社に過ぎない。日本の生保は二極化してしまったことがわかる。
 (BBB+が2社、BB+が1社、B+が1社、CCC-が1社で、3社は資産の毀損が特に激しいと言えよう。)
 [格付けBB以下は、「強みを上回る不安定要因を有する可能性がある」とされる。]
 ランクインしているING GROUP[蘭]、AXA[仏]、PRUDENTIAL FINANCIAL[米]、MANULIFE FINANCIAL[加]、AFLAC[米]といった進出企業の体力とは相当の開きがある。

保険財務力
格付け
国内 外資
AAA アリコ・ジャパン
AA+ マニュライフ生命保険
AA アメリカンファミリー生命保険
AA- ソニー生命保険
東京海上あんしん生命保険
アイエヌジー生命保険
アクサグループライフ生命保険
アクサ生命保険
GEエジソン生命保険
ハートフォード生命保険
プルデンシャル生命保険
A+ 損保ジャパンひまわり生命保険
大同生命保険
日本生命保険
A 太陽生命保険 ジブラルタ生命保険
A- 第一生命保険
富国生命保険
www.standardandpoors.com/japan/ratingsactions/rating_list/rating_list_insurance.html
 コスト削減やリスク資産の圧縮を進めると言っても、資産運用益は僅かであり、市場では生保離れが激しいから、大きな効果は期待できまい。  しかも、生保/損保の相互参入が始まっており、競争は激化一途である。

 生保の負け組みが復活する道は閉ざされているように思える。

 一方、日本の損保企業は自己資本水準が高いと言われているから、大手損保には生保が抱えるような問題はない。

 しかし、日本の損保は株式問題を抱えている。総資産の3割近くを株式で保有してきたのだ。株式保有が保険契約獲得になるからだ。この、旧態依然たる「営業」文化から抜け出せるか、が問われている。
 自由化は始まったし、国際化も進む。この先は、競争激化一途である。
 ミレア、損保ジャパン、三井住友海上、あいおい、日本興亜、ニッセイ同和の6大損保体制ができたのも、戦略的動きというより、他に選択の余地がなかったとも言える。

 結局のところ、FORTUNEのランクで見れば、ニッセイグループ、ミレア保険グループ、第一生命・損保ジャパングループ、三井住友グループがグローバル競争を繰り広げることになるのだろう。

 いづれも、規模では、世界の強豪と並ぶことができるが、競争力は未知数である。
 欧米では、専門分野で徹底的に力を磨いて、世界に通用する競争力を備えてから、相互合併に進む。
 ところが、日本企業は何が切り札かさっぱりわからない。同じような運営体制の企業ばかりだから、集まったところで強みが発揮できる保証などない。

 これから、いよいよ本格的に欧米の保険グループとの市場争奪と、規模による運用収益力の時代が始まる。
 はたして、日本企業は競争力向上を実現できるだろうか。


 「政治経済学」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com