↑ トップ頁へ |
2003.12.2 |
|
|
日銀へのツケ回し…2003年5月1日付けで、日本銀行政策委員会は、「金融商品に係る会計基準」等を踏まえ、本行財務の明瞭性向上を図る観点から、「会計規程」の一部を変更した。この変更により、円貨建債券の評価は、移動平均法から償却原価法に変わる。(http://www.boj.or.jp/seisaku/03/seisak_f.htm) なんの変哲もない発表だが、よく考えれば、とんでもない大変更である。 突然、次年度から国債の評価を変えるのだ。しかも超巨大な資産が対象である。10月末現在で保有国債額は93兆円にのぼり、実に総資産の70%を占めている。 (http://www.boj.or.jp/about/03/ac030930.htm) 決められたルールを長期に渡って遵守することが会計原則と思っていたが、日銀の考え方は違うようである。 従来のルールは低価法である。簿価と時価を比べて、低い価格の方を資産価値と認定する方法だ。市場価格が下がれば、資産が目減りしたことが白日に晒される仕組みだ。どのような財務状態か、一目瞭然になる、透明な方法といえる。 ところが、日銀は、このような透明な評価を止めるのだ。 簿価との価格差の「損」を、決算時点で表面化させたくないのである。差額部分は当該債権の満期までで償却していくという。 これで、国債価格が下落しても、膨大な評価損が損益計算書に載らなくなる。 ということは、国債暴落に備えた動き以外のなにものでもない。国債価格が下落しても、損を計上しなくてすむようにしたのである。 確かに、どうしようもなくなっている。僅か10ヶ月で国債を10兆円も積み増すような経営をしているのだから。(2002年末の日銀保有国債は83兆円) そして、2003年11月、平成15年度上半期決算が発表された。 経常利益として、1,958億円の赤字(前年同期比4,840億円減)が計上された。 (http://www.boj.or.jp/about/03/zai0311a_f.htm) 予想された通り、長期金利上昇で保有国債損は巨額にのぼった。(長期国債関係損益は7937億円の赤字)自己資本比率は7.38%と低下一途である。酷いものだ。 日銀は、算数で、この赤字を帳簿上から消すつもりなのである。来期は、同じことが発生しても、黒字になる。一安心という訳だ 改革の気概など全く感じられない。とりあえず問題を隠蔽できれば大成功なのだ。これでは、長期的視点での戦略の議論などできる訳がない。 政府の円高阻止政策もまったく同じだ。実体経済や市場の状況とも無関係に、ただただ口先介入を続け、円高阻止を図る。 とりあえず、簡単にできる方法で問題隠蔽を図るのだ。とてつもないコストを支払っても、その場しのぎを続けるつもりである。弱体産業の崩壊で騒がれなければ、政権維持できると考えているのだろう。 こうした態度を、Bloomberg NewsのWilliam Pesek Jr.コラムニストは「Blah-Blah-Blah Policy」と名付けている。 (http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=10000039&refer=columnist_pesek&sid=aGZQ_batvTEc) 面倒な改革より、お気軽な為替操作を選ぶ政治に呆れ返っているのだ。 日本は、かつては、こうではなかった。石油高騰時も、超円高時も、一丸となって知恵を出し合い、対処してきた。つらくても避けられないと考え、不退転の決意で構造変革を進めてきたといえよう。 頼りになるのは、グローバル企業だけかもしれない。遅れに遅れたが、コスト競争力を失った事業分野はほぼ切り捨てたし、中国への生産体制移行も進んだ。 例えば、エレクトロニクス企業は中国への輸出/輸入の両方で収益を得る体制ができたし、為替変動への対応力も高まった。当然の変革である。 対応ができない企業や、産業は滅びるしかない。その資源が伸びる産業に向けられるから発展が図れるののだ。この原則を破れば、ツケが回ってくるだけの話しだ。 今のままなら、収益力を強化した企業は、滅びるべき企業に足を引っ張られるだけである。にもかかわらず、強靭な企業ほど、なんの主張もしない。政府に変革を迫るつもりはないようだ。 あるいは、あきらめて、日本国籍を外す道を歩み始めたのかもしれない。 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2004 RandDManagement.com |