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2004.2.14 |
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伸びるテーマパークとは…テーマパークを観光産業の核と考える人が多い。確かに、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーの集客力は抜群である。年間2,500万人が来園する。もちろん高収益事業である。 海外からの来園者は1.6%だという。(1) 海外からの来園者は、思ったほど多くはないが、テーマパークの役割が小さいと誤解すべきではない。 アジアの人達は、日本人が楽しむスポットに憧れを持って訪日する。どのようなパークで遊ぶことが楽しいかを、富裕な日本から学ぶと言ってもよいだろう。 従って、ディズニーランド一人勝ちが続けば、日本自体には特段の魅力は無いと見なされるだろう。これでは、日本の観光業はジリ貧になりかねまい。 (アミューズメントパークの世界市場では、ディズニーグループが圧倒的な強さを発揮している。) これは杞憂ではない。 日本では、ほとんどのパークが業績不調に落ち込んでいるからだ。 特に、第3セクター型パークは最悪だ。2003年には、ハウステンボス(長崎)とスペースネオトピア(新潟)、2002年には、長崎オランダ村(長崎)、メディアパークつくば(茨木)、ネイブルランド(福岡)と、倒産が続いている。(2) 歴史ある遊園地も廃業に追い込まれた。東京では横浜ドリームランドや向ヶ丘遊園、大阪では宝塚ファミリーランドや神戸ポートピアランドが無くなった。 四国最大施設とのふれこみだった、レオマワールドも消えたし、特色ある施設と言われていた、周年プール施設のワイルドブルーヨコハマやフラミンゴショーの行川アイランドも経営が成り立たなくなった。 当然ながら、こうした状況に関して、数々の分析が進んでいる。 特に、東京ディズニーランドについては、様々な成功の鍵が指摘されている。 しかし、こうしたポイントを整理したところで、たいした意味はないと思う。真似したところで、成功できるとは思えないからだ。 産業振興を図るなら、成功物語を学ぶ前に、パーク市場の全体像をはっきりさせる必要があろう。 先ずは、対象を整理すべきだ。 ここで肝要なのは、当座の時間潰しになる、面白さを提供するパークと、宿泊してまで行きたいと感じさせるパークを分けることである。 前者は、とりあえずお気軽に楽しく時間潰しができればよいだけのことである。 傍目には、たいした企画に映らないものでも、コストパフォーマンスがよければ、人は集まる。 但し、ヒット曲と同じで、すぐに飽きられるかもしれない。新しいパークが、古いパークから客を奪う構造である。新陳代謝は活発である。基本的に一過性のものである。人気に陰りを感じたら、すぐに閉店するべき事業である。又、新企画でビジネスを立ち上げればよいだけのことだ。 このような事業に、練りに練った堅固なコンセプトを持ち込んでも、たいした意味はない。 典型例は、食のパークだ。新横浜ラーメン博物館、ラーメンスタジアム、横濱カレーミュージアムといったものだ。これは、もともと在日中華系の人達のアイデンティティから出発している中華街とはまったく違うものである。 おそらく、このような施設が集客力を発揮する、と考える人は少なかったと思われるが、蓋をあければ、人気が爆発した。 この企画が受けたのは、巷で流行っているB級食をとりあげたからである。いかにもお気軽に映るコンセプトである。ところが、見かけはお気軽だが、その割には、中味が濃いのだ。従って、訪問者はコストパフォーマンスが高いと評価することになる。しかも、結構、面白い。そうなれば、時間潰しとしては、他のパークより魅力的なのだ。流行るのは当然だろう。 しかし、宿泊してまで、行くようなコンセプトではない。このタイプの施設は、集客力を維持するのは難しいのである。 しかし、このようなパークと東京ディズニーランドは全く異なるものである。 ラーメンを食べるためだけに、宿泊までする人は稀だろうが、東京ディズニーランドは逆である。おそらく3割程度は宿泊者と言われている。朝一番から夜まで、丸々1日遊びたいなら、宿泊するしかない。これが強みなのである。 両者は全く違う事業なのだ。 宿泊してまで行く気になるパークには、しっかりした思想に裏付けされたコンセプトがある。訪問者は、本質的なものを感じるから、本格的にじっくり体験したくなるのだ。 要するに、「本物に接した」という満足感を味わえる訳だ。 お金をかけて、よくできた複合施設を作っても、この本物感がなければ、成功には繋がらないのである。経営能力以前の問題である。 ディズニーランドは、まさしく本物だから人が集まるのである。 このことは、本物感が出せれば、成功のチャンスはいくらでもあると言える。 例えば、「ホットスパ」の本物感を訴求できるなら、集客力を発揮できる可能性は高い。特徴成分が含まれており、掛け流しというだけでも、本物感が生まれるからだ。この思想を核として、わかり易い統一コンセプトを打ち出せば人は集まってくると思う。ゆっくり1日すごせる複合施設を提供すればよいだけのことである。 もちろん、特徴ある源泉などなくとも、チャンスはある。温泉の楽しみ方のホンモノとはこれだ、との主張ができれば、集客力は生まれる筈だ。 丸々1日過ごしても良いと思わせる、ホンモノ感が重要なのである。 肝心なのは思想であって、テクニックではない。 対象はなんでもよいのである。 MEGA WEB(見方によっては、トヨタ車の宣伝展示場とも言える。)(3)も本格的テーマパークに飛躍する可能性がある。車を選んだり、触れたりする楽しみ方とはこれだ、との思想が伝わるなら、本物化するからだ。 重要なのは、コンセプトを支える基本思想と、その一貫性である。車好きが、じっくり1日過ごしたい、と感じるコンセプトを作れば成功である。 すたれつつある映画館ビジネスでも、小手先の新試行による再興など考えず、根源に戻って本物を追求すれば、同じように飛躍の可能性がある筈だ。思想が理解されれば、続々と人が戻ってくると思う。メディアージュ(4)のような施設も、1日かけても、行くだけの意味があると分かれば、一大パークになるかもしれない。要するに、映画の楽しみ方とは、こうしたものだ、との思想を発信できるかが勝負になる。逆に、そこまでいかなければ、とりあえずお気軽に、楽しく時間潰しができる施設になる。 宿泊までして行こうと思う人が出る施設かが、成功の分岐点なのだ。 従って、他のパークの成功を真似ただけでは、徒労に終わる。一時的な関心を集めることはできるが、飽きられるから、長続きしない。真似では、決して本物感が生まれないからだ。これは、経営能力の問題ではない。 (1) http://www.olc.co.jp/company/guest/profile.html (2) http://www.tdb.co.jp/watching/press/p030404.pdf (3) http://www.megaweb.gr.jp/ (4) http://www.megaweb.gr.jp/ 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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