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2004.2.22
 
 


映画産業の構造転換…

 2003年の国内映画興行収入は過去最高の2032億円に達した。右図に示すように、映画館に行く人も増えているようだ。(1)
 これは、シネコン効果と言われている。映画館上映枠の固定化と、マンネリ化したサービス形態を、打破する動きが始まったことで、産業が活性化したと見る訳だ。
 (といっても、実態は、2000年の大店立地法施行前の開設急増にすぎないが。)

 2003年の、邦画の興行収入シェアを見ると、33%である。1980年頃は約50%、1990年頃は約40%だったから、次第に低下しているのは間違いないが、政府の規制もなく、3分の1を維持できるのだから、健闘していると見るべきかもしれない。

 と言っても、国際的に力があるとは言い難い。Movie Timesをみると、2003年の映画307本のタイトルを見た瞬間、日本映画らしきものが見当たらないことがすぐに分かる。(2)
 日本作あるいは、日本監督の作品を探す気にならない状態である。

 しかし、この産業は技術革新に晒されている。変動期は、劣位者も含めて、皆に飛躍のチャンスが訪れる。これを活かせるかが問われているといえよう。
 と語ると、「千と千尋の神隠し」の成功を思い出すかもしれない。アニメーションなら、日本にも出番があると考える訳だ。しかし、これは技術革新に関係しているとは言い難い。宮崎アニメの世界や、漫画をベースとするキャラクター文化が、世界の人々を惹きつけているのであって、技術革新とは直接係わりはないと見た方がよい。
 (尚、「千と千尋の神隠し(Spirited Away)」はディズニー系が配給した。興行収入は芳しくない。(3))

 重要なのは、IT技術である。この技術で、産業構造が変わるのは間違いない。

 映画産業は、作品制作、配給、興行の3つに分かれている。ところが、デジタルで作品制作ができるようになると、配給と興行の形態が一変するのである。

 作品が完成したら、地域対応の編集も簡単になるし、フィルムを使わず電子送信できる。理屈からいえば、全世界で、即時上映が可能となる。

 当然のことながら、映画館の意味も問われることになる。ブロードバンド化すれば、作品は各家庭ですぐに見れることになるからだ。
 こうした時代に対応した、産業構造とはどのようなものにすべきかのビジョンが、問われているのだ。
 将来ビジョンを掲げた競争が始まることになる。

 現時点で、ハリウッドがこの競争の先頭を走っているとは思えない。
 といって、日本が競争に参加しているようにも見えないが。

 --- 参照 ---
(1) http://www.eiren.org/toueki/kakodata.htm
(2) http://www.the-movie-times.com/thrsdir/moviesofyear.mv?moviesof2003
(3) http://www.the-movie-times.com/thrsdir/top60dir/top60Search.mv?Spirited%20Away


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