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2004.8.3
 
 


現状維持派ばかり…

 メガバンク化に関して、様々な意見が行き交っている。注意して聞いていると、不思議な現象に気付く。

 収益基盤が強化できるから歓迎、との意見が多いようだが、そのなかに不良債権処理の進展を望まない人がいるからだ。
 一方、メガバンク化を批判する人のなかにも、不良債権処理反対派がいる。不良債権問題は本質的な課題ではないと主張するのである。

 直接言葉に出さないが、不良債権問題に出来る限り手をつけさせたくない人が、至るところにいるのである。

 インフレターゲット論争でも、ターゲット論支持者のなかに、政府はともかくハコもの作りに金を出せばよい、と言いたげな人が揃っていた。

 現状維持派は結構多いのである。

 このため、たいていの議論は不毛に終わる。
 議論の方法を工夫したり、論点整理をしても、目指す将来像が違う人が入っているのだから、どうにもならない。

 ビジネスマンなら、自ら投資対象を評価し、投資を決断する、自立した投資家が存在する状況を将来像と考え、その方向に進む一歩について議論したくなりそうなものだが、そんなことより、現状の産業秩序を保つことに価値を感じる人がいるのだから恐れ入る。
 社会発展を狙うなら、イノベーション創出型経済への転換を図るしかなく、それを支える投資家の育成が必要、とは考えないのだ。と言うより、そのような方針は唾棄すべき、と考えているようだ。
 将来のことより、着々と進んでいる市場経済化をなんとかして遅らせたいのである。

 そもそも、中央集権的に、資金を銀行に集めて、長期資産運用を図る時代はとうに終わっている。成熟した社会では、資金の一元管理は、非効率で、腐敗を招くだけである。
 又、グローバル化が進むなかで、市場経済化を避ければ、成長の波から取り残されるのも間違いあるまい。
 変革が遅れれば、遅れるほど、痛みは大きくなる。

 しかし、こうした考え方は、社会的に共有されている訳ではない。

 銀行はもはや、長期的な信用供与者ではなくなりつつあるにもかかわらず、未だに銀行株を抱える企業が多いことが、その状況を物語る。
 ともかく現状維持が最優先課題、と考えている経営者が多いのである。
 敗者には、大変身による挑戦か、消滅の道を歩んでもらいたいと思うが、そうさせたくないのだ。

 独禁法に対する姿勢もほとんど同じである。
 談合で全社生き残るような業界から、イノベーティブな企業による寡占型業界への転換を図るチャンスだと思うのだが、このチャンスを生かしたい経営者は今もって少数派である。

 飛躍のために秩序を壊すよりは、腐敗を黙認して秩序を守った方がまし、と考えているとしか思えない。
 そして、巧妙なレトリックを使う人も多い。敗者を弱者と見なし、弱者を切り捨てず、皆で助けようと呼びかける。なにがなんでも変革はさせたくないのである。


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