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2005.5.16 |
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祝! 政策大転換…2005年5月11日に開催された経済財政諮問会議で、民間側から「活性化のために政策の転換を」が提起された。(1)経済活性化のためには3指針に基づいた政策へと転換することが必要というものである。その内容は3方針からなる。 1 予算対象を、モノから人材へ 2 予算配分を大胆に集中させ、底上げ型から先端支援型へ 3 世界市場での競争力を考えて、国内対策からグローバル戦略へ 竹中大臣記者会見によれば、この方向で「合意」が形成されたらしい。 本当に合意ができたのなら、ようやく日本が変わり始めることになる。 実に時間がかかった。10年以上も先送りし続けてきたことになる。 もっとも、未だに、ジャーナリストにはそんな感覚が無いのが実情だ。記者会見に出席した記者は雇用(人間力)創出のためのバウチャー施策に興味を示しただけ。 政策大転換の第一歩を踏み出した歴史的な会議とは考えないのである。 毎年語られる予算重点化の話と同じと見なしたのか、あるいは、こうした転換はそもそも不愉快なので聞く耳を持たないのかよくわからないが。 その後の報道を眺めていたが、極く小さな扱いばかり。しかも、結構ロイター発(1)が多い。 テレビニュースでも、奥田氏が政策転換を提言したとの短いメッセージが流されたに過ぎない。全く触れないニュース番組もあった。 政局に関係するならどんな小さな動きでもニュースになるが、政策大転換だけではニュースにはならないのだろう。 もっとも、提言はコンパクトにまとまりすぎており、解説不足と言えなくもない。会議ではこのレベルで議論するべきだが、外部に伝える時はそれが通用しない。政治が信用されていないからだ。 解説不足だと、言葉の遊びに映りかねないのである。 例えば、モノからヒトへとのスローガンは優れているが、これだけでは、どう転換するのか、わかりづらい。説明が無いと、ずっと続いてきた、ハコもの作りを止めようという話の衣替えと見なされかねないと思う。 既得権益に触れるような抜本的変化を避ける政治を見せつけられてきたから、スローガンを素直に受け取る人などいない。提案の趣意とは違うイメージに映る可能性さえある。 ビジネスに興味がないから大学で働いていると語っていた人達が、突然、ベンチャー立ち上げと称してお金集めを始めた動きを、これこそ産業構造転換の端緒と絶賛するような政治を見ていれば、致し方ないだろう。 説明と言っても、別に難しいことではないのである。 知恵を生み出せる自律型人材がリーダーシップを発揮できるようなビジネス社会をつくる、といった程度でも充分だ。要するに、どう変わるかイメージが湧きさえすればよいのだ。 地方経済振興策のプロセスで考えて見るとよい。このプロセスがどう変わるかイメージが湧くかが勝負である。 今の進めかたを単純化してみよう。 先ずは、中央から有名講師と国策担当者を呼んで楽しいお話を聞く。その上で、地域の代表者を集めて成功例見聞旅行会を開催。その報告会が行われ、参加者の気分が高揚したら、自治体担当者が専門家に詳細調査を依頼する。そして首長がGOを宣言。 次は、コネのあるコンサルタントを雇用し、振興プランを作成する。・・・。 すべてヒト中心に運んでいるではないか。モノからヒトへの転換とは、こうした流れを変えることになるのか。わかるような解説がない限り、なんのイメージも湧かない。 この仕組みの最大の問題は、ビジネス展開の当事者に当事者意識が欠落している点にある。リスクをはって身銭を切るつもりなどなく、お膳立てしてもらったシナリオに合わせて動くだけの人達がビジネスを展開するのである。しかも、当人はそうは思っていないから問題は深刻なのである。グローバル競争にさらされている人達とは、ビジネス感覚が全く違うのだ。 ここでは、知恵を出すのはもっぱら雇われたコンサルタントだ。しかもその知恵とは、ビジネス展開そのものではない。中央からお金を集める方策なのだ。 この知恵が生かされて、お金が地域に降ってくれば成功である。モノに落ちる現金で、地域経済は一息つく。 言うまでもなく、企画通りに産業が発展することは稀である。成功しているのは、もともと自発的に動いていたものが多く、政策がプラスに働いた証拠はない。 ここから、モノに予算がつけるのが問題と教訓を引き出すこともできる。 しかし、こうした人達が地域振興を続ける限り、どんなやり方でも大差なかろう。予算の名目をモノからヒトへと変えたり、ヒトの評価システムを入れたところで、変わるとは思えない。 成功の鍵は変革を担う人材である。その意味で人材中心への転換こそ政策の肝である。このイメージを感じさせることができれば、政策転換は難しいことではない。 グローバル戦略への転換方針も同じことが言えそうだ。 おそらく勝手に解釈する「知恵」者が登場してくる。と言うより、既存勢力に上手な予算の取り方を指南する政治が行われると言った方が正確かもしれない。 海外に比べて不足している資源を増やせと要求すればお金が落ちるという話が広まる訳だ。 従って、国全体の競争力を生み出す根源をはっきり定義し、どう強化すべきか、イメージが湧くような解説が必要なのである。 ・・・などと見ていくと、ついつい不満がつのってくる。 しかし、そんなことは現段階ではたいした問題ではない。 とりあえず踏み出すことさえできれば、あとはなんとかなると思う。 と言うより、なんとかしなければならないと考える人が立ち上がり始めればそれで十分である。 人材はいないのではない。 本気で動こうと考えている人を使わなかっただけの話である。 --- 参照 --- (1) http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2005/0511/item5.pdf (2) 4:31〜/11:07の部分 http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2005/0511/movie.html (3) http://www.reuters.co.jp/financeNewsArticle.jhtml?type=economicPolicies&storyID=8454799§ion=investing 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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