↑ トップ頁へ

2005.6.7
 
 


世界経済混迷の時代か…

 2005年5月29日に仏、6月1日に蘭と、EU憲法国民投票が行われた。予想通りの結果だったが、これで世界経済は、巨大な貿易赤字国たる米国に依存する体制に傾くのかもしれない。非合理な仕組みがさらに強化されることになる。

 この投票結果を意味付けするなら、古いヨーロッパの人達は、グローバル化社会に適合する欧州合衆国ではなく、それなりの自由貿易体制下での欧州各国の協調路線を選択したということになる。換言すれば、福祉国家体制を守れということに他ならない。
 簡単に言えば、欧州の生産性向上が鈍化する訳である。
 欧州はこれからも世界経済の牽引車の役割は果たさないということだ。欧州に向かっていた資金の流れも細ることになるのだろう。

 それでは資金は中国に流れるかといえば、そうもなりそうにない。
 と言うより、中国では逆流がおこりかねない。

 中国は、海外からの資金流入と、高水準の財政出動で、高成長を実現する政策を続けてきた。ところが、胡錦濤政権は、本気で成長を抑制し始めたようだ。
 2005年に入ってから輸出に陰りが見えてきたし、不動産価格も下がっているようだ。
 お陰で、中国経済で息をついている韓国の経済指標を見ると、最近はすべてが悪い。

 手を打ち始めたのはよいが、いかんせん遅すぎた。ここで投機熱が一気に冷めたりすれば、中国経済は混乱するかもしれない。

 しかも、時期が悪い。

 米・欧の国内では、中国の輸出攻勢を規制すべしとの動きが発生しているからだ。国内産業保護を最優先する有権者の力が強まっているから、規制の動きは抑えがたいものがある。といって、機能不全のWTOに、解決する力はない。
 とはいえ、胡錦濤政権は、Bush政権と協調しながら難局を乗り切るつもりのようだ。動きは結構早かった。すでに、輸出税制度等で対応し始めている。

 さらに、人民元の切り上げ要求まで加わる。安い人民元が雇用を奪っているとけしかける人がいるからだ。
 米国企業が海外に移転した生産基地を国内に戻すことなどあり得ないのだから、雇用問題を通貨問題に転嫁しているにすぎないのだが。
 まあ理屈はともかく、歪みを増幅させる人為的な為替レートの固定は無くした方がよい。先き伸ばしにすれば、ツケが回るだけの話だ。
 胡錦濤政権は、ようやく為替調整を始めるつもりのようだが、これも大変な仕事である。潤沢な外貨準備高があるとはいえ、投機資本が大きく動いても、金融システムが揺らがないような仕組みをつくらなければならないからだ。

 おそらく中国への投機資金は戻る場所を探し始める。

 欧州への投資魅力は失せてしまい、日本には相変わらず投資先が無いなら、結局のところ、資金は米国に流れるしかない。

 ここまで集中すると、米国景気は堅調とはいえ、もともと赤字だらけの運営だから、これはこれでやっかいである。
 金余りに対応して金利を引き上げたりすれば、中小企業は相当な痛手を負いかねない。

 こんな状況をいつまでも続けることができるとは思えない。

 米日中で経済の繋がりが出来上がっているのだから、どうして政策調整を図る仕組みを作ろうとしないのだろう。


 「政治経済学」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2005 RandDManagement.com