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2005.7.7
 
 


ドル暴落の日…

 “In the broad sweep of history, it is ideas that matter. Indeed, the world is ruled by little else.”(1)

 Alan Greenspan FRB議長が2005年2月に、アダム・スミス生地(Kirkcaldy, Scotland)で行った演説の一節である。この歴史観は聴衆の共感を呼んだのではないかろうか。

 アダムスミスの思想を現代に置き換えれば、グローバル化経済によって、それぞれの国が富を増やすことができるとの考えになるとの話である。そして、それ以外のものが世界を動かすことはないとの信念を披瀝したのである。

 つい引用してしまったのは、米欧の長期金利が低水準で安定している理由が、FRB の金融政策にあるといわれているからである。(2)

 FRB への信認はたいしたものだと言えないこともないが、早い話、国内経済で閉じた金融システムでなくなったにすぎないのではないか。短期金利を上げ続けたところで、世界中から米国債を購入しようと手が伸びてくるのだ。
 要するに、債権市場が加熱状態というだけの話だろう。

 もともと、9・11以降、「invisible hand」が成り立つ筈がないのである。

 ブッシュ政権の政策とは、石油と消費材の大量輸入を続けると共に、資本を流入させるというのもの。世界のお金の大半を米国が使う体制である。
 しかも、増税は避け、イラクの戦費は惜しまない。財政赤字と経常赤字は膨らむにまかせるのだ。

 株価暴落や貿易戦争でも発生しない限り、政策変更はありえそうに無い。
 換言すれば、徐々にドルが下落するシナリオなのだろう。そんなことが“粛々と”できるものだろうか。

 欧州も日本も景気が好転しそうにないから、世界はドル安を嫌っている。お陰で、ドルの価値は維持されたままだ。
 それどころか、最近は円安傾向だ。

 しかし、石油価格は上昇しており経常赤字は鰻登り。この辺りが米国の限界と判断する人がでてくるのも時間の問題だろう。そうなってから、市場圧力に耐えるのは至難の業である。
 そんな時に、テロでも発生したら、一気に均衡が崩れかねない。

 世界経済は綱渡り的状況にさしかかってきたようだ。

 核の雨が降る終末までにあと7分という「Doomsday Clock」(3)も気になるが、ドルへの信頼消滅までの余裕を示す時計も必要になってきたような気がする。

 --- 参照 ---
(1) http://www.federalreserve.gov/boarddocs/speeches/2005/20050206/default.htm
(2) 日銀レビュー・シリーズ「米国の長期金利の「謎」を考える:金融政策との関連を中心に」
  http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev05j08.htm”
(3) http://www.thebulletin.org/doomsday_clock/current_time.htm


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