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2005.8.30
 
 


変貌する鉄鋼産業…

 2005年5月、韓国の現代自動車は、買収した旧韓宝鉄鋼の製鉄所に、年産350万トンの高炉を2基建設すると正式発表した。(1)
 現代ハイスコにスラブを供給しているJFEスチールから技術導入すると思われるが果敢な決断といえよう。

 自動車会社が鉄鋼まで遡って生産するのは、競争力強化には繋がらないというのが、日本車躍進から得た教訓とされてきたが、そんなことは気にもとめないようだ。
 2010年に500万台の販売を狙う自動車会社だから、鋼板安定供給を担保するためには、自社内での素材生産は不可欠ということだろう。この先、鋼板需給が逼迫すると読んでいることになる。

 実際、現在の鉄鋼は売り手市場だ。韓国では1社しかない高炉メーカーPOSCO(2004年粗鋼生産量約3,000万トン)は絶好調だ。2005年上半期の純利益は過去最高である。

 もっとも、粗鋼生産トップの粗鋼生産量は6,000万トン弱と約倍だ。
 ここまで巨大化しないと、鉄鉱石と石炭の調達力を保てない時代だ。需要が余りに旺盛だから、原料調達力が直接競争力に響くのである。
  → 「超巨大鉄鋼企業の時代へ 」 (2005年3月2日)

 こうなったのは、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)市場が勃興したからである。日米欧という先進国市場での競争ばかり眺めていると、中国は別として、他は見逃してしまいがちが、鉄鋼産業からみれば重要な市場セグメントと言えよう。

 世界最大企業が、ここまで伸びてきた由縁は、この流れにのったことが大きい。もっとも、ファイナンシャルエンジニアリングを駆使しているようだから、実態のほどはよくわからない。
 とは言え、株式市場では経営者は“Man of Steel”としてしばしばとりあげられている。(2)

 但し、新興国市場勃興の波に上手く乗っているといっても、この企業の強さの根源は、自社原料比率が高い点と米国と発展途上国(東欧、アフリカ、カザフスタン)半々という市場ミックスにあるようだ。お陰で、営業利益率はPOSCOと肩を並べて、世界のトップクラスである。

 なにせ、規模の効果で調達費用削減と製造費/間接費圧縮で1年で、1〜2%を生み出せるというから強気にもなろう。(3)

 途上国プラントでは、マネジャーを欧米人からインド人に変えるだけでもコスト削減効果は大きいという。徹底的な生産性向上を図るつもりのようである。

 世界はダイナミックに動いている。
 このような動きは鉄鋼産業に留まるまい。日本企業は、余裕があるうちに、知恵で食べられる体制をつくりあげる必要があろう。

 --- 参照 ---
(1) http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/05/20/20050520000012.html
(2) http://business.timesonline.co.uk/article/0,,17709-1463755,00.html
  ブルーグバーグマーケッツ2005年7月号にも記事(金融業界購読者向)
(3) http://www.mittalsteel.com/NR/rdonlyres/BA643E92-7FA8-4484-B22C-BC83C121AC67/0/2005MayRoadshow5MayFINAL.pdf


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