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2008.3.12 |
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米国はまともに考えているのか…米国大統領選挙を眺めていると、いよいよ大変な時代に入って来たとの感慨を覚える。なんといっても特筆ものは、候補の主張の訳のわからなさ。ともかく、Bush大統領が消え、心機一転さえすれ万々歳との風潮が広まっているようだ。 Obama候補など、政策はなにがなんだかさっぱりわからぬ。どう見たところで、単なる熱狂。自由貿易はお嫌いなようだし、保護主義でも打ち出しかねないのではないか。当然、大混乱である。 と言って、共和党のMcCain候補は、イラクを支えるという方針で揺るぎないというだけ。その世界秩序感は中東の戦乱拡大につながる可能性は否定できない。少なくとも、民主主義国に相応の負担を要請することになろう。世界を軍事経済へ傾けることになりそうだ。これまたたまらぬ。 グローバル経済なのだから、他国民も大統領選挙に参加させてもらいたいと書きたくなる位だ。 なかでも、一番の問題は、経済が不透明化しているというのに、どうするか、さっぱり語らないこと。 恐ろしい話だ。 と言うのは、金融関係者のコメント類に、金融政策への不信感がにじみ始めたから。政府と、現実の経済を動かす人々の間で、齟齬が生まれ始めているとしたら、大変なこと。 米国政治は大丈夫なのか。 “Melt Down”(1)など御免被りたいが、その可能性はなきにしもあらずとの風潮まで生まれているというのに。 いや、もう“Financial Pandemic”状態なのかも知れないのである。(2) ここまで米国の住宅市場が悪化してくれば、グローバル経済の下では、米国のリセッション到来か、などと落ち着いて言ってはいられないからだ。米国はまともに考えているのかと怒鳴りたくなる気分である。 Nouriel Roubiniの主張を解釈すると、そうなら笊を得ない。 よく知られるように、このエコノミスト、2006年7月に不況突入を予測していた。Alan Greenspanが神格化され、米国住宅市場が悪化したところで経済全体を揺るがすことは無いとの彼の言葉を皆が信じ込んでいた頃である。 どんな風に金融危機が発生するかというRoubini流のイメージは、Martin Wolfがまとめてくれている。(3) 極めてわかり易いので、要点を引用した上で、勝手なコメントをつけてみた。 (Step 1) 史上最悪の住宅市場不況。ピークから2〜3割の価格下落。 ・・・米国では、住宅価格低下は労働者の移動も損ねるから、深刻である。 公的機関のFannie Mae/Freddie Macの2007年第4四半期の損失は膨大。 これで、ローンがタイトになる可能性があるが、要件緩和でのりきるようだ。 尚、2008年2月28日、Moody'sは短期債務格付は据え置きと発表。引き下げ方向だろうが。 もちろん、住宅価格指数(S&P/Case-Shiller)は、2007年通じ連続12ヶ月低落だ。悪化一途の感じは否めない。 (Step 2) サブプライムローンで金融機関の損失増大。“reckless or toxic features”なもの。 ・・・ジャンク債が難しくなるから、経済のバイタリティを失うということ。 2007年〆で、大手は損失を吐き出し、資本増強したが、これが再生を意味するのか、先送りかは判別不能。 (Step 3) 無保証消費者金融に巨大損失発生。消費者で“credit crunch”。 ・・・優良債務が不良化。公的住宅金融機関も動揺。 モラルハザードと言われるから、公的機関への税金投入は難しく、隘路に入り込むと厄介。 (Step 4) モノライン機関(債務保証)の格付け低下。 ・・・ここが倒れると債権の信頼性はほとんどなくなるのだが。 2008年2月28日、S&Pはモノライン大手MBIAとABKのAAA格付を維持。地方債権ビジネスを分離し救済か。 (Step 5) 商業用不動産市場のメルトダウン。 (Step 6) 地方大銀行・全国規模の銀行の倒産。 (Step 7) LBOで膨大な損失。金融機関バランスシート滅茶苦茶。 (Step 8) 企業破産の波。企業減量化と“credit default swaps”。 一部与信機関も破綻。 (Step 9) “shadow financial system”(ヘッジファンド等)がメルトダウン。 ・・・規制されない自由度がウリだったがそれは中央銀行が助えないということでもある。 (Step 10) 株価崩壊。雪崩を打つような暴落。 (Step 11) 資本市場は旱魃状態。 (Step 12) “a vicious circle of losses, capital reduction, credit contraction, forced liquidation and fire sales of assets at below fundamental prices” う〜む。そういうことか。 欧州企業は内部資金を重視しているし、日本の金融機関はハイリスクハイリターンなビジネスを避けてきたから、すぐに影響がでていないだけのこと。お金に壁がある訳ではないから、米国市場でパニックが発生すれば、手の打ちようがなかろう。 なんといっても厄介なのは、この問題は、経済刺激策や、金融緩和ではどうにもならないという点。確かに、言われてみれば、そんな程度では、住宅価格暴落やモノライン破綻を救えないのは明らか。従って、米国政府が救うしかないのだが、膨大な対外債務を抱えていて可能かという疑問が湧く。可能とは限らないのである。 まあ、結局のところ、徳政令とインフレしかないのだが。 そう考えれば、外貨積みあげを止め、モノに変える政府が出たり、金価格暴騰は当然の流れと言えそうだ。もっとも、上記の展開になるなら、金融機関買収は高値買いと言えるかも知れぬが。 まあ、ぞっとする話であるが、米国民ではない我々には手も足も出せない。 達磨さんの境地ですごせということか。 --- 参照 --- (1) Nouriel Roubini: “Anatomy of a Financial Meltdown” Project Syndicate [Feb. 2008] http://www.project-syndicate.org/commentary/roubini4 (2) Nouriel RoubinicThe Coming Financial Pandemic” FOREIGN POLICY [March/April 2008] http://www.foreignpolicy.com/users/login.php?story_id=4169&URL=http://www.foreignpolicy.com/story/cms.php?story_id=4169 Nouriel Roubini: “The Recession Felt Around the World” FOREIGN POLICY [February 2008] http://www.foreignpolicy.com/story/cms.php?story_id=4196 (3) Martin Wolf: “America’s economy risks mother of all meltdowns” Financial Times [2008.2.20] http://blogs.ft.com/wolfforum/2008/02/americas-economy-risks-mother-of-all-meltdowns/ (Nouriel Roubini) [NewYork Univ.] http://pages.stern.nyu.edu/~nroubini/ [RGE monitor] http://www.rgemonitor.com/ (達磨の絵画の写真) [Wikipedia] BodhidharmaYoshitoshi1887.jpg http://en.wikipedia.org/wiki/Image:BodhidharmaYoshitoshi1887.jpg 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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