↑ トップ頁へ |
2009.2.5 |
|
|
ポンド下落で感じたこと…ポンドが紙切れになると言われ始めたとか。もちろん経済学者の間ではなく、一部の長期投資家の見方。たいした根拠がある訳ではなかろう。昨年末に、“英国を見ればわかるように、政府と中央銀行にポンド暴落を止める手立てなど無く、市場を見守るしかない”と書いたが、これも、もちろん素人考え。 → 「保守本流経済政策の復活 」 (2008年12月25日) どうしてそう考えたかなど自明である。英国型金融業に習うことで繁栄を謳歌していたアイスランドがほとんど破綻したからだ。国が銀行を助けようとしたが、損失が余りに巨大で、国債デフォルト寸前。通貨は当然ながら大暴落。 [訂正]銀行のサムライ債はデフォルト。国債はデフォルトではない。生命維持層装置はIMF融資。 英国で発生している問題も全く同質であり、ポンドはドルのような機軸通貨でもないから、同じことが発生しないといは言い切れない。すでに、一度、ヘッジファンドに叩かれて通貨危機に遭遇したこともある訳だし。 ただ、英国ならそんな事態を避けられる筈と思ってしまうのは、政治的なリーダーとして動いてきたのと、シティがあるにすぎない。それに、米国の借金システムを、中国と日本と共に支えてきたから、イザとなれば米国がついているとの安心感もあろう。 温家宝首相の英国訪問の一番の目的はよくわからぬが、(1)経済刺激策の話ではなく、英米の銀行救済と米国債問題の調整ではないか。 一方、米英が船頭の泥舟補強などもってのほかと見ているフランスにしてみれば、ロシア同様、英国も輸出産業の競争力向上のためにポンド安を仕掛けたとなろう。ユーロ安で雇用を確保したいのに、それを上回るポンド安など不愉快きわまる訳である。 この一点をとってもわかるが、欧州はバラバラな国の集まりだから、危機対応は難しかろう。独・仏にしても、その思想は、安定路線と成長路線で水と油のように映るし、何をやるにも時間がかかる。 ユーロ統合にしても、メンバー国の債務保証システムが無いままで、経済急成長のテコにしたのだから、経済縮小になるとえらいことになるのは当初からわかっていたこと。 今や、外国からの投資だけで成長していた国は経済は壊滅的らしいし、域内経済の盛り上がりで繁栄していた国々は、急膨張してしまった住宅・耐久消費財消費の急激に落ち込みが引き金になって、雇用喪失とローン焦げ付きで惨憺たる有様。雇用を増やすには、賃下げしかないのが現実だろう。 こんな環境下だ。英国の主要行に不良債権が積み上げっていない訳がなかろう。政府は、問題銀行を破綻させるか、国有化か、際限なく資金を融通するのどれを選び、ポンド切り下げに踏み切るしかない。 当然ながら、金融機関救済資金確保のために、国債を発行したいだろうが、それがすんなり進むかは疑問。膨大な不良債務が予想されるから、買い手がつくかわからないからだ。無理に輪転機を回したりすれば、ドルとは違うから、ポンドは紙ペラになりかねない。 下手をすれば、米国債を手放し、危機を米国に輸出するかも。あるいは、禁じ手とされてきた金放出を考え始めるのかも。 アイスランドの銀行社債デフォルト発生を見ていれば、少し考えるだけで、こんなシナリオが自然に頭に浮かんでこよう。 だが、そんなことが発生すれば、シティから、世界に激震が走ることになるから、表立って言える人がいる訳がなかろう。せいぜいが、オブラートを被せた発言程度だ。 海外紙に、時々、トンデモ施策話が登場するが、それは、この問題を語るための一つのやり方ということ。常套手段が効かなくなるから、突拍子もない施策が打たれておかしくないと指摘しているのである。 例えば、スコットランドが独立してユーロ圏に加盟するとか、英国がEUを離脱してドル圏に入るといった類の話である。 以上、ダラダラと書いてきたが、ここでようやく本論。・・・こんなトンデモ話が掲載されている新聞・ウエブサイトに目を通すべきと言いたかったのである。(残念ながら、日本にはこの手の知の拠点作りは嫌われる。トンデモ話だけの拠点と、当たり障りのない情報を集めるだけの拠点が多いのである。) 多少の誇張や冗談を加えた主張が掲載できるということは、読者の質が高いことを意味する。何を議論したいか、くどくど説明をしなくても、理解できる人向けということ。 日本の記事は、投資者向けでもないのに、ポンドの行方を為替デイーラーにたずねたり、著名人の理屈なしの一言インタビューが多用される。正反対なのだ。 おそらく、真面目な取材を積み重ねた雰囲気がでて、人気がとれるということなのだろう。 だが、少し考えたらわかる筈。だいたい、デイーラーにとっての中長期とは、せいぜいが2〜3週間だろう。そんな常識もないのか、あるいは恣意的な引用なのかのどちらかである。 そんなものばかり読んでいると、長期的視野を失うのでないか。大いに心配である。 --- 参照 --- (1) “China's prime minister calls for stimulus plans” IHT/Reuter [February 2, 2009] http://www.iht.com/articles/2009/02/02/business/wen.3-421364.php 「温家宝総理とブラウン英首相が会談」 人民網日本語版 [2009年2月3日] http://j.people.com.cn/94474/6584565.html 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2009 RandDManagement.com |