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2009.4.13
 
 


バブルの功罪…

 今回の金融危機の発端は住宅バブルの崩壊から。米国の金融機関のNinja融資はもっての他と指摘する人が多いが、別に驚くような現象ではない。
 日本の土地バブルを忘れた訳ではあるまい。誰が見ても使えそうにない土地が巨額な担保物件化されたり、産業金融の頂点に立った国際派バンカーが料亭の女将に騙されたりと、常軌を逸していた。
 バブル現象とはそういうもの。
 なにせ、古くは、チューリップの球根一つで家が買えるようなバブルさえ存在したのだ。商品の価格を決定する方法を市場に委ねれば、そんなことが発生することは昔から知られていた。と言って、妥当な価格を決める方法が存在している訳ではないから、市場で決定しない方向に進めば、権力者が恣意的に価格を決めることになる。
 独裁体制になる訳で、たまったものではないが、その方が嬉しい人達も少なくない。ただ、そんな方向に進めば、経済は低迷するから、そんな体制が長続きするとは思えないが。

 IT企業や今流行りのWeb2.0系企業にしても、熱狂的な投資ブームが発生しなければ、飛躍の芽はない。しかし、その投資にしても、後になれば、大損だらけだったりする。バブルとはそんなものである。
 端的な例は、投資家から膨大なお金を集めた光ケーブル投資だろう。現実にはほとんど使われていないことが知られて、あっさり破綻したが、まあそんなものである。
 Web2.0にしたところで、Google等の一部の企業が時代の波に乗ったのは確かだが、投資に見合った収益を上げることができそうな企業はほんの一握りの筈。

 こんなことを指摘すると、バブルは金儲けの狂乱だから、唾棄すべきものと言う人が登場したりする。これには、こまったものだ。
 確かに、そう見える一面もあるが、こうした熱狂がなければ、リスクが高い大規模投資はできるものではない。短期間に社会を大きく変えるには、こうしたバブルは歓迎すべきものでもある。要は、副作用が酷くならないように、適当なところでバブルを潰すしかないということ。

 そんなことを言われても、どうしてもバブルは許せぬと言うなら、既存企業による、計画経済的な投資を進めるしかなかろう。そんなやり方が奏功するのは、伸びる産業が自明で、お手本をコピーするだけで発展が約束されている時のみ。人真似で発展できない時代は、この手では上手く行く筈がないのである。そんなことは、経験論でわかっている筈。日本のISDNの悲惨な状況を見ればよい。何兆円投下したのかわからないほどの巨大投資を続けたが、結局のところ宝の持ち腐れ。

 一方、ITバブルにはずいぶんお世話になった筈である。これなくしては、インターネット利用が今のように広がることはなかったろう。とてつもない巨額な投資資金がIT産業に流れ込み、新興企業が巨大企業と戦えるお金を調達できたから、大きな変化を生み出すことができたのである。独占的な地位の巨大電話通信業者が、儲からなくなりかねない事業に力を入れるはずがないのだから。
 ともかく、そんな動きのお陰で、通信料金が劇的に下がった。
 この結果、既存の通信業者の市場規模は大幅に縮小しただろう。ここだけ見れば、GDP減少。バブルなくしては、こんな政策を打ち出せまい。

 まさに、バブルを活用した、パラダイム転換が図られたのである。これは、言葉の遊びではない。もっとわかり易い例をあげよう。
 百科事典ビジネスだ。
 このビジネスの雄は誰が見てもBritannicaだった。揺るぎない地位にいるようにに見えた。ところが、あっと言う間に、新興勢力のMicrosoft「Encarta」に太刀打ちできなくなってしまったのである。しかし、流れは、それで留まらなかった。「Encarta」も、無料のWikipediaによって消滅の道を歩むことになってしまったのである。(1)

 熱狂的な投資で、新興企業が飛躍的に発展し、巨大産業が生まれるかも知れないが、百科事典産業のように、市場が消えてしまうこともありえるのだ。GDPは減るが、実生活は豊かになったということ。

 電気自動車も同じようなものかも。
 一大ブームが発生し、熱狂的な投資が始まれば、車1台30万円が実現されるかも知れないのである。こうなれば、車はスーパーの特売品化するに違いない。既存の自動車産業の仕組みはあっという間に根底から壊されてしまうのである。

 --- 参照 ---
(1) “Wikipedia's Old-Fashioned Revolution The online encyclopedia is fast becoming the best.” WSJ [APRIL 6, 2009]
  http://online.wsj.com/article/SB123897399273491031.html


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