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2009.8.31
 
 


経済の見方…

 2009年第2四半期のGDPのデータをご自分の目で眺めておくことをお勧めする。
  → 「平成21年4〜6月期 四半期別GDP速報(1次速報値)」
      内閣府経済社会総合研究所 [2009.8.17]・・・右図参照

 ニュースでは「実質ベースで年率+3.7%成長」、「1年ぶりにプラス」という点ばかり強調されており、“まあ、よかった”で終わりがち。
 しかし、よく見れば、考えがかわるのでは。

生産指数[季節調整済](1)
指数 対前月比
2008年
7月
 
103.7
2009年
4月
 
74.8
 
+5.9%
5月 79.1 +5.7%
6月 80.9 +2.3%
 ご存知の通り、この四半期、工場の操業率は急上昇した。一年前に戻る勢いは無いが、在庫調整も一段落し、縮小した市場規模に見合った活動が始まったと言えよう。ただ、政府の補助金政策で、自動車と一部の電気製品分野の国内市場が膨れた効果がかなりある。これは需要の先取りだから、注意を要するが。
 ともあれ、製造業セクター成長率の年率二桁化は間違いあるまい。

 さらに、自民党の伝統政策である、公共工事発注効果も絶大。(公的固定資本形成は年率+36.3%)

 にもかかわらず、この程度の成長率しか実現できなかったのである。
 それでは、何が足を引っぱったのか。
 住宅投資(年率−33.0%)と設備投資(年率−16.1%)だ。両方ともに、回復の兆しはないと見てよかろう。これらは、将来への期待感を反映する数字でもあるから、そのまま受け取れば、お先真っ暗と見ている人が多いということになる。

 麻生政権の壮大なばら撒き政策は、日本経済の将来性に対する諦め感まで醸成してしまったようだ。
 ともかく、内需寄与率は相変わらずのマイナス。外需のプラスで、どうにか「景気は下げ止まった」だけ。
 なにせ、純輸出は年率+27.9%も伸びたのだから。有難いことである。しかし、前年と比較すればそのレベルの低さがわかろう。

 この状況ををどう見るか。
 冷静に考えれば、日本の成長力は失われたということではないのか。

 日銀・水野審議委員の意見にも目を通されるとよい。
  → 「内外の金融経済情勢と金融政策運営―― 政策対応に依存した脆弱な景気回復 ――」
         日本銀行政策委員会 水野温審議委員 (岡山県金融経済懇談会における挨拶要旨) [2009年8月20日]
  【「フリー・フォール」が終息した理由】
    ・輸出リバウンドと在庫調整進捗、自動車の減産緩和と中国家電需要
    ・政策効果による自動車/家電の国内販売の増加
    ・公共工事請負金額増加
    ・不安心理の後退
  【今後の回復期待が弱い理由】
    ・企業の姿勢は経費削減/投資抑制(設備と雇用の過剰感持続)
    ・劇的な小売価格引き下げ戦略は効果薄
    ・所得見通し低下で、支出が抑制され、個人消費減退
    ・住宅着工が年70万戸台


 要するに、“持続的な景気回復が実現するための前提条件は、海外需要の回復によって、生産が企業の採算ラインを継続的に上回るところまで増加すること”という主張。

 ビジネスマンなら当たり前に感じていることを、ようやく明言してくれた感じがする。
  ・2000年代半ば以降は、円安進行と好調な海外景気を背景に、実力以上の高成長率を達成してきた。
  ・雇用創出力や租税負担能力が高い大企業のリスクテイク能力を高める必要がある。
  ・潜在成長率は言われているより低い。

 だが、ビジネスマンが、この程度の認識で留まっていたのではこまる。

 まず確認しておくべきは、日本の製造業は、時代の流れに乗っている訳ではないという点。
 一つは、大市場に育ちつつある新興国市場では、日本の製造業は力が発揮しにくいという点があげられる。高付加価値製品に注力してきたから、そう簡単に転換できるものではない。
 もう一つは、先進国市場で“iTunes-iPod”型ビジネスを牽引することができないままである点。日本のエレクトロニクス産業を支える最終製品とは、薄型TV・デジカメ・携帯・パソコンだが、どれにしても、収益性や成長性で期待薄のものばかりでは。ネットの時代に、いまさら、CDやDVDの次世代製品で一大飛躍できるとも思えまい。
 要するに、これから外需が復活してきても、日本企業は、たいした恩恵が得られなくなりつつあるということだ。過度の外需期待は禁物である。

 この程度なら、誰でもわかっている話。
 気付かずにいる深刻な問題がこれから浮上してくると思われる。実力以上の高成長には、必ず、副作用が付随するものだが、それがこれから顕在化してくるということ。
 簡単に言えば、競争力の根源たる“組織的に知恵を生み出す仕組み”のメインテナンスを怠ってきたツケ。今までは外部環境が良かったので、影響が見えなかったが、これからはそうはいくまい。
 つらい日々が始まるかも。

 これでは、何を言っているかわからないか。

 例えば、派遣社員を活用する過程で、競争力強化を着々と実現していった企業と、人件費削減による単純な利益増を確保したにすぎない企業があるということ。問題は、後者のような企業がこの先どうなるかだ。
 労働規制が厳しくなる一方の国内では、余りに高コストで、早晩、まともな製品開発もできなくなろう。労働集約型の「鉢巻」戦術で成果をあげてきたから、それが難しくなれば、製品の競争力はガタ落ち。もちろん生産技術での優位性も失うことになろう。国内マザー工場も維持できなくなるのは見えているようなもの。
 大企業は様々なビジネスを抱えており、こんな部分がそこここにある。この対応に追われれば、リスクテイク能力強化どころの話ではないかも知れないのだ。

 --- 参照 ---
(1) 「鉱工業指数 結果の概要」 経産省 http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html


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