表紙 目次 | ■■■ 2015年4月14日 ■■■ 低成長経済は不可避…思った通りと感じた人は多いのではなかろうか。IMFのWorld Economic Outlookのこと。先進国の成長率は低下一途。この先の潜在成長率も1.6%の見込み。ユーロ圏や日本の需要低迷でさらに下がる可能性も示唆。 専門家に言われなくても、素人でもそんなところだろうという感触。 どう見たところで、米国だけが3%実現なくしては政治が持たぬと頑張っているにすぎない。 日本はマヌーバー政策による日銀ファイナンスによるバラ撒き続行でどうにか0〜1%を続けることになりそう。持続不可能な禁じ手に踏み切ってしまったから、健全な状態には戻れない訳で、マドルスルーが続くことになる。 一方、EUは体質を変える動きが生まれている訳ではないから、ほぼゼロが続くことだろう。 どこも、大幅削減無しには財政再建など不可能。しかし、政治的には無理筋であるから、どうにもならなくなっている訳だ。そんな気分の社会に、長期投資気分が生まれる道理が無い。 昔から、高齢化が低成長をもたらすとは言われてきた。 労働人口の減少と家計における収入減からくる購入意欲低下は避けられないからだ。だが、それにしても余りの低成長である。 かつては、低成長の悪循環から抜け出すために、その輪を断ち切るべく財政出動で刺激を与えるという手が奏功した。ところが、今やそれが逆効果。 税金にブル下がるだけの腐敗した産業に飯のタネを提供するだけの政策と見なされているからだ。まあ、それ以外にバラ撒く先が無いから、どうにもならぬ訳で。従って、そんな政策が続いていれば、成長率が上向くとは誰も考えない。それに、社会保障の重い負担を考えれば、結局のところ大増税が待ち構えており、時間軸でならせば、良くてゼロ成長だろう。そのうち、財政破綻-経済崩壊。 そんな社会状況では、マイナス金利を作りだしたところで、かつての投資水準回復など望み薄。と言うか、下らぬ投資で儲ける風潮が生まれないだけ、まだ健全性が保たれているのは奇跡的と言えるのかも。 とは言え、イノベーション創出型経済に移行できれば成長は期待できる筈だ。ただ、ここを読み違えてはいけない。先進国が成長するにはこれしかないが、それでも、「それなりの」成長しか享受できないからだ。 現代のイノベーションは、旧態依然たる非効率な産業を瓦解させることが多い。勃興する事業だけ見ていれば、GDP押上げに大きく寄与している風に映るが、その一方で失われる部分も結構大きいのが実情。ここを押さえておかないと。 特に、これからのイノベーションは、自由人を集めたオープンな組織が牽引することになるから尚更。新産業がもたらす雇用増は微々たるもの。その一方で、単純労働者扱いされる人は激増。次々と古い業態も消えていくに違いない。完全消滅を逃れた僅かな生き残りだけ大いに繁栄する時代に突入すると思われる。マクロの経済指標で、過去のような経済繁栄は望めない。 しかし、それは社会が沈滞し、不幸な境遇に陥るすることを意味している訳ではない。ここが重要なところ。安価で、場合によっては無料で高度かつ多様なサービスが提供されるからである。生活レベルは格段に向上する。 それは、現在の、「恣意的な」経済学では、完璧なデフレと評価され、GDPも低成長と見なされる。 現在は、そうした経済に移行する過渡期である。ここをどう乗り切るかが問われていると見るべきでは。 残念ながら、日本はこれに失敗し続けて来たと言ってよかろう。新陳代謝をことごとく避け続けたからである。合理的な土地価格だけでも実現できていれば、どうにかなっただろうが、それも防いでしまったから、どうにも手の打ちようがない。禁じ手の日銀の財政ファイナンスと、円安誘導はトンデモ政策だが、それを追求したくなる気分はわからないでもない。まあ、ツケが回ってきたようなものである。まともな政策をことごとく阻止してきた社会なのだから。 これを簡単に言えば、新陳代謝是認の都市型経済だと高成長もありえるが、それを嫌う地方型経済は落ち込む一方ということ。 言うまでもないが、財政による、地方低迷阻止は無理。今のままなら、地域に頼らないグローバル企業やニッチ産業を除けば、他地域からもらう税金で食べる業態以外は消えていくことになろう。 にもかかわらず、日本の大半の地方政治の課題は、いかに他地域より多く税金を回してもらうかが今もって第一義。そして、それを支持者層に上手く分けるスキルが要求される。部族政治モデルによく似た状況だから、家業の議員にまかせっきりの仕組みが最適解かも。それを続けていれば、議員のなり手を欠くことになりかねないのでは。それが民主国家日本の実情である。(2060年には人口2.6万人という予測が出ている6万人弱の自治体が、なんと、逆に7.5万人にまで増えると宣言して、税金の大盤振る舞いを始めようとしているとの報道を目にしたが、これぞまさしく、こうした風土そのもの。) そんな状態では、円安で競争力をつけて、海外市場で利益を出す政治を追求するのは自然な流れ。しかし、今や、新興国経済も状況は良くない。成長率6.5%で来たが、さらに5.2%にまで低下するとのこと。 まあ、中国がこれから高齢化社会に入り始め、労働力の伸びが僅少となるから、致し方あるまい。 これが経済の現実である。 (記事) 「潜在成長率、先進国・新興国とも低迷へ=IMF」 2015年 04月 8日 00:45 JST ロイター 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2015 RandDManagement.com |