表紙
目次

■■■ 2015年11月22日 ■■■

経済の現実を直視すべし…

OECD Economic Outlook No. 98@November 2015が公開された。
これを切欠に、少しは、どうしたものか議論が進むのかと思いきや、なしの礫。

まあ、TPPのなんたるかの予習もせずに、頓珍漢な質問をするような議員が野党第一党の経済ピカ一らしいからお話にならぬ。無能なのではなく、無知だからこそ大衆にウケる力があり、極めて有能と評価される組織ということ。
そんな野党勢力を、政権批判勢力として大事にしようと主張する人が多いのだから、恐れ入る。民主主義の基本である、様々な意見を戦わせることを抑制する勢力を褒め称えるのだから、お話にならぬ。
小生は、国政をさらに堕落させるだけで、なんの存在意義もないと見る。それどころか、悲惨な事態に繋がるリスクをさらに高めているのが現実。

それはともかく、OECDレポートはいかにも常識的に手堅く現実をまとめたという感じ。
恣意的なものではなく、えらくまともな見通しに映る。素人の直観的な予測とドンピシャ。

そんなことを書くのは、日銀エコノミストの政治屋ぶりが続いているからである。言うまでもないが、素人の直観的(直感ではない。)な予測とは違う数字をずっと出し続けてきたのである。
成長率もインフレ率も"予想通り"常にハズレ。毎回のように予測の見直し。
企業であれば、普通なら配置転換である。ところが、この組織はさらにハズレを繰り返す所存らしい。暗黙の了解のもとに、こうした発表を続けることに意義を見出している組織なのであろう。
(なにせ、直近の四半期にしてから、プラスと断言できるタネなど常識的にはなにもなにもないのに、統計から見てプラスと言い張るのが日銀総裁なのだから。→]しかし、それでも、日銀はましである。政策責任者がはっきり見えるからだ。政府の方は極めて危険な統治状況と言えよう。竹中路線の時とは全く違い、誰がリーダーか不明瞭なまま。昔の陸軍同様で、この曖昧性が心地よい組織だからこまったもの。間違った路線と気付いても変更不能になってしまう恐れ大。)

そう感じるのは、どう見ても完全雇用が実現されている状況なのに、相も変わらず同じパターンでの解説が続いているからだ。ここまでくれば、失業率変化などどうでもよい筈だが、そうでないということは、おそらく基本認識が違うのだろう。
まあ、考え方の土台が違いそう。誰でも知るように地方はどこでも人口減少に直面。しかも、年金暮らし世帯が急増。成長路線への転換と言っても、ただならぬ困難が伴うのは自明。インフレ期待率でなんとかなる問題ではないと思うが。

それに、需要と供給バランス上、グローバルではデフレ基調になるリスクを抱えているとの基本認識を明確に打ち出さないのも不可思議極まる。
この状態でのデフレ脱却を考えるなら、素人は、イの一番に企業物価(PPI)の変化を見るもの。
5月から直近の10月までの対前年比下落率の数字はこんなところ。・・・
  ▼2.2%→▼2.4%→▼3.1%→▼3.6%→▼4.0%→▼3.8%
言うまでもないが、前年10月はすでに原油安。本来なら、もっと軽微な数字の筈だがそうはなっていない。鉄鋼や非金属の価格インデックスも軒並み下降しており、さらなる価格下落が続いていることがわかる。そろそろ止まってもよさそうなものだが、どうもそうもいかない気配濃厚である。中国共産党は構造改革は口先に留め、実質的には先送りに踏み切ったようだから。そうなれば、工業製品価格はこの先さらに下がる可能性大である。

そんな状況で、基軸通貨でもない国が、金融政策による通貨安での輸入物価高騰で、こうした世界のデフレの流れに逆らってのインフレ化実現など常識的には無理筋と言わざるを得まい。
そもそも、そんなインフレが、どうして"日本の"国内経済の成長に繋がるのかの理屈がさっぱりわからぬ。与党も野党も、産業の新陳代謝抑制勢力なのはわかりきったこと。国債ファイナンスの政府のバラ撒きで経済低迷を抑えるだけだから、日本の金融緩和政策は経済成長刺激どころか、桎梏にしかならないと思うが。
ただ、津々浦々に金をバラ撒いた効果は伊達ではない。ソリャ、完全雇用にもなろう。東京では、大分前から、人手不足でまともな建築土木工事が進まなくなっている位なのだから。
まあ、そうなることがわかっていても、ドンドン進もうというのである。後は野となれ山となれの無責任政策で。かつての陸軍と全く同じ体質。出口など無い訳で、悲惨な終末を迎えるだけ。

それはともかく、OECDのレポートの骨子だが、この先2年間、先進国の成長率は約2%で、発展途上国は4%を越える程度ということ。2015年より若干良くなるものの、ほぼフラットということ。

2015年の問題児は、マイナス成長のブラジルとロシア。そして、先進国では、1%に達しない日本とイタリア。
2016年もそれを引き摺ることになるが、イタリアは1.4%へ。日本はどうやらの1.0%。

2017年になると、ロシアとブラジルはそれぞれ1.7%と1.8%に。0.5%の特殊な一国を除いて、1%未満の国はなくなる訳である。
ただ、小生は、0.5%は楽観シナリオと見る。
日本の実態など、誰でも知っている筈。・・・新陳代謝許さずの地域だらけなのだから。少しでも副作用が予想されれば、すかさず新しい動きを潰そうとなる。それを飯のタネにする政治勢力だらけであり、この体質は強化される一方。

繰り返すが、そんな地域は老人だらけ。もちろん、労働人口は減少一途。競争力なき産業だらけで、資本コスト割れでも事業継続を要請されるトンデモ社会。
大笑いは、地産地消で経済発展との主張。調子のよい観光キャンペーンと思っていたら、本気なのだ。鎖国で豊かになれるものらしい。ミクロとマクロの違いもわからぬどうにもならぬ人達だらけ。

簡単に言えば、本質的にはマイナス成長必至ということ。潜在成長率は低く、財政刺激や、地方の産業政策は、それさえも抑えるようなものでしかないからだ。ともあれ、バラマキでゼロに近いプラス成長をどうやら実現しているにすぎない。この方針については、与党も野党もなんら変わりはない。対立しているのは、バラ撒き先とその大きさ。従って、このモードはこの先も延々と続くことになる。

統計上から見て、大手企業には余剰資金はうなっている。しかし、そんな泥沼化必至の地方への投資に踏み切る経営者がいるとはとても思えまい。投資に熱心なのは、税金バラ撒き市場のビジネスに特化している政商だけ。

それに、円安という輸出補助金政策を続けているから利益が生まれているだけの、競争力喪失状態の大手企業も少なくない。そんな企業に単純な生産設備増強を期待するなど、およそ馬鹿げた発想と言わざるを得まい。
余剰資金は、国際競争力強化と、イノベーション創出のための投資に回すべきもの。それが奏功しない限り企業は沈没するだけ。当たり前の話ではないか。
問題は、それがさっぱり進んでいないこと。そんな状態で、余剰があるなら賃上げ原資になどというのは無責任な言い草。
 「政治経済学」の目次へ>>>  トップ頁へ>>>
 (C) 2015 RandDManagement.com