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2003.10.30
 
 


史上最高額の実験炉誘致合戦…

 未だに「国際熱核融合実験炉」の誘致合戦が続いている。
 (候補地はCadarache[仏]、Clarington[加]、六ケ所村[日]、Vandellos[西]の4カ所)
 (http://www.iter.org/ITERPublic/ITER/site.html)

 日経によれば、2003年10月9日にViennaで開催された協議(ITER Negotiators Meeting-P1)で、11月には欧州が候補を1本化し、年末までに建設場所を決めることが確認されたという。又、費用負担について、EUと日本の傾斜配分合意もできたようだ。
 (http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20031011AT2M1000811102003.html)

 日本は不退転の決意で誘致を狙うようだ。
 2003年10月の文部科学省文書には、年度内に、青森県六ヶ所村との協議を終結し、正式決定に持ち込むと記載されている。2002年5月の閣議決定以来、外務省も活発に動いており、本気である。
 (http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/15/10/03101601/005/002.pdf)

 予想した通り、一端決めたプロジェクトは、なにがあろうと進めるのだ。
 [参照]→ 「熱核融合実験炉建設を何故急ぐ…」 (2001年2月15日)


 「国際熱核融合実験炉」は、約10年の期間と、70億ユーロ(50億ドル、5千億円)が必要と言われている。しかし、材料の課題が解決できる見通しはないし、常時運転できる保証もない。しかも、膨大な電力量を消費するし、大量の冷却水も必要だ。
 従って、所要予算などガイドラインに過ぎない。どこまで予算が膨らむか、誰にもわからない。
 史上最大の金食い虫プロジェクトであることは間違いない。

 しかも、どう見ても、現在の原子力発電よりコストパフォーマンスが優れているとは思えない。

 にもかかわらず、EU/日/加が熱心にプロジェクトを進めているのは、自国の原子力関連技術者維持を図りたいからだろう。
 (米国では原子力発電産業が細り切っており、産業振興の熱意は薄い。)
 それに加えて、日欧には、先端大型技術のリーダーになり、国威発揚に結びつけようとの古めかしい意識も強いようだ。

 現在、大型核融合実験装置は、実質的に日本の「JT160」と欧州の「JET」だけ。装置設計も、日本原子力研究所那珂研究所とマックスプランク・プラズマ物理研究所の2箇所で行われている。事実上、EUと日本が進めているプロジェクトである。
 (EU/日が強引に進めているため、2003年2月には、米国がプロジェクトに戻って来たし、中国も参加に踏みきった。韓国まで加盟する。といっても、おそらく、米国は科学者を出向させる程度に留まるだろう。装置の一部位は提供するだろうが、本格的に金を出す気などあるまい。)

 このため、日本政府はEUに負けまいと、施設誘致に必死になっているようだ。
 先端大型技術分野では、常に後追いばかりだったが、ついに先頭を走るチャンス到来、ということで目の色が違うのである。・・・もっとも、建設地は欧州に決まったと見る人もいるが。
 (http://www.e4engineering.com/item.asp?id=50182&type=News&ch=e4_home)


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