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2007.1.4 |
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The Energy Imperative を眺めて…2006年11月、PCAST(President's Council of Advisors on Science and Technology)が「The Energy Imperative」(1)を発表した。言うまでもないが、Imperativeとは“必須”といった意味あい。“必ずこうなる”から、“こうした科学技術政策を採用すべき”との性格の報告書である。 ページ数が多いから、ざっと眺めてみただけだが、わりと分かり易い。 これが日本の報告書なら、エネルギー分野毎に、有望技術を並べ、個々の技術毎に、その進捗状況と日本の技術競争力評価を記載したものになりそうである。付属資料は、欧米の状況一覧かも知れぬ。 当然ながら、結論としては、欧米に負けないように、研究開発投資を増額すべしとなろう。 読後感は、“まあそんなところか”だろう。 この報告書もそんなものかと思ったのだが、外れた。有望技術を示したと言うより、エネルギー政策の提示に近いからだ。 「Technology and the Role of Emerging Companies」とのサブタイトルが付いていることが象徴するように、エネルギー分野への新規参入を増やし、技術革新を図れ、という提言集と言ってよいだろう。当然ながら、付録はベンチャー一覧。 “In recent years, entrepreneurs and private-sector leaders have substantially incerased investment in innovations that, if successfully commercialized, could increase Nation's energy supply, endure its competitiveness, and improve U.S. erergy security・・・” 要するに、連邦政府は、州政府、大学・研究機関、インベスター、起業家等が上手く連携できるように、様々なイニシアティブや支援を進めろということ。 “夢”や“イデオロギー”で将来を考えるのではなく、なにはともあれ、“商業化”を急げということのようだ。 主張を簡単にまとめれば、以下のようになるだろうか。 メインストリームは原子力発電。 ・当然ながら、次世代型原子力発電の登用と廃棄物処理問題解決へと歩を進めることになる。 ・同時に、既存発電プラントの効率向上も必要だ。 それに、新エネルギーが加わってくる。 ・石炭ガス化発電所と再生可能資源の発電所を設置する。(規制緩和と支援) [2006年11月に、DOEはクリーン石炭発電に対する10億ドル減税を行っている。](2) そして、非化石燃料化も促進する。 ・バイオ燃料生産の強化と、フレキシブル燃料自動車の普及推進。 これらと並行して、省エネルギー策を展開することになる。 ・ENERGY STARプログラムの強化 ・建物の節電/エネルギー効率向上奨励 石炭ガス化発電は簡単ではないが、現実的なものばかり。 純“科学”の領域に係わるものは、エネルギー貯蔵ナノ材料位のものではないか。ナノテク研究とモノ作りの拠点を国内に急いで作ることが、提言の核となっているようだ。 ベンチャーが生まれる米国社会の仕組みはさておき、以上を眺めていると、日本との違いが見えてくる。 と言っても、どの分野でも対応しており、大して差など無いと言う人もいるかもしれない。それどころか、エネルギー集約型製造工場や、家電製品の省エネでは進んでいるから、日本が競争力がある分野も多い、と考えてしまうかも知れない。 この見方は間違いとは言えないが、誤った印象を持ってしまうから避けた方がよい。エネルギー分野では、細かく個別技術を見ても、全体の状況はつかめないからだ。 と言うのは、エネルギーの場合、原料調達・廃棄物保管問題を切り離して、生産だけを考えることができないからである。原料・廃棄物ともに、問題解決方針が自明なら、生産技術が完成すれば、大きな前進だが、方針が曖昧なら、商用化どころの話ではない。下手をすれば、使われない技術で終わるかも知れないのである。 にもかかわらず、日本では、方針を曖昧にしているものが多い。その状態で、個々の生産技術の開発に邁進しているように映る。 例えば、クリーン石炭発電で考えてみよう。原料は炭素の塊だから高濃度でCO2が発生する。ただ、発生したガスは高濃度だから、除去はそう難しくなかろう。しかし、問題は、この除去したCO2をどこに捨てるかだ。 日本は、広大な土地や、利用されそうにない海がある国ではない。どうするつもりか考えないで、発電技術だけ開発しても使いようがなかろう。 日本のバイオマス発電のなかには、安価な原料をどこから調達するつもりなのかわからぬものもある。 実験し易い原料を使ってバイオマス発電の研究を行ったところで、商用化の際は違う原料になるなら、全く無駄な研究になりかねまい。 なかには、高価な原料をわざわざ使う、首相が後押しするプロジェクトもある。 → 「バイオにかこつけた補助金ばらまき行政 」 (2006年11月9日) 日本は、この状態で、研究開発テーマの取捨選択をせざるを得ない。担当者の苦労は並大抵ではなかろう。 エネルギーの場合、使い方によっても、その価値は大きく変わってくる点も忘れるべきではない。 自動車は、日本の基幹産業だから、自動車用の高効率燃料電池を研究するという話は、誰でもよくわかる。しかし、ドライブしない時、自動車に搭載されている電池で、家庭へ電気を供給することはできないのだろうか。 もしも、そんな仕組みが可能なら、状況は大きく違ってくるかも知れない。 何故、こんなことを考えるかといえば、日本の電力供給でしばしば問題視されるのが、ピーク需要対応能力だからである。もし、ピーク時に自動車が電力を供給してくれるなら、有難いことである。 夏の直射日光が燦々と注いで冷房利用が急増するピーク時に、発電量が伸びる太陽電池も同じこと。 そんなことより、建物に水を撒いて温度を下げた方がよいとの話もあるが。 もっとも、冬、分散発電の廃熱暖房を導入するのが、全体の省エネルギーに効くという話も聞く。 全体として、どちらの方向に進もうとしているのか、日本政府は、もっと分かり易く説明するつもりはないのだろうか。 --- 参照 --- (1) http://www.ostp.gov/pcast/PCAST-EnergyImperative_FINAL.pdf (2) http://www.energy.gov/news/4495.htm エネルギーの将来の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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