■■■ 分類の考え方 2013.12.11 ■■■

ハダカデバネズミでふと考える

ハダカデバネズミが注目される理由は色々ある。生活シーンからすれば、ネズミやモグラの仲間ということになるが、その特徴をあげてみると、はたして仲間と呼べる動物なのか疑問が湧いてくる。

 ・外見上、極めて特殊に映る哺乳類である。
  -しわくちゃの無毛皮膚が異様感を与える。
  -哺乳類だが変温動物らしい。
    [哺乳類のなかでは低い体温のようだ。]
  -ネズミに比べるとかなりの長寿である。
    [癌にかからない。]
 ・群れで社会を形成して暮らす。
  -一族外は殺戮対象となる。
  -幼児教育期間が長い。
  -育児は社会全体で支援する。
  -ヒエラルキーが形成されている。
    [ハウスキーパーとソルジャー階層]
  -体重あるいは大きさが階層内ランクとされる。
  -挨拶的鳴き交わしが上下関係提示を兼ねる。
  -上位はトンネル内出会いでは上側を通行する。
  -寝室で山積み状態で寝る。
 ・生殖行為は限定される。
  -子供を産むのは女王のみ。
    [鼠の特徴である多産能力がある。]
  -女王は労働監督役も兼ねる。
  -種付け役の雄も限定されている。
 ・構築したトンネル内のみで生活する。
  -温湿度一定な閉鎖系で社会をつくる。
  -小さな眼はあるが耳は無いようだ。
  -裸だが、触覚のような髭的毛がある。
  -痛覚がないらしい。
  -出歯(門歯)が切削兼感覚器官である。
    [出歯でも、口唇を閉じることができる。]
  -高濃度二酸化炭素環境に耐える。
 ・個性がありそう。
  -喧嘩もし、遊ぶ。
  -反抗的態度を示したりも。

色々あるが、なんといっても目立つのは、哺乳類なのに「真社会性」を示すという特異性。
ただ、「ダマラランドデバネズミ」も該当するそうだ。どこが違うのかはよくわからないが。下図のように、両者は近縁種ではあるが、直接分岐した訳ではない。この両種以外の類縁種は単独生活だったり、数頭で「社会」を形成する程度で、全く違う生活文化だそうである。従って、この両者は、それぞれ独自に「真社会性」を生み出したと考えるしかないらしい。
そうなると、祖先からして社会性を発揮していて、それが生殖まで進んだのか、単独生活から一気に特殊な社会性に進んだのか気になるところ。安定社会を形成し、それぞれが分をわきまえさえすれば、それなりに個性を発揮できる点がことさら嬉しかったのだろうかなどと考えたり。

しかも、蟻や蜂と違って、単純なルールで行動しているようにはとうてい思えないところも凄い。どう見ても、共有知識としての立体空間地図を持っていそうだ。どうやってそんなことが可能になるのだろうか

┌─ダマラランドデバネズミ
┌┤
│└─1種
┌┤
│└──1種
┌┤
│└───3種
┌┤
│└────4種
┌┤
│└─────3種
┌┤
│└──────1種

└───────ハダカデバネズミ

【参考】
沓掛展之(総合研究大学院大学) 進化行動生態学 研究室 「表現型の進化モデルと系統種間比較から適応進化を明らかにする計算行動生態学」 https://sites.google.com/site/nkutsukake/research/pcms
ハダカデバネズミ - うごく!どうぶつ図鑑 - 東京ズーネットBB [video] http://www.tokyo-zoo.net/movie/mov_book/0311_03/index.html
(岩波科学ライブラリー 生きもの) 「ハダカデバネズミ - 女王・兵隊・ふとん係 - 」 [動画あり] http://www.iwanami.co.jp/hensyu/science/
Naked mole rat BBC http://www.bbc.co.uk/nature/life/Naked_mole_rat


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