表紙 目次 | ■■■ 分類の考え方 2014.8.13 ■■■ 日本のネコは3種類か 「飼い猫」とはヒトが作りだした生活文化であり、そんな文化が他地域に伝播したなら、鳴き声表現もそのまま伝わるのではなかろうか。 そんな観点で、各国の擬音語がどれだけ似ているか見てみたくなった。そんな絵が販売されているので、言葉を引用すると以下のようになる。あまり当てにはならぬようだが。(source:"CAT SOUNDS" by JAMES CHAPMANA) MOST LANGUAGES AGREE ON THE SOUND CATS MAKE. 英語 meow ←"-mew"か。(日本語と違いダブらない。) スエーデン語 mjau スペイン語 miau フランス語 miaou イタリア語 miao ベトナム語 meo ロシア語 myau [МЯУ] BUT THERE'S NOTHING WRONG WITH BEING DIFFERENT. 日本語 (nyan) ←ニャンは猫で擬音はニャー[nyâ]。 韓国語 yaong ←頭のn抜けではないか。 エストニア語 näu 日本語の場合、二重母音の音は、その前の子音に単母音を組み合わせた一音にして母音を延ばしたりして、強勢表現にしたがる傾向があるから、それほど違わない感じがする。子音Mを子音Nに替えるのもよくあることだし。 尚、音はよくわからないが、お隣はこんなカンジ。 中国語 喵(miao) 北アフリカやアラブ、ペルシア、印度、東南アジア、島嶼の音がわからないのでなんといえないが、ユーラシア大陸一気通貫状態に映る。犬の吠声表現とはいささか違うのである。 それを見ると、現在アフリカに棲息しているリビア山猫が家猫化して全世界に広がったというモデルは、はたして妥当なのだろうか。フツフツと疑問が湧いてくる。 もちろん、分子生物学的分析結果からすれば、欧州に僅かに点在するヨーロッパ山猫や、アジアのジャングル山猫系ではないというのだが、どうも腑におちぬ。 感覚的には、古代エジプト遺跡に残る"聖"猫の姿はアビシニアンそのもの。これは、写真でみても、リビア山猫が飼いならされた動物と言われれば120%納得がいく。 でも、飼いならした場所はナイル流域ではなく、涸川のある乾燥地帯だという気がする。水がある場所では、猫とヒトは餌で競合するが、水が乏しくなると灌漑農業化し、ヒトは穀類・ネコは鼠という分化が発生するし、水場を両者共用せざるを得なくなるからだ。 しかし、井の頭公園のツシマヤマネコをじっくり眺めていると、群れ動物たる狼の家畜化のようにはとても進まない感じであり、馴らすにはなんらかのブレークスルーがあったのではないという気になる。それをエジプト人が実現したため、家猫の祖先がリビア山猫ということなのかも。 でも、日本のミケを眺めていると、リビア山猫とは余りに違いすぎる。ご先祖がリビア山猫と言われても、素人からすれば、にわかに信じがたし。その血も入ってはいるだろうが、日本は人工的な育種嫌いの地だから、とてつもない雑種なのは間違いあるまい。本流がリビア山猫とは思えないのだ。 ともかく、日本の「従来型」家猫は、見かけ上の種類がとんでもなく多い。品種改良せずにこれだけのバラエティとは、実にユニーク。今や、これに様々な外来品種が掛け合わさった状態だから今後どうなることやら。 白猫[単色] 黒猫[〃] (灰色猫[〃]、茶色猫[〃])・・・淡色だが、よく見ると模様ありが多い。 白黒猫[腹足白色に黒色斑模様] 錆猫[地色明るい茶色に黒色斑模様] 鼈甲色猫[錆の逆] 鯖虎猫[腹足灰色に黒色縞] 雉虎猫[〃茶色に黒色縞] 茶虎猫[〃薄赤茶色に濃茶色縞] 茶虎白ブチ猫[地色白色に茶虎] 鯖白猫[〃に鯖虎] 茶ブチ猫[〃に茶色模様] 灰ブチ猫[〃に灰色模様] 三毛猫[〃に黒と茶色模様] 二毛猫[〃に特定部位の色変わり] とはいえ、模様が薄く、茶系統一色に見えるタイプもいない訳ではないから、それこそが原点と言えなくもないが。直感的には鯖虎に一番山猫臭を感じるが、それはマヌルネコを見ている時間が長いからかも。 だが、ペルシャ(イラン系)を見た瞬間、リビア山猫起源説をにわかには信じがたくなる訳である。アンゴラ(トルコ系)の血を導入した品種のようだが、両者ともに、長い毛が特徴であり、リビア山猫の毛が伸びたとは思えないからだ。 小生など、ここにはマヌル猫とアジア系の山猫の交雑ネコの血が流れていると確信してしまうのである。 そして、アジア系の家猫の大きな違いは、水好きネコが少なからず存在すること。沙漠地帯に近い地域のネコとは大違いなのである。トルコには泳ぐ品種がいるそうだし、東南アジアでのリゾートで、かまっていたスタッフが突然ネコを池に放り込むのをよくみかけたせいもある。(一種の水風呂)そこから類推するに、日本でもかなりの割合で水OKネコが含まれていそう。そもそも、魚食で生きてきたネコが多い社会なのだから。 そうそう、日本の家猫の特徴としては、もう一つ重要なことを忘れる訳にはいくまい。それは、"ボンボン"タイプの短い尾のネコが少なくないという点。古来より日本に生息していたそうだが、世界的には珍しいので、そこに魅了された米国人が「Japanese Bobtail」として愛好したことでよく知られている。 ここが不可思議なところ。 切れ尾は劣性遺伝子だから、常識的には優勢な長尾だらけになるもの。繰り返すが、日本は育種しない社会なのだから、これは長尾が滅多にいなかったことを意味しよう。しかしながら、古い日本画に登場するのはもっぱら長尾であり、いかにも矛盾している。まさか想像で描いたとも思えないし。 だが、日本だけ、ボブ型尾の猫社会が続いたシナリオを描くのは難しいことではない。試みに、書いてみようか。 まず押さえておくべきは、虎や雪豹ではっきりわかることだが、ネコ族の基本は長尾という点。尻尾はコミュニケーション上欠かせないもののようだし、跳び回る際のバランスをとる上で重要な役割を果たすからだ。そうなれば、短尾が生まれても、野生で生き残るのは難しいかろう。 ところが、例外ありなのだ。 それは、そのものズバリの北米のボブキャット。この種は、欧州の山猫から派生したと見られている。 つまり、欧州大山猫こそがボブ型尾の元祖ということ。おそらく長尾が持つ種に付随した特性が欧州で発生したなんらかの環境変化に不都合だった結果なのだろう。 このことは、欧州大山猫の系統の家猫がおり、それが日本にまで伝来したとはいえまいか。長尾の家猫伝来よりずっと昔のこと。 ユーラシア大陸全体に伝播したが、その後に、リビア山猫発祥の長尾家猫が広がってきたため、短尾山猫は交雑の結果消え去ってしまったと見るのである。日本だけは、長尾との交雑が進まずに残っていると考えると辻褄が合う。 つまり、古い絵に描かれている日本の長尾家猫は、短尾家猫とは、別な種として隔離して育てられたことを意味する。 古事記や万葉集にはネコは登場しないそうだが、決していなかったのではなく短尾家猫はそこらでウロウロしていたということではなかろうか。つまり、家猫というより、事実上、野良猫。しかし、野犬とは違いあくまでも家猫の範疇。ヒトの生活圏内で自由気ままに外で生活する、主人わからぬ、地域の半飼い猫ということになろう。 一方、長尾家猫は必ず主人が存在する。紐をつけたりして、家屋や限定した庭の内で大切に飼われていたことになる。貴族や寺院内でしか見られない希少な品種扱い。 当然ながら、両者は、明確に峻別されており、知識階級が関心を払うネコとは長尾家猫だけだったとはいえまいか。両者の交雑は事実上厳禁だった時代が長かったから、日本では短尾家猫が生き残った訳である。 そして、よくあるバケ猫とか、恐ろしい大猫話は、これらとは全く違う山猫。なかには、野生化した長尾家猫の実か違いもあったかも。ただ、山猫だから、森のなかで、ヒトを襲ったりもしよう。従って、言い伝えとして残っているのだと思う。現在は、山猫は、津島と沖縄の山原に痕跡的に棲息しているだけだが、古代には様々な森に生存していたと見てもよかろう。 ・・・という見方をすると、日本に住む猫は、短尾家猫、長尾家猫、小型長尾山猫の3種ということになる。 (C) 2014 RandDManagement.com |