表紙 目次 | ■ 分類の考え方 2015.10.25 ■ 日本列島のリス族で全体像を類推可能 乾燥地帯へ入り込んだ頭デッカチ形齧歯類の話に続いて、日本では、可愛いと人気があるリスを取り上げよう。 ネズミと違って清潔感があるとのイメージが形成されているようで、手でナッツを食べさせて大喜びの図をよく見かける。国外での狂犬病の恐れを知らない無知からくるもの。 ただ、尻尾がふさふさしており、チョコマカとその辺りを動き回るから、その仕草を見るのは確かに面白い。 素人にとって一番難儀なのが、陸上棲でトンネルを住居とする「山ビーバー」の扱い。分布は米国北西部〜カナダ南西部。 この種が、古くからリスの仲間とされている。しかも、厄介なことに水棲のビーバーと兄弟姉妹かのような名称とくる。あちらは、栗鼠から遠く、鼠に近いとされた。言うまでもないが、手足も尾も泳ぎに向いた形状であり、短足で首無的ズングリ胴体の山棲みビーバーとはえらい違い。外観的には、「山ビーバー」は山嵐形の仲間。 しかも、歯の視点で見れば、"超"原始的で、他の現存齧歯類とはかけ離れている。門歯だけでなく、臼歯にも歯根が無いからだ。擂り潰し続けていないと歯が伸びすぎてこまるだろうから、かなり堅い枝や茎を食さずにはいられない体質だと思われる。そして、日がな一日、穴の中でモグモグしているのかも。ただ、穴棲みの理由としては、針葉樹林帯の植生を考えると、草が少なくなる冬場に備えて枝や茎を土中に保存しておくことの方が大きいのではないか。リスがドングリを貯蔵するようなもので。 それに、もう一つ、"超"原始的と見なされる理由は「パラミス」似という点があげられよう。北米で発見された、6,000万年前の齧歯類と思しき化石動物の末裔が現存していることになるからだ。 それなら、素人的には、齧歯類を4分類とし、山嵐形、鼠形、栗鼠形にパラミス形を付け加えた方が納得感が生まれるのだが。 この例外的存在を別にすれば、リス族の全体像はわかり易い。 と言うか、日本国内での状況をいわば常識的に知っているからだ。と言うか、余りにシンプルなので。 <樹上型> 【北海道】 蝦夷栗鼠 【本州/四国/九州】 日本栗鼠、[冬眠超小型]日本山鼠 【渡来】 台湾栗鼠・・・優勢 <半樹上型> 【北海道】 縞栗鼠 <滑空型> 【北海道】 蝦夷モモンガ 【本州/四国/九州】 [大型]ムササビ,[小型](日本)モモンガ 要するに、この世界版を考えればよいだけのこと。ただ、国内にいないのが<地上型>だが、<半樹上型>の縞栗鼠はその類に当たっているようだ。このタイプでよく知られているのはプレーリードッグである。上野動物園の猿長屋の向かいで飼われていて、トンネル穴から出入りしているから、これが東となりの樹木とケージ間をチョロチョロ動く日本栗鼠と同類と感じる人は滅多にいまい。 ただ、誰が見ても齧歯類なのは間違いない訳で、鼠形や山嵐形よりは栗鼠型かナという感じはする。 この辺りの変遷だが、ボデイプランとしてのリスが完成すれば、[樹上型]→[地上型]→[滑空型]と進んで来るというシナリオは比較的納得し易い流れではないか。 おそらく落下したままになっている大量の堅果を食すことで生まれたのが齧歯類。それなら樹上へと進んだのが栗鼠の元祖と考えれば、大発展しすぎれば地上回帰しかなかろう。そこにはすでに鼠が存在するから、競合しないように発展したに違いない。最終的には、夜間樹上で動き回るタイプまで登場することになる。空いている領域はここしかなかったのであろう。 日本山鼠だが、これは古代の名残と言われているが、印象的にはネズミの仲間的であるから、齧歯類の大元的な様相を残している動物なのかも知れぬという気にはなるが、どれがどのような特徴を指すのかは定かでない。ともあれ、欧州で化石が発見されているから、かつては、アフリカ〜ユーラシア全体にどこでも居たのだろうが、中国辺りは森が消滅したせいか、大陸には全くの空白地帯が広がっている。つくづく、日本列島のガラパゴス性を感じさせる分布といえよう。まあ、ヒト属もそんなところかも。古代文化をそのまま維持できる類い稀な風土なのだから。 ─・─・─リスの分類─・─・─ │↓齧歯類(単歯類) │┌山嵐形齧歯類 └┤ ┼├鼠形齧歯類 ┼└栗鼠形齧歯類 ┼┼┼│ ┼┌─┘ ┼│ ┼│┼┌<祖形>[化石]パラミス/Paramys@6,000〜5,600万年前 ┼│┌┴<山ビーバー>/Boomer or Mountain beaver@北米 ┼││ ┼├┤【栗鼠群】 ┼││ ┼││┌─大栗鼠@アジア ┼││├─南米豆栗鼠 ┼│││ ┼│└┤<真正栗鼠系> ┼│┼│ ┼│┼│┼┌─[樹上型]栗鼠 ┼│┼│┌┤@広域分布[含日本列島] ┼│┼││└─[滑空型]ムササビ,モモンガ ┼│┼││ ┼│┼││┌─台湾栗鼠,等@アジア ┼│┼│├┤少々異質 ┼│┼││└─縞椰子栗鼠 ┼│┼└┤ ┼│┼┼│┌─荒毛地栗鼠 ┼│┼┼└┤[地上型] ┼│┼┼┼│┌マーモット,プレーリードッグ, ┼│┼┼┼└┤┼縞栗鼠[半樹上],地栗鼠 ┼│┼┼┼┼└油椰子栗鼠 ┼│ ┼│┌──ユーラシア系(林眠族) ┼││┼ -中国山鼠/Chinese ┼││┼ -森山鼠/Forest,バロチスタン森山鼠,Woolly@トルコ ┼││┼ -眼鏡山鼠/Garden,アジア眼鏡山鼠,マグレブ眼鏡山鼠 ┼││┼ -欧州山鼠/Hazel ┼││┼ -細尾山鼠/Masked mouse-tailed,Roachの山鼠,Setzerの山鼠 ┼││┼ -砂漠山鼠/Desert ┼│├──アフリカ山鼠/Woodland,目玉山鼠/Spectacled, ┼││┼ Angolan African,Christy's,Jentink's,Johnston's African,Kellen's, ┼││┼ Lorrain,Small-eared,Monard's,Nagtglas's African,Rock,Stone,Silent ┼││ ┼└┤【山鼠群】/Dormouse ┼┼│ ┼┼│┼┌大山鼠/Edible@欧州 ┼┼└─┤ ┼┼┼┼│↓古代分岐の可能性も ┼┼┼┼├[鮮新世化石]日本山鼠@欧州 ┼┼┼┼└山鼠 or 冬眠鼠/Japanese@日本(本州、四国、九州、島後) (参考にした学術リソーシスの著作者) 鈴木仁,五十嵐和広,金子之史,今泉忠明,岩佐真宏,徳田御稔 (C) 2015 RandDManagement.com |