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■ 分類の考え方 2015.10.26 ■


鼠の多様性には恐れ入る

齧歯類は、山嵐や栗鼠の仲間なら素人でもなんとか全体が見渡せるが、残りの本流たるネズミになるとほとんどお手上げ状態である。分類は深く広がりもあるので、俯瞰的に眺めることが難しい。
取り敢えず、どんな分類になっているか追うだけでも大変な労苦。

まあ、一段目の、水棲のビーバー、穴掘り系、滑空の鱗尾栗鼠、カンガルー的体躯の跳兎類は、一応はここに入るようだ程度。どう見ても異端であり、はたして系譜上本当にこの辺りに該当するのかは定かではないのでは。素人判断だが。
ところが、その先は正直のところなにがなにやらである。特に、絹毛鼠のグループと"真正"鼠のグループ間の関係と、その元祖がどの辺りの発祥なのかが今一わかりにくいことも、理解が進まない理由の一つだ。
ネット上の様々な解説を読むと、絹毛鼠は基本的にユーラシア動物のようで、森林環境から、乾燥環境への移行期に生まれた感じがしてくる。それなら、乾燥地系の荒地鼠や砂鼠も同類に思えるが、そうではないようだ。しかも、気になるのがマダガスカルの孤立的残存種の存在。様々な異端がアフリカに存在するところを見ると、一族のメッカはアフリカかも。
だが、そうだとすると、"真正"鼠が登場するシナリオが不透明すぎる。
ともあれ、登場してからは、寒冷化対応、その後の樹林棲化、野原棲化、地域特殊化と進んでいったとのシナリオは澱みなきお話なのでで心地よい。

只、厄介なのは、絹毛鼠が新世界にも広がっている点。ここもゴチャゴチャ観を呈する理由の大きな原因。例えば、アメリカ畑鼠とユーラシア畑鼠ははたして移動族としてまとめてよいのかはなはだ気になる訳である。と言うのは、絹毛鼠グループにはアメリカ鼠等のような種が入っているからだ。新世界種というよくある概念はそこらじゅうで使われているのに、何故にココではその発想は用いられないのか、素人にはその理由が読めないのである。
まあ、種が多すぎて、分岐の年代が今一不透明だから、難しそうではあるが。
それに、新世界には、もう一つ混乱要因が存在している。齧歯類だけに注目していると見逃してしまいかねないが、重歯類(兎)や尖鼠類(土竜)の分布も考慮しておく必要があろう。これらは、どういう訳か南米だけは進出できなかった模様。従って、それらが本来活躍できそうな領域に鼠が進出していることになる。当然ながら、異端的姿になろう。それらも鼠として全体像のなかに治める訳だから煩雑化は避けられまい。

それぞれの種の特徴は説明を読めば理解はできるが、それをグループ分けされてしまうと、はなはだわかりにくい動物と言えよう。自然ってそんなに複雑怪奇なものではなかろう、と言うのが小生の感覚であり、分岐のシナリオも本来は難しいものではないように思うのだが。
但し、それはお茶飲み話であることは間違いない。思いつき的シナリオは誰でも創出できるが、それを動物史全体と祖語が生まれないように論理的に再構成し、その証拠となる事象を集めるのはとんでもなく難しいのは自明だからだ。
しかし、だからこそ、とりとめもない議論に価値があるということだと思う。もっとも、興味が湧いてこその刺激。・・・例えば、在北海道種が、本土より、屋久島や佐渡の種に近いという論文があったりする訳で、本土では新しい種が優越化したのか、はたまた海の道があったのだろうかと、ついつい考えてしまう。

下記は、いい加減にまとめてみた分類図。そうそう時間がかかる訳でもないので、作って見たものの、全体像はさっぱりわからん。一知半解どころか、一致零解である。

鼠型齧歯類

│┌[淡水棲]ビーバー類[海狸]/Beaver@北米+欧州
├┤新世界の異端
│└[土中トンネル居住]堀鼠類/Pocket gopher@北/中米西部
ポケットマウス類/Pocket gopher@北/中/南米[砂漠]
カンガルー鼠類/Kangaroo rat/mouse@北米[砂漠]

│┌[滑空移動]鱗尾栗鼠類/@アフリカ西部・中部 [熱帯原生林]
├┤アフリカの異端
│└跳兎類/Spring hare@アフリカ南部[サバンナ〜半砂漠]

│┌跳鼠類/Jumping mouse,Jerboa,Birch mouse
└┤
鼠近隣

│┌─足長マウス系/Pouched rat
│├─棘山鼠系/Oriental dor mouse
│├─夜マウス系[カンガルーハムスター]/Mouse-like hamsters
│├─盲鼠系/Blind mole-rat,Bamboo rat,Root rat,Zokor
└┤
├─<キヌゲネズミ系

└─<ネズミ系
Togo mouse
Spiny mouse,Brush furred mouse,Link rat
[乾燥地系]@アフリカ全域+中東+中央アジア
│ 荒地鼠/Gerbil砂鼠/Sand rat,Jirds

"真正"鼠群

┌───────┘
元祖(3000万年前?)

→[古代型]<日本列島未達>
├──────────────棘鼠/"spiny" Rat

1200万年前【寒冷化】
↓↓↓
┌───────萱鼠/Harvest Mouse
@日本では福島以南

│└──────┬溝鼠/Brown Rat
├熊鼠/House Rat
日本熊鼠/Blac rat
├南洋鼠/Polynesian Rat
毛長鼠/Ryukyu long-haired Rat
@徳之島〜奄美〜沖縄北部

││600万年前【樹林棲化】
││
││┌───────────・・・
││├───────────・・・
││├───────日本二十日鼠
│└───白足鼠/Mouse
│  [二十日鼠/M"Common" House]

200万年前【野原棲化】

50万年前
↓↓↓
沖縄二十日鼠/Okinawa Mouse
↑ ?
┌────────
@雲南
┌──
@南インド
├─────
@ラオス,カンボジア

@ベンガル
└─

└────◆ユーラシア系3分裂
@地中海
└───────
@イベリア

@小アジア

@ライン下流

└─

600万年前【樹林棲化】
↓↓↓↓↓
┌────@華北-満州-半島
@北海道[藪域]
樺太赤鼠

│└────@大陸+尖閣
背筋鼠

│└─────@長江流域

││@日本列島のみ /Large Japanese mouse
│└─────────赤鼠
▲平野と基幹路
↓赤鼠の分化
┌──@本土
└──┤┌─@屋久島
└┴┬@佐渡
@三宅島,大島
@隠岐,対馬
@北海道[森林域]

││▼残ったスポット(先住者残存)
││┌─────────姫鼠
│││@日本列島のみ /Small Japanese mouse
│└
└─────────@ヒマラヤ
│▲アジア
└───
│▼欧州
└───────────@欧州
2000万年前の可能性もあるが600万年前かも
1250万年前
└─┴───┴────沖縄棘鼠/Ryukyu
徳之島棘鼠/Tokunoshima
奄美棘鼠/Amami
100万年前
↑↑↑↑↑600万年前【樹林棲化】
↑↑↑1200万年前【寒冷化】


キヌゲネズミ系

元祖(3800万年前?)

│┌<ハタネズミ類>
││日本畑鼠/Japanese grass vole@日本[除く四国]
││葦畑鼠[大畑鼠]/Reed vole@中国
││北畑鼠/Field vole
││ツンドラ畑鼠/Tundra vole
││ユーラシア畑鼠/"Common" vole
││モンゴル畑鼠/Mongolian vole
││アメリカ畑鼠/Meadow vole
││アメリカ水畑鼠/American Water vole
││プレーリー畑鼠/Prairie vole
││
││<ヤチネズミ類>
││┌大陸谷地鼠/Grey Red-backed Vole
│││└──[亜種]蝦夷谷地鼠@北海道
│├┤
││├尨毛鼠/Hokkaido red-backed Vole@北海道-千島-樺太
││├姫谷地鼠 or 帝鼠/Northern red-backed Vole
│││ @ユーラシア-北米の北方[北海道]
│││
││<ビロードネズミ類>
││├スミス鼠/Smith's Red-backed Vole@日本の山地基幹路
││└谷地鼠/Japanese Red-backed Vole@日本の山地
││@東北
││┌─┤
││@北関東
││┌┤
││││@信州
│││└─┤
││@紀伊
││└─┤
││@三宅島
││@北海道
││└──┴@佐渡島
├┤
││↓日本未達
│├─水畑鼠/Water vole
│├─旅鼠/Lemming(シベリア旅鼠/Siberian lemming,
││黒足旅鼠/Black-footed lemming.森旅鼠/Wood lemming)
│└─臭鼠[マスクラット]/Muskrat

↓日本未達
├──絹毛鼠類/Hamster@基本的にはユーラシア
ハムスター (日本列島不在)
強制移住→@北米
┌───────東南アジア地域
│┌┤[現代型]
││└───────他地域
└┤
│┌───────インドアジア系
└┤[古代型]残存僅少
└───────マダガスカル系
↓新世界
├──ウッドラット類@北米/Deer mouse,
White-footed mouse, Packrat, Grasshopper mouse
├──アメリカ鼠類@南北米
└──木登鼠類Climbing rat@南北米

(参考にした学術リソーシスの著作者) 鈴木仁,五十嵐和広,金子之史,今泉忠明,岩佐真宏,徳田御稔
・・・おそらく書籍も多々あろうが、調べていないので、この程度の記載でご勘弁のほど。一次ソースでないネット情報に依拠していることが多いということでもある。当然ながら、素養を欠くためわからないことも少なくない訳だが、習慣的に、そんなことを気にせずに読みとばしている。従って、「参考にした」と呼んでよいかはなんとも。

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