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■ 分類の考え方 2015.11.15 ■


進化抑制型の典型が兎

重歯類の祖先は5000万年前に出現と見なされているようだ。
その末裔たる兎形動物は約60種とか。古いタイプの「鳴兎」と「野兎+穴兎」という単純な全体像であり、齧歯類にお株を奪われた印象が強いが、それなりに発展してきたようである。と言っても、齧歯類と比較すれば、種の数は極めて少ない。進化の道具箱が小さいと言うよりは、保守的な動物なのであろう。腸内細菌保全が肝の動物のようだから、新しい食性への挑戦を避けるのかも知れぬ。結果、「挑戦的進化を遂げた多種多様なネズミv.s.進化抑制で類似種のみのウサギ」という構図ができあがってしまったようだ。
(肛門と尿道が分離されていないのは、糞が軟便と固形球形便の2種類であるのと関係していそう。もちろん、軟便の方は再度食すことになり。腸内細菌と生理活性物質を取り入れるためにはこれが必須なのだと思われる。)
もっとも、全体を眺めると、北米でメジャー化したようだから、そこからユーラシアに入って発展を遂げるというのは時期的に遅すぎた可能性もあろう。

ド素人からすれば、この特殊な食物消化サイクルなかりせば、単歯v.s.重歯や、臼歯の違いを捨象して、齧歯類としてまとめたところでたいした問題ではなさそうに見える。それに、「鳴兎」はハムスターそっくりとくる。その元祖とされている化石にしても短耳らしいし。
長耳が印象的なのは、野兎がたまたま美味しいニッチを見つけたということのようだ。おまけに、穴兎をヒトが利用するようになったから、目立つ種になったにすぎまい。
そのような見方をすれば、猿系分岐に辺り登場したツパイやヒヨケザル(非猿扱い)と同じように、齧歯類分岐に辺り登場したマイナーなポジションの動物ということになろう。

ただ、細部的にはよくわからぬ点も。
なかでも、気になるのが、化石種と似ているとされるアマミノクロウサギの扱い。化石種群と一緒ということで、古代種として騒がれていたが、流石にそれは無理筋となったようである。
同じ地域の齧歯類から見て、化石種と同類と見なすのはシナリオ的に苦しいと思うが、そんなこと意に介せずという方の方が多いということであろう。
下図で言えば、赤兎-ウガンダ兎-メキシコ兎辺りに位置することになるのだろうが、これもシナリオを描くのはそう簡単ではなかろう。素人的には、残存種だとすれば、荒毛兎等のユーラシア系と北米系が分岐した辺りだと違和感が薄い訳で。まあ、スマトラ兎も同様である。種は違うのかも知れぬが野兎もいるようだし、孤立野兎から生まれた異端の可能性もあろう。(下図では野兎から削除した。)

そうそう、メキシコ兎の存在が光る。北米では綿尾兎として大いに発展したが、南米には入れなかったからである。

   ─・─・─重歯類の分類─・─・─
前兎類】
 [化石]プロラグスProlagus@欧州
 [絶滅@1780年]/ASardinian pika@コルシカ島周辺
鳴兎類】@東欧〜アジア&北米-寒冷地
    <北方棲息族>
 アルタイ鳴兎/Altai Pika
 Silver Pika
 首輪鳴兎/Collared Pika
 Hoffmann鳴兎/Hoffmann's Pika
 北鳴兎/Northern Pika or Siberian Pika
  └蝦夷鳴兎/Japanese Pika@北海道[山岳地帯]
 モンゴル鳴兎/Pallas's Pika
 アメリカ鳴兎/American Pika
 Turuchan Pika
 Ili Pika
    <潅木帯・ステップ棲息族>
 甘粛鳴兎/Gansu or Gray Pika
 口黒鳴兎/Plateau or Black-lipped Pika
 ダウリ鳴兎/Daurian Pika
 Tsing-ling Pika
 Nubra Pika
 ステップ鳴兎/Steppe Pika
 アフガン鳴兎/Afghan Pika
 チベット鳴兎/Moupin Pika
 Thomas鳴兎/Thomas's Pika
    <山地棲息族>
 赤耳鳴兎/Chinese Red  Forrest's Pika
 Gaoligong Pika
 Glover鳴兎/Glover's Pika
 Himalayan Pika
 (Ili Pika:北方棲息族)
 Kozlov鳴兎/Kozlov's Pika
 ラダック鳴兎/Ladak Pika
 大耳鳴兎/Large-eared Pika
 Muli Pika
 黒鳴兎/Black Pika
 Royle鳴兎/Royle's Pika
 赤鳴兎/Turkestan Red Pika
新兎類】
 <"真正"兎類>
穴兎/European rabbit・・・家畜化(飼兎)
├荒毛兎/Hispid hare@インド[沙羅双樹林]
┌┤
│└[?]ブッシュマン兎/Riverine rabbit@南アフリカ共和国[藪]
┌┤
││↓北米系
││┌ピグミー兎/Pygmy rabbit@北米北西
│└┤
└[綿尾兎系]@北米〜中米
沼地兎/Swamp rabbit
砂漠綿尾兎/Desert cottontail
ブラシ兎/Brush rabbit
森兎/Forest rabbit
Manzano Mountain cottontail
メキシコ綿尾兎/Mexican cottontail
コスタリカ綿尾兎/Dice's_cottontail
東部綿尾兎/Eastern cottontail
トレスマリアス綿尾兎/Tres Marias rabbit
オミルテメ綿尾兎/Omilteme cottontail
サンホセ兎/San Jose brush rabbit
山綿尾兎/Mountain cottontail
姫沼地兎/Marsh rabbit
Robust cottontail
アバラチア綿尾兎/New England cottontail
Venezuelan lowland rabbit
┌┤
│└──[野兎系]
Jackrabbit@北米西部
アンテロープジャック兎/Antelope jackrabbit
尾黒ジャック兎/Black-tailed jackrabbit
白脇ジャック兎/White-sided jackrabbit
テワンテペクジャック兎/Tehuantepec jackrabbi
黒ジャック兎/Black jackrabbit
尾白ジャック兎/White-tailed jackrabbit
Broom hare
コルシカ野兎/Corsican hare
藪野兎/European hare
砂漠野兎/Desert hare
アフリカサバンナア野兎/African savaana hare
ケープ野兎/Cape hare@アフリカ〜中東〜モンゴル
エチオピア野兎/Ethiopian hare
アビシニア野兎/Abyssinian hare
グラナダ野兎/Granada hare
赤首野兎/Scrub hare@南アフリカ共和国
ヤルカンド野兎/Yarkand hare@新疆ウイグル
インド野兎/Indian hare
ビルマ野兎/Burmese hare
雲南野兎/Yunnan hare
海南野兎/Hainan hare
チベット野兎/Woolly hare
支那野兎/Chinese hare
満州野兎/Manchurian hare
朝鮮野兎/Korean hare
橇[カンジキ]兎/Snowshoe hare@北米北部[針葉樹林]
日本野兎/Japanese hare
  (東北野兎,佐渡野兎,九州野兎,沖縄野兎)
雪兎/Mountain hare@北半球北部+北海道
北極野兎/Arctic hare
アラスカ野兎/Alaskan hare
Tolai hare
┌┤
│└───メキシコ兎/Volcano rabbit@火山域のみ

┌──ウガンダ草兎/Bunyoro rabbit
│┌┤アフリカ南部
││└──[赤兎系]@南アフリカ共和国
││ナタール赤兎/Greater red rockhare
││ランド赤兎/Jameson's red rockhare
││Smith赤兎/Smith's red rockhare
└┤
├───[?]スマトラ兎/Annamite striped rabbit
└───[?]奄美野黒兎/Amami rabbit@奄美&徳之島

(参考;上記の図とは違うのでご注意の程) 冨田幸:「アマミノクロウサギは本当に“ ムカシウサギ” か」 FOSSILS 63(1997),pp20, Palaeontological Society of Japan

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