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■ 分類の考え方 2017.7.27 ■


ト〜ダイ見えず

  道遠し 灯台あれど 下暗し 何処にあるのか 故郷の地

"ト〜ダイ"と言われると、たいていは"東大"のことと考える。
小生のように、毎日、「酉陽雑俎」の一節を紐解く習慣を身に着け、1年もたつと、"唐代"と考えてしまう。だが、それと同時に、"当代"かなと思ったりもする。行間を読めぬと、単純な語彙の意味を推し量るのも、はなはだ難しい言語であることがよくわかる。
名付ける際には、その辺りも是非とも考慮して欲しいものである。というか、ジャーゴンを使って部外者にはわかりにくくするのが、狭いコミュニティを愛する人々の掟だから、言うだけ野暮か。

しかしながら、"トーダイグサ"となれば、尻に"臭"を付けた語彙とは思えないから、草の名前とみなすことになる。
そうなると、これは"オイラ岬の灯台草"しかあるまいとなる。
そんな形象イメージの草とは、一体全体どんな形をしているのか気になってくる(ような、"異端児"もいる。)
そこで、写真を見て、一件落着といきたいところだが、読み違いなのに気付く。と言っても、同音の異なる単語があるということではなく、こちらが考える岬の灯台ではないだけのこと。・・・つらつら思うに、"燭台草"という名称にして欲しかった。

と言うことで、有毒な乳汁が出る二年生草本の、燈臺草/澤漆 or 五燈草/Sun spurgeの話。・・・

リンネの二名法から連綿と続く分類方法に従うと、金虎尾燈臺草燈臺草の1種となり、この属(大戟/ユーフォルビア)の代表種たる"トーダイグサ"ということ。分類を持ち出したのは、この属だけで約2,000種あると書いてあったのでビックリしたから。ここで「らしい」と書いたのは、素人が分類名称で馴染みがある「科」に関して様々な数字があり、どうなっているのかよくわからないから。おそらく、分子生物学的検討で変更が進んでいるし、それに伴う分け方も複数あるということなのだろう。(約300属7500種以上, 約240属6,000種. 218属5375種, 等々.)
ともあれ、膨大な数であるのは間違いない。

マ、専門家は新種命名をことのほか嬉しがるだろうから、凡人からすれば、ソリャ数も続々と増えていくヮ、と解釈することになるが、実はそういう話ではないのだ。この"所属"している種をチラッと眺めると、愕然とさせられるのである。
外見からすれば、余りにバラバラで、似ても似つかぬモノだらけなのである。(単純に数だけなら、よく知られるように菊が凄い。しかし、それに驚きはしない。凡人からすれば、形状から、"キク、アザミ、タンポポ"類が類縁とのイメージがもともとあるし、菊には細かな変異が矢鱈に多い上、雑種ができたりと、どうせ単にゴタゴタしているだけと解釈するからだ。要するに、"菊と言えば、確かに菊ダネ"といった、特徴がモロにでている種ばかり。ところが、トウダイグサになると、そもそも、イメージゼロ。実際、素人が外見から観る限り、雑多な種の寄せ集め以外のなにものでもない。にもかかわらず、この膨大な数とくる。)

そこでフト気付くことになる。・・・
こんな多種多様に見える植物のすべてを、一つ一つ細々と検討して、1つの"トーダイグサ"というグループにまとめあげた訳である。どう見ても、コンピューターに任せた多変量解析が簡単に通用するような世界ではないし。その気力には驚嘆の言葉以外ない。

おそらく、重箱の隅つつくの助的な仕事を延々と続け、ある時、忽然として世界が見えてくるのだろう。その何時か来るであろう一瞬に賭けるということか。
我々が"トウダイグサ科"というたった6文字の知識の源泉は、そんな、誰かの閃きの結果だったことになる。
現代では、分子系統解析が進んでいるから、カネさえあれば、分類はかなりのレベルまでわかるが、それではたしてシナリオを描ける人が出て来るかが問題であろう。
系統図はわかったが、それでなんなんダの時代である。

ともあれ、燈臺草の類は凄すぎる。
凡人には、こんな草は全く別な類だろうと思えるモノだらけだからだ。
もちろん、教育を受けていれば、どうしてそうなるかの説明は簡単そのもの。外見は全く違っていても、それは退化して見かけ異なるにすぎないとか、他の類と似ているのは収斂進化の結果と言えばよいのである。
しかし、どうしてこの種類だけ沙漠〜低湿地という驚くべき対応力を発揮できるのか。そうなると、一番最初はどのような姿だったかも、はなはだ気になる訳である。

【トウダイグサ属】
<代表"燈台草"のグループ>
燈台草/澤漆/Sun spurge, 野漆, 高燈台/大戟/Peking spurge, 夏燈台/鉤腺大戟
<錦草のグループ>
小錦草 or 乳草/斑地錦/Milk purslane@北米, 大錦草/-/Eyebane@中央アジア, 島錦草/飛楊草/Asthma-plant or Hairy spurge, [園芸木本種]ポインセチア or 猩々木/一品紅 or 聖誕花/Poinsettia@メキシコ, [草本種]猩々草/〃 /Mexican fire plant@南米, [園芸種]初雪草/銀邊翠 or 高山積雪/Snow-on-the-mountain@北米, 花麒麟/虎刺梅/Crown of thorns@マダガスカル
<多肉植物のグループ>
青珊瑚/Finger tree or Milk bush@東アフリカ, ラクティア/Dragon bones@インド (変種が流行:"ホワイトゴースト", "マハラジャ", "Elkhorn", "峨眉山", "蘇鉄麒麟", 等々.)
多肉植物と言えばサボテン/Cuctusだが、トウダイグサ科のトウダイグサ(Euphorbia)属にも沢山の種類が存在する。どう見てもアフリカ南部やマダガスカルが中心だが、インドやメキシコに知られた種があり、全世界に分布を広げているのは間違いない。サボテンと違って刺座が無いことで見分けることができるが、その特徴は杯状花(cyathia)だそうである。もちろん、傷つけると有毒な乳液が出て来ることも大きな違いだ。[織物と多肉直物のウエブ商店"isla del pescado"のリストには188items。]おそらく、この多肉系「ユーフォルビア」に嵌ってしまうのは、サボテンのそっくりさんということではなく、奇妙な形状になり易い点にあるのではないかと想定する。

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