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■ 分類の考え方 2017.11.23 ■


進化と分岐の考え方[続]

多細胞動物がどんな方向に進んで来たか素人なりにRecap。[→]
「動物」とは一体どういう出自で、そこからどんなプランで進んできたのか頭をひねってみた訳だが、考えれば考えるほど「単細胞⇒多細胞」は飛躍というほどの一大イベントではない気がしてきた。
個体が集合した群体という構造がすでにあるからだ。それはどう見ても、♂♀生殖のための集会場ではない。共通の動きをすることで生活し易くしていたり、器官を共有融合することでハイレベルの動きも実現しているのだ。しかも、それにとどまらず、個体が役割毎に変態していることも多い。この状態で、各個体がママでクローン増殖する姿とは、多細胞高次構造のハシリそのものではないか。

こうなると厄介なのは、どの分岐から「動物」とみなすべきかよくわからなくなってくること。もともと概念の定義が曖昧模糊としており、非動物との線引き難しいということでもあろう。

そこで、海綿動物より前の世界について、どのような分類になっているのか眺めてみることにした。
おそらく激しい議論が巻き起こっている領域であるから、素人がザックリ描くことには無理があるが、整理してみなければなにもわからない。
色々な見方があるようだが、とりあえず、素人が適当に編纂して分類図を作ってみた。

鞭毛1本系の系図であり、植物等の鞭毛2本系とは出自が違うことになる。(本数が意味ある分類指標と言えるかはなんとも。鞭毛の形態の違いや根元がどうなっているのかはっきりしない訳だし、そもそも今の本数が祖先の本数と同じとも言いきれない。と言っても、それ以外に整理のしようもないだろうが。)

系図を見ると、これだけでもかなりの成程感を覚える。もともとは1本ではなかったのだろうが、集約によって鞭毛活動力が強化されたので突出できたのではなかろうか。1本タイプは様々あっただろうが、餌の取り込みに向くことで成功をおさめたと考えるのが自然である。
出自的には面上棲種と思われ、当初から鞭毛がある運動方向と重力的には下になる接触面という観点での軸が明確化されており、左右相称的体軸に進む可能性を示唆している。

そう考えると、放射相称型とは、底棲移動や底面完全固着といった生活スタイル変更に合わせて、移動方向の軸を転換させたに過ぎないと見ることもできよう。

そういう意味で注目すべきは「襟鞭毛虫」。

多細胞動植物が持つ体躯形成遺伝子群(Hox)は欠落しているそうだが、脊椎動物と同じ、細胞接着・シグナル伝達タンパク質ドメインのコード遺伝子が存在しているらしい。[N King, et al.:"The genome of the choanoflagellate Monosiga brevicollis and the origin of metazoans"Nature 451 2008年]

う〜む。
コリャ、まさしく原始動物。・・・
こうなると、海綿と姉妹関係ありと見なすしかなかろう。もともと、形状からアメーバゾアとして一括りにしている雑多で分類不能な種だらけの仲間とみなされていたに違いない訳で、襟鞭毛虫の系譜に繋がりそうな"細菌を喰いそうな類"をピックアップして親類とみなせばそれなりの系統図ができあがるといったところだろう。

この生物、顕微鏡下生物であり極めて微小であるにもかかわらず、その形状は概ね広口フラスコ的で、いかにも栄養吸収器官の形態を見せているからでもある。しかも、襟状の部分は餌である細菌捕捉(濾し取り)器官だし。
口から出ている繊毛は遊泳時に出してくねらすことで水の粘性を利用して動くのだと思われる。底面だけでなく群体形成にも使う柄を持ったタイプや、外側にカバーをつけている種もある。(以下一部)
  -Codonosigidae
   ○Codosiga・・・コドシガ類…柄付固着性群体
   ○Monosiga・・・モノシガ類…遊泳性単細胞
   ○Desmarella・・・デスマレラ類…一列に繋がる遊泳性群体
   ○Proterospongia・・・プロテロスポンギア類
  -Salpingoecidae
   ○Salpingoeca・・・サルピンゴエカ類
    殻襟髭虫(amphoroideum)
  -Acanthoecidae
   ○Acanthoeca・・・アカンソエカ類


このような生物を、動物の始原的姿と見なせば、素人でも納得のいくシナリオが浮かんでくる。

代謝活動は、単細胞より群体、群体より多細胞の方が効率がよさそうだからそちらに流れたというに過ぎまい。それに巨大化すれば、喰われるリスクも減るだろうし。もっとも、多細胞組織維持のためにはクローン増殖とアポトーシス(細胞死)を始終行う必要があり、必ずしも省エネルギーではなさそうだが。ただ、多細胞はある意味自食可能だから環境激変に備えた貯蓄を行っているともいえ、単細胞に比べると生命力は圧倒的と言えそう。

「襟鞭毛虫」の位置づけについては、マ。そんなものかとなるが、真正後生動物の分岐の基底に平板動物(「繊毛平虫」:類縁種は皆無で孤立。)が来る点については、なかなかに理解が難しいものがある。

本格的な運動性を有するにしても、余りに単純すぎる「動物」だからだ。・・・
直径0.5mm程度で、大きくても2mmの薄い煎餅状だが、基本的に不定形。全身が繊毛で覆われている。この繊毛で底を移動して餌に被さり嚢状に囲んでしまい消化するらしい。但し、環境が悪化すると風船状になることがあり、そうなれば遊泳も可能だろう。そちらを基本形とすれば、通常は潰れた風船形とも言える。
背、腹、両者の間の3層でできており、細胞総数2,000〜3,000個。
背側表面は1本の繊毛を持つ扁平タイプで、腹側表面も1本の繊毛を持つが柱状タイプ。無繊毛タイプは分泌腺とみられている。背と腹の表皮の間は体液で満たされており"間充織細胞"が存在する。つまり厚みは細胞3個分なのである。(神経、筋肉、消化器官、循環器官、生殖器官を示す組織は無い。)
2つに分裂するクローン増殖が知られているが、生殖器官無しにもかかわらず体躯内に孤立した卵細胞を1個作り出す能力がある。♂♀生殖も行っていることになる。
特殊な退化動物と考えるにしても度が過ぎる感は否めない。
そう感じさせるのは、有櫛動物(「櫛水母」)のようにかなり高度に器官が分化している種の近縁となっているせいもあるが。

*** 以下、一知半解的な素人編纂なので、そのおつもりで。 ***
(後生動物/Metazoa辺りの整理は日本語Wikiとは全く違うのでご注意のほど。使用していない用語の対応はこんなところ。
無胚葉性動物=側生動物/Parazoa・・・海綿動物
腔腸動物/Coelenterata=放射相称動物/Radiata=二胚葉動物/Diploblastica・・・有櫛動物+平板動物+刺胞動物
三胚葉性動物/Triploblastica・・・左右相称動物)


┼┼┌─アメーバ状(葉状)仮足[ロボサ]/Lobosa
┌┤アメーバ型運動生物[アメーボゾア]/Amoebozoa
│└─動菌[コノサ]/Conosa…変形菌,等々.

─┤単鞭毛真核生物[ユニコンタ]/Unikonta = Amorphea

┌────────Breviatea
│┌┤┼┼┼┼┼┼テコモナス系/Thecomonadea
││└────────アプソモナス系/Apusomonadida
││↑非単鞭毛…植物系の双鞭毛[バイコンタ/Bikonta]非該当
││
└┤Obazoa
┼┼
┼┼└─後方鞭毛生物[オピストコンタ]/Opisthokonta
┼┼┼┌┘
┼┼┌┘
┌┘
┌┘
┌─菌/Fungi or Mycetes
┌┤(広義"菌")/Holomycota or Nucletmycea
││┼┼┼┌────────ヌクレアリア系/Nucleariida
│└───┤クリスティディスコイデア/Cristidiscoidea
┼┼┼┼└────────フォンティキュラ/Fonticulida

後方鞭毛生物[オピストコンタ]/Opisthokonta

│┌───────Teretosporea
││┼┼┼┼┼┼┼(広義"菌"・広義"動物"の中間体)
││┼┼┼┼┼┼┼or アメービディウム/Amoebidiozoa
││┼┼┼┼┼┼┼┼┼イクチオスポレア/Ichthyosporea
││┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼or 旧:偽粘菌/Mesomycetozoa
││┼┼┼┼┼┼┼┼┼コラロキトリウム/Corallochytrea
││
└┤(広義"動物")完全運動生物[ホロゾア]/Holozoa
┼┼
┼┼│┌──────フィラステレア/Filasterea
┼┼││┼┼┼┼┼┼┼┼ミニステリアMinisteriida
┼┼││┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼・Ministeria marisola
┼┼││┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼・Ministeria vibrans
┼┼││┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼・Capsaspora owczarzaki
┼┼││
┼┼└┤糸状運動生物[フィロゾア]/Filozoa
┼┼┼
┼┼┼│┌─────襟鞭毛虫/Choanozoa or Choanoflagellata
┼┼┼││┼┼┼┼┼┼┼… "Collared" Flagellate
┼┼┼││┼┼┼┼┼┼┼襟鞭毛虫/Choanoflagellatea
┼┼┼││
┼┼┼└┤底離脱型運動生物/Apoikozoa
┼┼┼┼┼┼通称"動物"/Animalia
┼┼┼┼
┼┼┼┼│┌────☻海綿動物/Porifera
┼┼┼┼││
┼┼┼┼└┤(狭義"動物")高次運動生物[メタゾア]/Metazoa
┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼│┌───🔍有櫛動物/Ctenophora
┼┼┼┼┼││┼┼┼┼┼(櫛水母/Comb jelly)
┼┼┼┼┼││
┼┼┼┼┼└┤真正後生動物/Eumetazoa
┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼│┌──📙平板動物/Placozoa…一種のみ
┼┼┼┼┼┼││┼┼┼繊毛平虫/Trichoplax adhaerens
┼┼┼┼┼┼││
┼┼┼┼┼┼└┤ParaHoxozoa
┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼│┌─☻刺胞動物/Cnidaria
┼┼┼┼┼┼┼││┼┼┼[含む] ミクソゾア/Myxozoa
┼┼┼┼┼┼┼││
┼┼┼┼┼┼┼└┤Planulozoa
┼┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼│┌[化石]Proarticulata@…e.g.ヨルギア/Yorgia
┼┼┼┼┼┼┼┼││
┼┼┼┼┼┼┼┼│├珍無腸動物/Xenacoelomorpha
┼┼┼┼┼┼┼┼││┼┼珍渦虫/Xenoturbellida
┼┼┼┼┼┼┼┼││┼┼珍渦虫/Xenoturbellida
┼┼┼┼┼┼┼┼││┼┼無腸/Acoelomorpha
┼┼┼┼┼┼┼┼││┼┼無腸/Acoela
┼┼┼┼┼┼┼┼││┼┼皮中神経/Nemertodermatida
┼┼┼┼┼┼┼┼││
┼┼┼┼┼┼┼┼└┤左右相称/Bilateria
┼┼┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼┼│┌─後口/Deuterostomia
┼┼┼┼┼┼┼┼┼││
┼┼┼┼┼┼┼┼┼└┤Nephrozoa
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼└─前口/Protostomia

  【KEY】 赤字で示した分類"群"の認知状況評価
  ☻: 実感できる。(一般常識的生物が含まれている。)
  🔍: その気になれば見ることができる。
  📙: 多少興味ある人は、写真レベルの知識あり。

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