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魚の話…

 たまたま、綺麗な写真に惹かれて、魚の本(1)を読んでしまった。
 著者は、詩人で、日本語の持つ表現力の豊かさを指し示したとして、歴程賞を受賞された川崎洋氏。残念なことに、2004年10月に亡くなられた。

 考えてみれば、これほど多種多様な魚を、様々な調理方法で食べている民族も珍しいのではないかと思う。
 これは比類なき観光資源だと思う。

 といっても、最近のテレビ番組のプログラムのような、単純な「温泉+料理」観光と一緒にして欲しくない。真心のこもった料理、贅をつくした料理、滅多に手に入らない食材を使った料理、といったウリに魅力が無いといえば嘘だが、いかにも薄っぺらい。

 本当の観光資源とは、人々が育ててきた「文化」である。
 日本における魚を通じた食生活は、季節の様々なイベントに繋がっている、という点がウリなのだと思う。食生活で五感を刺激すると同時に、美や芸術をもちこんだから比類なき魅力があるのだ。

 日本人の食に対する思い入れの凄さは、日常生活を振り返ってみればわかる。
 「いただきます」に始まり、「ごちそうさま」で終わる習慣は今もって続いている。慣れているから気付かないが、これは宗教観というより、食の嬉しさをかみしめようとの真摯な姿勢そのものだろう。

 中華やフレンチこそ料理の王者と言われているが、日本人の食に対するこだわりも負けてはいないと思う。

 1980年代に、豆輸入専業商社の担当者とお会いしたことがあるが、世界中の良質な豆はすべて輸入していると語っていた。驚いたことに、アフリカ奥地産の特殊な豆の要求があったりするので、苦労してどうにか入手するのだという。

 酒にしても、同じようなものだ。様々な銘酒を嗜んでみたい人は、わざわざ飛行機に乗って東京に来るという。
 どの食分野にも、薀蓄を傾けている店が必ずあるし、それを支えることができるバラエティ豊かな食文化が存在している。

 こうした文化の中核を担っている食材が、魚ではないかと思う。その種類たるや凄まじいものがある。
 例えば、○○ダイと名前がつくものだけで、356種あるという。これに、世界中から調達してくる輸入魚が加わる。
 おそらく、こんな国はないだろう。

 しかも、同じ種であっても、日本列島の各地で呼び方が違う。実際、味も微妙に違うようだ。当然ながら、料理方法も土地によって様々である。
 もちろん、それぞれ美味しい。

 こんな素晴らしい文化があるのに、宣伝しないのはまことに残念である。

 ということで、魚について、時々思うまま書いてみることにした。

 どの魚から始めるか迷ったが、あいうえお順の先頭を選んだ。    ・・・2005.3.11

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 --- 参照 ---
(1) 川崎洋「魚の名前」いそっぷ社2004年12月
 

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