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魚の話  2005年9月30日
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いわしの話…

 鰯焼く 妻と云ふ名の 五十年 武田光子

 誰が言い出したのか知らないが、10月4日は鰯の日だそうである。
 鰯にも色々種類があるようだが、メインは、真鰯、片口鰯、潤目鰯の3種類である。

 なんといっても、鮮度がよい中羽真鰯に塩を振って焼いて食すのが真髄だと思う。酢でしめても美味しいが。
 生以外は、脂がのりすぎているから、せいぜいが一夜干しだろう。ご飯に合うので、ずっと庶民の定番品だったが、近年はお店でも余り見かけないようだ。

 かつては、経団連会長だった故土光敏夫氏が目刺を愛し、鰯を餌にしているハマチは食べなかったとの話をよく聞かされたものだが、そんな時代は終わったようだ。
 土光さんと言えば、たしか就職直前か直後だったと思うが、お会いした時に、研究所で世界の先を走れと激励されたことを今でも思い出す。最近は若造にそんな声を掛ける経営トップもいないようだ。寂しい限りである。
 鰯も高級魚の道を邁進しているようで、ハマチより鰯の方が高価になりかねないご時世である。しかもハマチの餌は輸入モノである。
  → 「マイワシの希少化」 (2004年9月15日)
 もっとも、こんな現象は日本だけではないようで、スペインのBiscay湾のanchovy(片口鰯系)も大変なようだ。(1)

 驚いたことに、目刺ご飯がウリの店も大繁盛だ。3ヵ月前に予約が埋まってしまうというから凄い。(2)

 真鰯以外は漁獲量が少ないようだが、それでも、お馴染みの種である。

 刺身に向いていると思われるのが片口鰯。(3)と言っても、真鰯より身に張りがあるからというだけの理由だが。
 とりたてて美味とは言えそうにないし、鰯では一番安価である。
 もともとは煮干用である。と言うより、肥料にされていた魚といったほうが正しいだろう。成魚より、“しらす”あるいは“ちりめんじゃこ”の方が価値がありそうだ。
 もっとも、脂が酸化していない新鮮な煮干は炙っただけで結構旨いのだが。

 しかし、炙りものなら、小振りの堅い干魚が最高である。
 これに向くのが潤目鰯だ。(4)脂が少ないから、乾燥向きであり、旨さが凝縮される訳だ。価格が真鰯の倍になるのも当然だろう。

 つらつら思うに、鰯の美味しさは、焼き加減にあるのではないだろうか。

 炭火の遠火のように、脂を落としながらじっくりと焼ける機器があれば、もっと人気がでるのではないか。
 過熱させず、じっくりと輻射熱と、遠赤外線をあてることが旨さを引き出すのだと思う。中まで熱が通りながら、表面は軽い焦げ目という焼き加減が実現できればよいだけのことである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.ices.dk/aboutus/pressrelease/anchovy%20advice.pdf
(2) http://www.president.co.jp/book/1755-3.html
(3) http://www.shunmaga.jp/zukan/gyokairui/katakuchiiwashi/katakuchiiwashi.htm
(4) http://www.shunmaga.jp/zukan/gyokairui/urumeiwashi/urumeiwashi.htm


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