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魚の話  2006年10月13日
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いかなごの話…

  小女子が 光輝く 佃煮屋    炊きたてご飯好き詠みし

 キビナゴの話を書いたら、そういえばイカナゴがあることを思いだした。
  → 「きびなご 」 (2005年9月29日)

 イカナゴと言えば、兵庫である。そこでは春告魚とされている。冬の産卵から孵った稚魚「新子(しんこ)」が対象で、漁期は極めて短い。それだけに地元の思い入れは強いようである。(1)

 2艘の船で底引き網を曳く漁法が採られており、根こそぎゴソッと獲り、すぐに氷が入っている運搬船に渡す。(2)陸にあげたら、すぐに運ぶ。従って、漁が解禁になると、イカナゴが一気に店頭に並ぶ。鮮度が落ちると商品価値は下がるから、結構気をつかうビジネスのようだ。

 生で売っているのを見たことがあるが、見た印象からいえば、かなり強そうな魚である。小魚は、水からあげるとすぐへたってしまうものだが、イカナゴは平然と動いている。鰯の小魚とは違う。イカナゴなら「弱」を「強」にしてもよいかも知れない。
 「釘煮」と言われる位、煮ると体がヒン曲がるのも、この強さのせいと睨んでいるのだが。

 東京の住民にしてみれば、「釘煮」は兵庫名産品のイメージがあるが、関西ではチョット違うようだ。オカンが自前で炊いた作品を、ここぞとばかり知り合いや、親戚に配り回る習慣があるらしい。
 お蔭で、地方発送便は、プラスチックパックのオマケ付きキャンペーンが登場したり、競争が激化している。もともと、この「釘煮」ブームには仕掛け人がいるという話も聞くし、コープこうべの後押しが効いているようだ。

 そうそう、「いかなごパイ」もある。安直なご当地モノかと思いきや、全国菓子大博覧会会長賞を受賞しているから、結構美味しいのかも知れない。もちろん、本物のイカナゴ入りだという。(3)

 こんなところは、流石関西という感じがする。阪神・淡路大震災にめげず頑張っているのは心強い限りだ。

 尚、瀬戸内海に棲むイカナゴは“3歳で体長は14cm”にしかならず、“寿命は2〜3年”で他とは違うそうである。東北や北海道では相当大きくなるそうだが。
 大きくなると安価になってしまうから、瀬戸内海のイカナゴ君は、自ら命を縮めているのだが。

 本来は北の魚だから、暑いところでは短命になるということかも知れぬが。
 なにせ、夏はお嫌いな魚である。“本州以南のイカナゴは水温が高くなる夏の間,砂に潜って暑さを避ける”(4)そうだ。
 そんな避暑地がいつまでもあるとも思えないから、そのうち消える運命かもしれない。(1)

 そうなると、讃岐特産品「イカナゴ醤油」(5)もいつまで続けられるか。イカナゴを追って瀬戸内海に入ってくる鰆や鯛も、どこか違う場所を探さざるを得なくなるだろう。

 「釘煮」が全国ブランド化したお蔭で、東京でもイカナゴという言葉が知られるようになったが、余り使われてはいない。東京では、今でも小女子(こうなご)である。

 鰯の稚魚、シラス/チリメンに対抗する素干し小魚の代表選手と言えよう。どちらも、大根おろしと一緒に頂くことが多い。カルシウムが豊富な小魚なので、骨粗鬆症対策食として人気があるようだ。
 昔から小女子の佃煮もあるが、江戸前の基本はシラスの佃煮の方である。江戸の老舗は、醤油、粗目、何代にもわたる煮出汁だけで煮る。生姜を加えたりする小女子の佃煮もあるようだが、これは伝統からの逸脱である。ただ、流石に、小女子は近場では獲れないらしく、秋田・青森産を使うそうだ。(6)

 もっとも、最近は嗜好が変わりつつあり、単純な小女子だけのものより、胡桃と小女子の甘口佃煮に人気が集まっているようだ。小女子は骨粗鬆症防止、胡桃は老化防止によいというだけで流行っているだけかもしれぬが。

 人気上昇は嬉しいが、獲りつくしたりして、小魚食文化が消えないことを願うばかりである。

 --- 参照 ---
(1) http://kobe-mari.maxs.jp/akashi/syunsyunsai.htm
(2) http://www5.jf-net.ne.jp/hggyoren/ikanago/ikanagoryou.htm
(3) http://www.sponichi.co.jp/osaka/ser1/gourmet/gourmet040429.html
(4) http://www.fishexp.pref.hokkaido.jp/exp/wakkanai/04sakana/04-03ikanago/04-3ikanago.htm
(5) http://www.pref.kagawa.jp/suisan/html/suisan/kagawanosakana/ikanago/ikanagosyouyu/ikanagosyouyu.htm
(6) http://www.chuo-kanko.or.jp/knowledge/edomae/edomae_05.html


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