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魚の話  2008年10月3日
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あおりいかの話…

  アオリイカ 釣った釣れたで 大議論

    人気のアオリイカ釣りだが、
    熟練者でも外道で終わることも多いらしい。
    お隣の初めて来た人がたまたま釣ったりすると
    あれはたまたま釣れただけと、ご機嫌斜め。
    帰りにウサ晴らしに烏賊刺で一杯ということになる。   


 アオリイカといえば、初夏。もちろん、釣りの話。   → 「いか 」 (2005年8月26日)

 エンペラ(イカの鰭のことだが、耳と呼ぶ人もいる。)が矢鱈大きく、全体がずんぐりした烏賊である。ウエブのどこを見ても、このエンペラが馬具の「障泥」に似ているとの説明ばかり。漢字で「障泥烏賊」と書くから反論の余地はないが、形や色が“似ている”との説明にはどうしても納得がいかない。

 と言うのは、「障泥」とは、馬の鞍下から足を乗せる鐙にかけて、両脇にぶら下げる泥よけカーテンのことだからだ。長方形のくすんだ色の皮製が普通だろう。用途から考え、昔は熊の毛皮だった可能性が高い。ただ、装飾用となると、どうなっているかわからないが。
 一方 アオリイカのエンペラは半円形だ。装飾性など皆無だし、色にしても、沖縄ではシロイカ(シルイチャー)と呼ばれる位で、正反対と言ってよいだろう。
 これで、一体、どこが似ているというのか。
 まあ、現代の、鞍とアオリを一体化させた、丸味を帯びた翼タイプならわかぬでもないが、まさかそれを指した命名ではなかろう。

 唯一考えられるのは、馬が走れば、「障泥」がバタつくという点。それがアオリイカの泳ぎそっくりなのかも。
 “此上人、いのち終らんとしける時、まづ碁盤をとりよせてひとり碁をうち、次に障泥をこふて、これをかづきて小蝶と云舞のまねをす。”[鴨長明 發心集(1)]という話もある位だから、その動きは気になるものだったものかも。

 だが、水族館で眺めていても、そんな感覚は湧かない。まあ、水槽内のアオリイカ君はダラダラ生活していてお太りのようだから、競泳をする気はさらさらなさそうで、海で見ないとよくわからないとは思うが。
 素人考えではあるが、大きなエンペラをパタパタさせ、泳ぐのはなかなか大変な感じがする。

 まあ、こんなことに関心を覚えるのは、夏の盛りの、涼しくなった夕方に、堤防で釣りをしている人の多くがアオリイカを狙っているから。
 魚屋さんで買えば結構なお値段だし、なんとなく高級感がありそうな名前だから、勇んで釣りに出かけるようだ。もっとも、高級イメージだけで熱中していると見られるのは沽券にかかわるのか、イカのなかでは、アミノ酸含有量がダントツだから狙うのだとの理屈を述べる人も少なくない。
 ただ、釣り人の話にはよくあることだが、出典を聞いても、その答えはかえってこない。

 しかし、この話、本当かも知れない。
 鮨屋で他のイカと食べ比べると、確かに圧倒的に美味しいからだ。ボデッとした体つきなので、いかにも、水っぽい厚い身に見えるから、味が薄そうと考えてしまうが、実際は、歯ごたえが結構あり、イカ本来の甘さを感じる。烏賊刺なら最高というのは当たっていそうだ。それに、加熱してしまえば、たいした違いはなくなろう。
 ただ、刺身と言っても、イカソーメンにする位なら、他のイカの方が合うと思う。
 釣り人の意見は違う可能性はあるが。

 --- 参照 ---
(1) 鴨長明: 「發心集」 序・第一 多武峰増賀上人遁世往生の事
  http://www2s.biglobe.ne.jp/~Taiju/1216_hosshinshu_1.htm
(アメリカアオリイカの写真) [Wikipedia] photo by Jan Derk 2005 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Caribbean_reef_squid.jpg


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