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魚の話  2009年4月10日
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たなごの話…


  春たなご 一匹毎の 暖かさ
 先日、海タナゴの煮付けを食べた。水っぽい魚で小骨が多いから人気はないが、獲りたてが売っていたため食卓に登場した訳。実に美味しかった。
  → 「うみたなご」 (2006年7月28日)

 言うまでもないが、売り場での表示はタナゴ。“海”は自明ということ。
 よく考えれば、タナゴは淡水魚である。こちらは、“身が薄い割に内臓が大きく腐りやすいことと、煮ても苦味が強いこと”(1)が欠点。
 従って、昔から獲って食べようと考える人は少なかったようだが、暇人(もっぱら大名や旗本。従って、粋人と呼んだ。)はタナゴ釣りに精を出したようである。今は、気分転換に最適ということで、多忙な人ほど行くようだが。
 潮来町には専門釣具店もある位で盛んである。(2)

 ただ、一番熱心なのは淡水魚飼育マニアのようだ。“美しい容姿や、二枚貝に産卵するという生態のおもしろさから人気”(3)らしい。(多分、婚姻色を見たいのだと思う。)

 そんなタナゴも種によっては、絶滅が危惧されている。保護活動(4)も盛んだが、いかんせん棲める場所が限られているから、厄介だ。
 下流の流れがなく水草が生い茂る“わんど”辺りがお好みの棲家だが、今時そんな場所には滅多にお目にかかれない。せいぜいが大型ビオトープ。それで、どうにか絶滅を逃れられるといった状態のようだ。
 ちなみに、淀川の人工“わんど”(5)は、イタセンバラ(ビワタナゴ)を絶滅から救うことが主要課題だったようである。

 しかも、この魚、卵を貝に産み付ける習性がある。貝が消えれば即絶滅ということになる。その上、貝の幼生は魚の鰓で成長するというのだから、つらい。
 ただ、溜池には、昔、獲られて放たれたタナゴ類が生き延びていることが多いらしい。(6)絶滅を逃れるには、ここを“Refgea”として保つしかないようだ。
 八尾市のニッポンバラタナゴに至っては、赤坂御所の大土橋池が“Refgea”。すでに、500匹を優に超えるそうだから効果抜群。(7)

 だが、閉鎖的な場所で、生物多様性を維持するのは簡単ではなかろう。
 微妙なバランスで定常状態が保たれているのが普通で、安定している訳ではないからだ。魚が増えすぎると、貝は卵が多すぎて窒息死してしまい、両者共倒れになったりするというのだから。
 生態系の理解ができている訳ではないから、視野の狭い保護活動を行うと、この手の副作用がおきかねないということでもあろう。よくある話だ。

 渡り鳥渡来運動にしても、そこだけ見れば、昔の自然をとりもどしつつあるように見えるが、糞害が発生し貝は棲めなくなるだろうから、長期的には悲惨な結果を招く可能性大だ。この程度なら、素人でも予想できるが、それでも止めるとなれば議論百出というのが社会の実情。
 しかし、言うまでもないが、これは本質的な問題からはほど遠いところでの議論。沢山の小魚を棲ませる力が無くなった状況を回復する方策を立てない限り、たいした意味はないのは自明。
 まあ、さまざまな取り組みで、全体像に関する知識が少しづつ増えていき、どうすべきか次第にわかっていくのだろうが、時間の方はそれを待ってはくれない。

 --- 参照 ---
(1) 「信州の魚たち タナゴ」長野県水産試験場 [2006年11月20日]
  http://www.pref.nagano.jp/xnousei/suishi/sakana/s_tanago.htm
(2) k.watanabe: 「たなご屋」 [紹介頁 2004年] http://homepage3.nifty.com/kazuow/tanagy1.html
(3) 月刊アクアライフ編集部編:「タナゴ大全―生態・釣り・飼育・繁殖のすべてがわかる」 マリン企画 [2008年12月]
(4) 「第4回 全国タナゴサミットin淀川」要旨集 [2009年1月10日]
  http://www.geocities.jp/tanagosummit/4thsummitpg.pdf
(5) 「淀川のわんど」 淀川河川事務所(国交省)
  http://www.yodogawa.kkr.mlit.go.jp/know/nature/wando/index.html
(6) 高橋清孝: 「田園の魚をとりもどせ!」 恒星社厚生閣 [2009年1月]
(7) 「【皇室豆知識】赤坂御用地の「大土橋池」って? 」 産経新聞 [2008.3.27]
  http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080327/imp0803271741001-n1.htm
(ゼニタナゴの写真) [Wikipedia] Photo by Tanago http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%
  83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:%E3%82%BC%E3%83%8B%E3%82%BF%E3%83%8A%E3%82%B4.JPG



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