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魚の話  2017年8月11日

きぬばり の話


  絹張の 灯り薄っすら 茶が旨し
     茶殻だらけになるが。


茶殻/白帶高鰭鰕虎/Whitegirdled gobyはすでに取り上げた。
  → 「ちゃがら の話」[2007年9月7日]

ハゼの仲間であるが底魚ではなく、海藻と一緒になって群れで遊泳するタイプ。その情景を描いた命名であろう。このセンス流石。ようやく、今、気付いたのだが。

ここでは、その相棒的に棲息している絹張/蛇首高鰭鰕虎/Serpentine gobyをとりあげよう。

両者共に、日本浅海で遊泳する鯊。(中国語ではハゼではないのでご注意のほど。)海藻だらけだった豊かな日本の海を象徴する魚と言えそう。
名前が全く異なることでおわかりのように、模様と色が全く違う種だが、その形、大きさ、生態はウリということらしい。そうなると、雑種も存在しているかも、と思ったり。

絹張は、体色は薄めの黄褐色が多いようだが、その特徴は黒色の横帯。どうしても主観も入るが、なかなかの美しさ。おそらく、絹地を黒字の桟に張った行燈に見立てたのであろう。
不思議なのは、太平洋側と日本海側でこの本数が6本と7本と違っている点。単なる変種といえども、明瞭な分化を果たしているのである。これはどういうことか、気になるではないか。

そんな、地域分化の実像を示してくれた英語論文が、明仁天皇,他;「ハゼ科魚類キヌバリとチャガラの核DNAとミトコンドリアDNAを用いた種分化の解析」Gene, 2016年。大まかな内容[→]を読んだにすぎぬが、面白い結果である。著者達からすれば、矢張り予想通りということだろうが。

原文を当たっていないので、はっきりしないが、DNA鑑定の結果、チャガラの日本海側勢力から、キヌバリが生まれ、それがさらに交雑分化したという流れだろうか。キヌバリの餌であるゴカイ[沙蚕]だが、素人目には単一種でも、少なくとも3つの勢力が存在している。キヌバリとチャガラは餌獲得の棲み分け分化だったりして。

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