表紙 目次 | 魚の話 2017年10月15日 だてはぜ の話☰ 伊達縞の マリンルックで 監視役ストライプはラガーシャツのイメージがあるが。 侠気があり、一目を引くような派手な身なりしている様を"伊達"と呼ぶ。辞書的には、洒落物とか、御粧し男となるようだが、どういう場面で使われるかでそのニュアンスは大きく変わると思われる。 17世紀、島国のイングランドで流行った"Popinjay"(オウム)のようなファッションとの解説もあるらしい。 ダテハゼには、明瞭な横帯模様(白地に橙色5本が基本形。変種があるのか調べていない。)があり、そのような気分で命名されたということか。 その代表は、 伊達鯊 ただ、英語圏では、帯がより目立つ方を選定するようだが。 日輪伊達鯊/Gold-barred shrimpgoby 学名に馴染んでいる人達はShrimpgobyとは呼ばず、簡単にRandall's goby。一般の人にはOrange stripe prawn-gobyの方が通じるらしい。 同じように縞を持つのは、右の写真のネジリンボウ。 捻じ錀棒→[2008.4.11] こちらは、帯状の縞ではなく螺旋状模様。御菓子のネジリンボウみたいな柄とされた訳だ。 マ、ダンディな衣装というよりは、走って来る車に注意を喚起するためのデザインに近いのでは。(道路上での作業服) 目立つ意匠は、たいていは危険表示であって、"有毒"の証のようなもの。しかし、そうでないことが知られていると、見つかり易くなるからリスクが著しく増す筈だ。そうだとすると、洒落た衣装のどこが嬉しいのだろうか。 もっとも、裏を返せば、すぐにシェルターに跳び込めることがわかっているなら、目ざとく発見した者が遠方でいち早く反応するから、リスクの早期発見率が高まると言えるのかも。どうとでも解釈できそうで、その辺りは当人に訊かねばわかるまい。 この両者は、分類上は同類とは言い難い位置付けのようだが、砂底に造られたシェルター入口で休息している時間が長いという生活スタイルはだけは極めてよく似ている。 こうした生活をお勧めしようとの動きが高まっているせいもあり、水族館には必ず飼われるタイプと見てよいだろう。言われれてみれば、誰でも「ア〜、アイツか!」と思いだすポピュラーな種なのである。ただ、名称は覚えにくいのか、余り知られていないようだ。ハゼの写真を撮るために潜りに行く人達は大勢いるようだが、他の種の方に関心がありすぎて、語られていないこともありそうだが。 これらのハゼの生活文化だが、英語名を見れば、一発で想像がつく。ShrimpgobyあるいはPrawn-gobyと呼ばれているからだ。(どちらの語彙も、ハイフン、ブランク、一文字のどれが標準なのかはわからない。見易いものを選んだ。両者ともにエビだが、大きさの違いと見なすしかないが、線引き基準がある訳ではないようだから、英語族が見ると、なんとなく違う生物感が漂うらしい。・・・小蝦,車海老。)まさか、エビ体型のハゼがいる訳もない訳で。 砂底にシェルター穴を掘ってくれる海老/蝦と共生する種ということ。 曰く、"A watchman goby & housekeeper"関係。・・・ "テッポウエビ類が珊瑚礁の砂地に掘った穴にダテハゼ類が棲み込むのは、最もよく知られた相利共生の例の1つである。ハゼはエビに巣穴を提供してもらう。一方ハゼが巣穴の入り口付近で滞在することで、エビは安全に巣穴外に出られ、こうして相利共生が成り立っていると長い間広く信じられてきた。" 実は、関係はそれだけではないらしい。 餌の少ない珊瑚礁の砂地では、ダテハゼが巣穴外では糞をしないという野外観察を端緒とした研究結果から、以下の行動が示唆されたのである。 ダテハゼは糞をテッポウエビに与えている。 エビはハゼの糞を貴重な餌としている。 [山内宏子,他(大阪市立大学理学研究科):P056 「エビ-ハゼ共生関係」の見直し: ハゼの役目は見張りだけではなかった @日本動物行動学会第34回大会 2015年] ただ、「エビ-ハゼ共生関係」は鯊の仲間では結構広く行われているようで、帯縞のこの2種だけに限られる訳ではない。そこらは、別途。 広義のハゼ全体に入れ込むと、こんな感じになる。(素人作成なので、間違いが多いことを前提に眺めて頂きたく。)・・・ ┌[Rhyacichthyidae]・・・古代的様相 ツバサハゼ類 ├[Odontobutidae] ドンコ類 ├[Eleotridae] カワアナゴ類 │ │↑無吸盤(左右胸鰭分離型)の淡水棲息系 ┤ ├[Gobiidae]【ハゼの主流】 │ 《Amblyopinae》・・・藁素坊、等が所属 │ 《Gobiinae》・・・鬚鯊、等が所属 │ ○Stonogobiops・・・ネジリンボウ類 │ -/帶連膜鰕虎魚/Dracula shrimpgoby(dracula) │ -/-/Larson's shrimpgoby(larsonae) │ 鰭長捻じ錀棒/絲鰭連膜鰕虎魚/ │ Filament-finned prawn-goby(nematodes) │ 狐目捻じ錀棒/五帶連膜鰕虎魚/ │ Stonogobiops (pentafasciata) │ 捻じ錀棒/黄吻連膜鰕虎魚/ │ Yellownose prawn-goby(xanthorhinica)→[2008.4.11]◆ │ 夜叉鯊/-/Orange-striped shrimpgoby(yasha)・・・縦筋である。 │ ○Amblyeleotris・・・ダテハゼ類 │ -/紅帶鈍塘鱧/Pink-bar prawn-goby(aurora) │ -/網鰭鈍塘鱧/Arc-fin shrimpgoby(arcupinna) │ 鉢巻伊達鯊/斜帶鈍塘鱧/Diagonal shrimpgoby(diagonalis) │ -/-/Red-banded shrimpgoby(fasciatus) │ 入道伊達鯊/福氏鈍塘鱧 or 巨鈍鯊/Giant prawn-goby(fontanesii) │ 山吹鯊/點紋鈍塘鱧/Spotted prawn-goby(guttata)・・・模様が違う。 │ -/裸頭鈍塘鱧/Masked shrimpgoby(gymnocephala) │ 伊達鯊/日本鈍塘鱧/-(japonica)◆ │ -/-/Metalic shrimpgoby(latifasuciata) │ 増井伊達鯊/琉球鈍塘鱧/Masui's shrimpgoby(masuii) │ 頭黒伊達鯊/K頭鈍塘鱧/Black-head shrimpgoby(melanocephala) │ 森下伊達鯊/莫氏鈍塘鱧/-(morishitai) │ 南伊達鯊/小笠原鈍塘鱧/Red-spotted shrimpgoby(ogasawarensis) │ 段だら伊達鯊/圓眶鈍塘鱧/Broad-banded shrimpgoby(periophthalma) │ 日輪伊達鯊/倫氏鈍塘鱧/Gold-barred shrimp-goby(randalli) │ -/-/Redmargin shrimpgoby(rubrimarginatus) │ 姫伊達鯊/施氏鈍塘鱧/Steinitz' prawn-goby(steinitzi) │ 首赤鯊/紅紋鈍塘鱧/Gorgeous prawn-goby(wheeleri) │ ヤノ伊達鯊/亞諾鈍塘鱧/Flag-tail shrimpgoby(yanoi) │ 《Gobionellinae》・・・真鯊、等が所属 │ 《Oxudercinae》・・・跳鯊、等が所属 │ 《Sicydiinae》・・・坊主鯊、等が所属 │ │↓擬似ハゼ ├[Schindleriidae]幼魚体型類 │ │↓以下略 (分類参照) JODC(日本海洋データセンター)GODAC/JAMSTEC (参考) Yasunobu Yanagisawa:「Social Behaviour and Mating System of the Gobiid Fish Amblyeleotris japonica/ダテハゼの社会行動と配偶形態」魚類学雑誌 28 1982年 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |