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魚の話  2017年11月15日

あかはぜ の話

尸匕  底泥と 漁船を繋ぐ 強き網
 伊勢では春泥での子持ち漁が御祭りだったらしい。

小生が考える、泥鯊の代表について。

食用ハゼはもっぱら真鯊。それに匹敵する大きさの外道とは味的に違いすぎるからだ。
と言うか、真鯊以外は余りに泥鯊的なのである。この手の魚に泥を吐かせたところでほとんど意味が無い。なんらかの違和感を与える物質が入っているのだから、食べるべきでは無かろう。

・・・と書こうとしていたのだが、付け加えておくべきことに気付いて稿を改めた。

江戸期でいえば、ハゼ釣りとは真鯊を指す。間違いない。
江戸前天麩羅タネ獲得の遊びでもあった。
しかし、食という観点では、現代の様相はかなり違ってきている。お店に登場するハゼは必ずしも真鯊ではないからだ。
マ、海の状況が変わっているから致し方ない訳である。・・・
東京湾の漁獲統計では、1960年代は10万t台。1980年代になると4万tを切り、2000年には2万t程度にまで落ち込んだのである。こんな流れになってしまえば、伝統の江戸の魚がそうそう調達できるとは思えまい。もちろん、これは東京湾に限らないと思われる。

従って、真鯊の魚影が薄くなっている状態で、釣りによる食材供給など、ほとんど夢物語に近かろう。
しかし、網で獲る漁なら別である。無理矢理獲ることができるからだ。いつまでそんなことを続けられるかは別として。
その場合、対象となるのは真鯊ではなく、多少赤みがかっており、十分な大きがある鯊。・・・
  赤鯊

漁獲後ただちに包丁を入れられて開きの形態で出荷されてくる。もちろん、天麩羅用。
今や、真鯊と双璧。
冒頭に述べたように、他は利用されないのである。

ご想像がつくと思うが、アカハゼ漁をわざわざ行うほどの市場性がある訳ではないから、他の底引き漁で一緒にかかってくるので商品にされているだけ。昔はえらく沢山獲れていたと言われているが、地味な魚なので、商品性に気付かなかったのであろう。

その漁だが、内湾の深度にして10m程度のドロドロ海底を対象としている。そう言えば、ご想像がつくと思うが、狙いはシャコ。
昔は、両者ともどもウヨウヨの世界だったが、今はそうはいかぬ。シャコ価格の傾向を見れば一目瞭然。

つまり、赤鯊こそが、泥鯊の代表たるべき魚なのである。(食しても泥臭さは感じさせない。)

このような視界不良環境で生態を調べるのは難しいから、どのような生活をしているかについての情報は乏しかろう。
しかし、それとなくわかっていることもある。

ハゼとテッポウエビの共生話は有名だが、赤鯊の場合はそれは不成立。東京湾ではもっぱら餌にしているのだ。
[「内湾調査平成24年1月 底引き網で混獲されたアカハゼ」東京都島しょ農林水産総合センター]

ついでながら、真鯊がとれる場所として、東京湾並とも言われていた伊勢湾では、春季に産卵魚を獲る漁業が行われていたようである。
[鈴木清,他:「伊勢湾における産卵期のコモチジャコ」魚類学雑誌26,1979年]
  子持雑子

子持鮎をイメージさせる名前だが、赤鯊の類である。
もちろん、東京湾でもとれるが、穴子の餌とみなされているようでほとんど関心が払われていない。

と言うことで、真鯊のお隣に入れ込んでおいた。
こんな感じになる。(素人作成なので、間違いが多いことを前提に眺めて頂きたく。)・・・

[Rhyacichthyidae]・・・古代的様相 ツバサハゼ類
[Odontobutidae] ドンコ類
[Eleotridae] カワアナゴ類

↑無吸盤(左右胸鰭分離型)の淡水棲息系

[Gobiidae]【ハゼの主流】
《Amblyopinae》・・・藁素坊、等が所属
《Gobiinae》・・・鬚鯊、等が所属
《Gobionellinae》・・・真鯊、等が所属
│   - 真泥鯊 -
│  ○Amblychaeturichthys・・・アカハゼ類
│   赤鯊/六絲鈍尾鰕虎魚/Oinkgray goby(hexanema)
│   子持雑子/斑鰭鈍尾鰕虎魚/Spottysail goby(sciistius)
│   - 汽水域泥鯊 -
│  ○Acanthogobius・・・マハゼ類
│   真鯊/黄鰭刺鰕虎魚/Yellowfin goby(flavimanus)→[2006.2.17]
│   南足白鯊(insularis)
│   足白鯊/乳色刺鰕虎魚(lactipes)
│   鯊口/長身鯊/Jevelin goby(hasta)@有明海&八代海
│   (elongatus)
│   -/棕刺鰕虎魚/(luridus)
│  ○Chaenogobius・・・アゴハゼ類
│   顎鯊/Forktongue goby(annularis)
│   泥目/Gluttonous goby(gulosus)→[2017.11.10]
│  ○Tridentiger・・・チチブ類
│   知々武/暗縞鰕虎魚/Dusky tripletooth goby(obscurus)
│   沼知々武/短棘縞鰕虎魚/Japanese trident goby(brevispinis)
│   ナガノゴリ/黄斑縞鰕虎魚/(kuroiwae)
│    (縞鯊)/紋縞鰕虎魚/Striped tripletooth goby(trigonocephalus)
│   霜降縞鯊/雙帶縞鰕虎魚(bifasciatus)
│   赤帯縞鯊(trigonocephalus)
│   鍾馗鯊/髭縞鰕虎魚/(barbatus)
│   白知々武/裸項縞鰕虎/
《Oxudercinae》・・・跳鯊、等が所属
《Sicydiinae》・・・坊主鯊、等が所属

↓擬似ハゼ
[Schindleriidae]幼魚体型類
[Ptereleotridae]ダーツ体型類
[Microdesmidae]蠕虫[wormfish]体型類
[Kraemeriidaechinn]チンアナゴ的体質類
[Xenisthmidaeリグラー[wriggler]的体質類
(分類参照) JODC(日本海洋データセンター)GODAC/JAMSTEC

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