表紙 目次 | 海鼠の話 2017年9月18日 なまこの話[種類]…海鼠の話をしたのは10年以上前。[→2006年7月14日]"こ"という一語命名であり、倭人が愛着を感じていた生物であるのは間違いない。是非とも取り上げておきたかったということ。 当然ながら、もっぱら食の話。 それだけでは寂しい限りなので、生物としてどんな種類があるのか見ておきたくなった。 先ず、食用種だが、生食用は真海鼠と金華山特産種(金海鼠)とされる。もっとも、生食は日本だけの可能性が高いが。 乾海鼠は、本来的には「光参/キンコ」と名称を変えるべきらしい。生物種として中国市場で重視されているのは梅花海鼠や黒海鼠のようだ。言うまでもないが、日本産だと高級品になる。 非食用というか、試そうという人が未だあらわれていないだけかも知れぬが、大きいものは、体長4.5m 直径10cmになったりする。それを考えると、小さな体で海の底でゴロゴロしているだけで、どうにか生き延びてきた種というイメージは間違っている可能性があろう。 ヒト以外の天敵は限定されており、繁栄している一族と見るべきかも。 さて、分類だが、皮膚中に微細な無数の小骨片があり、その形状(櫓形、錨形、車輪形)でグループが形成されている。 (分類は末尾記載) その違いが何を意味しているかは、素人にとっては、はなはだわかりにくいが、骨はそうそう大きく変化することもなかろうから、係累を示唆する形質であるのは間違いなさそう。鯊における耳石拝見と同じようなものなのだろう。 その特徴をピックアップすると、こんな具合。・・・ 海水中棲息のみ。 深海棲息種が多く、巨大コロニーを形成していたりする。 北方種は、温暖状況に晒されると夏眠するようだ。 エネルギー消費が増えると危険なのだろう。 砂中の有機物を餌とする底棲生活が基本。 遊泳タイプがいない訳ではない。 口〜肛門に至る腸的腔間が生命線。 これを円筒で防衛。 前後があるが、頭や尾は無い。 …口の周囲には、口腔から出てくる管足以外の器官は無い。 口は裂けており、肛門には歯。 …口に取り込み菅足(手)。尻から呼吸用取水。 円筒内断面は五放射相称形。 …自切、再生可能。 円筒状体躯を外皮的内骨が支える。 構造材は外殻でなく、肉質的円筒そのもの。 骨は極めて微小で、関節的集合体になっている。 …微小骨片(酸で溶解する炭酸カルシウム)+コラーゲン 柔軟性と硬直性の発現能力あり。 超低速だが海底移動可能。 危険域・餌取得完了域からの脱出目的がメインか。 …感覚器官が無いから雌雄遭遇には役立つまい。 無数の菅足先端が海底に吸着することで動く。 視覚・聴覚・臭覚といった器官は特化していない。 神経はローカルに散在。(おそらく円筒断面配置) 感覚器官の情報を統括する脳を持たない。 水管系があり、様々な機能を発揮している。 足としての利用だけではない。 循環器(血管系)らしきものは見えない。 魚毒成分含有。 見慣れている脊椎動物と比較すると、ボディプランが全く異なり、全く無縁な生物と見なしがちだが、分岐分類では、同一の祖先とみなされている。 特に目を引くのは、動物として最重要機能と思われる前進向きボデイプランの大原則である"左右相称"ではない点。円筒であり、前後と上下があり、見かけは左右対称形だが、肉体は五放射相称形。つまり、固着を旨とする植物型動物ということになる。できる限り動かない生活を送るという方針を採用した"動"物なのである。 五放射相称形ということでは、海胆[→"海胆の分類"@「ばふんうに」]と同じであり、その発展形ということになる。 このことは、海鼠は原始的という訳ではなく、"最高に"進化した形と考えるべきと思われる。 →「進化と分岐の考え方」[2017.9.17] │↓餌口-肛門(腸)代謝最優先構造登場(内骨格) │ │┼→消費エネルギー抑制(筋肉僅少化) ├─┐ │┼├棘皮(放射相称)動物 │┼│├───× │┼││↓固着棲 │┼│├───海百合 │┼││↓底移動棲 │┼│├───海星 │┼││↓逃亡移動能力増強 │┼│├───蜘蛛海星 │┼││↓防衛棘装着 │┼│├───海胆 │┼││↓砂潜棲(防衛棘喪失) │┼│└───海鼠 │┼│ │┼└口盲管[半索](左右相称)動物 │┼┼│↓棲管固着群体棲 │┼┼├───総担[フサカツギ]/翼鰓 │┼┼│↓砂泥中移動棲 │┼┼└───擬宝珠虫/腸鰓…ミミズ形体躯 │ │↓消費エネルギー拡大(センサー+筋肉+制御系) │ 【神経管出現】 ├頭索(左右相称)動物(蛞蝓魚) ├尾索(左右相称)動物(海鞘) │ │↓視覚情報処理器官[脳]による運動制御システム登場 │ 【脊椎出現】 --- ナマコ Holothuroidea ---★☆:食用主流(温度帯) 《無足/Apodida》 - Synaptidae - ○Euapta・・・トゲオオイカリナマコ 棘大錨海鼠(godeffroyi) ○Labidoplax ○Leptosynapta・・・ホソイカリナマコ 細錨海鼠(inhaerens) ○Oestergrenia・・・ウチワイカリナマコ 団扇錨海鼠(variabilis) ○Opheodesoma 紅大錨海鼠(-)…体長4.5m 直径10cm ○Patinapta・・・ヒモイカリナマコ 紐錨海鼠(ooplax)…@干潟泥中棲 体長10数cm 径5mm ○Polyplectana ○Protankyra・・・トゲイカリナマコ 棘錨海鼠(bidentata) 太棘錨海鼠(autopista) ○Synapta・・・オオイカリナマコ 大錨海鼠(maculata)…@珊瑚礁 体長3m (hispida) ○Synaptula - Chiridotidae - ○Chiridota・・・クルマナマコ 一列車海鼠(uniserialis) 車海鼠(-) 南車海鼠(-) ○Neotoxodora カッコ海鼠(pacifica) ○Polycheira・・・ムラサキクルマナマコ 紫車海鼠(fusca) ○Scoliodotella・・・ウチダカギナマコ 内田鉤海鼠(lindbergi) ○Taeniogyrus・・・クルマカギナマコ 車鉤海鼠(cidaridis) ○Trochodota・・・イボカギナマコ 疣鉤海鼠(japonica) - Myriotrochidaeキクモンナマコ - ○Myriotrochus・・・キクモンナマコ 菊紋海鼠(-) 箕作菊紋海鼠(mitsukurii) リンキ菊紋海鼠(rinkii) ○Prototrochus 《隠足/Molpadida》 - Caudinidae - ○Acaudina・・・イモナマコモドキ 芋海鼠擬(molpadioides) ○Caudina・・・カウディナ ○Hedingia・・・ヘディングイモナマコ ○Paracaudina・・・シロナマコ 白海鼠(chilensis) - Eupyrgidae - - Gephyrothuriidae - ○Hadalothuria - Molpadiidae - ○Molpadia・・・イモナマコ コモン芋海鼠(oretzii) 尻太芋海鼠(musculus) 《楯手/Aspidochirotida》 - Holothuriidae - ○Holothuria 黒海鼠(atra)★ アカミシキリ(edulis) エクレア海鼠(nigralutea) チビ海鼠(difficilis) 磯海鼠(pardalis) 黒星赤海鼠(cinerascens) 鉄色海鼠(moebii) 琉球藤海鼠(hilla) 南藤海鼠(arenicola) イサミ海鼠(impatiens) 藤海鼠(decorata) 虎斑海鼠(pervicax) 偽虎斑海鼠(fuscocinerea) 偽黒海鼠(leucospilpta) 土竜海鼠(-) 羽地海鼠(scabra)★ 石海鼠(nobilis) ○Actinopyga 栗色海鼠(mauritiana) 棘栗色海鼠(echinites)★ 大栗色海鼠(-) ○Personothuria 黒襟海鼠(graeffei) ○Bohadschia 蛇の目海鼠(argus) 偽蛇の目海鼠(-) 二筋海鼠(bivittata)…珊瑚礁浅砂地 チズ海鼠(vitiensis) - Stichopodidae - ○Stichopus 四角海鼠/四方参/Black knobby(chloronotus)★ 鬼疣海鼠(horrens) 鞭疣海鼠(pseudhorrens) 赤鬼海鼠(ohshimae) 横筋大海鼠(hermanni) 玉海鼠(variegatus)★ ○Thelenota 梅花海鼠(ananas)★ 艶やか梅花海鼠(anax) ○Parastichopus 沖海鼠(nigripunctatus) (californicus)☆ ○Apostichopus 真海鼠/Japanese "common" sea cucumber(japonicus)☆ - Synallactidae - ○Allopatides ○Bathyplotes・・・ソコナマコ 桃色底海鼠(goldenhindi) 胡麻斑底海鼠(goldenhindi) ○Molpadiodemas・・・ワラジナマコ 大草鞋海鼠(involutus) ○Paelopatides 毎靴型海鼠(confundens) ○Paroriza ○Pseudostichopus・・・ハダカナマコ ○Synallactes・・・ミツマタナマコ 三又海鼠(chuni) 石川三又海鼠(ishikawai) 野沢三又海鼠(nozawai) 相模三又海鼠(sagamiensis) ○Batyplotes 胡麻斑底海鼠(moseleyi) - Mesothuriidae - ○Mesothuria・・・クマサカナマコ 熊坂海鼠(parva) ホクテン熊坂海鼠(hokutenica) 《板足/Elasipodida》…深海棲 - Deimatidae - ○Deima・・・オニナマコ 鬼海鼠(validum) ○Oneirophanta・・・ゲジナマコ ゲジ海鼠(mutabilis) ○Orphnurgus・・・ムカデナマコ 百足海鼠(glaber) - Laetomogonidae - ○Laetomogone・・・カンテンナマコ 寒天海鼠(violacea) 飯島寒天海鼠(ijimai) 姫寒天海鼠(maculata) ○Pannychia・・・ハゲナマコ 禿海鼠 or 紫禿海鼠(mosely) - Elpidiidae - ○Elpidia・・・クマナマコ 熊海鼠(kurilensis) ○Scotoplanes・・・センジュナマコ 千手海鼠(globosa) ○Peniagone・・・ウシナマコ 牛海鼠(japonica) キャラ牛海鼠(azorica) ウカレ牛海鼠(dubia) オケサ海鼠(leander) ○Achlyonice・・・ホタテナマコ 帆立海鼠(monactinica) ○Ellipinion・・・ハナガサナマコ 花笠海鼠(kumai) - Pelagothuriidae - ○Enypniastes・・・ユメナマコ 夢海鼠(eximia)…深海海底の直上で浮遊 ○Pelagothuria・・・クラゲナマコ 海月海鼠(natatrix) - Psychropotidae - ○Benthodytes・・・ワタゾコナマコ 普通綿底海鼠(anguinolenta) ○Psychropotes・・・エボシナマコ 烏帽子海鼠(longicauda) 二股烏帽子海鼠(belyaevi) ヒラタ海鼠(depressa) 鍍金海鼠(verrucosa) 《指手/Dactylochirotida》…深海棲 - Rhopalodinidae - ○フラスコナマコ - Vaneyellidae - ○Mitsukuriella - Ypsilothuriidae - ○Echinocucumis ○Ypsilothuria・・・イガクリキンコ 毬栗金海鼠(bitentaculata) 《樹手/Dendrochirotida》…北方棲 - Cucumellidae - - Heterothyonidae - - Cucumariidae - ○Abyssocucumis ○Actinocucumis ○Amphicyclus・・・オキナグミモドキ 翁胡頽子[グミ]擬(japonicus) ○Aslia ○Cercodemas ○Colochirus・・・コロキルス ○Cucumaria 光参[キンコ] 黒胡頽子[グミ](vegae) ○Cucumella ○Ekmania ○Mensamaria ○Neocucumis・・・ネオククミス ○Ocnus・・・オクヌス ○Paracucumaria・・・パラククマリア ○Pentacta ○Plesiocolochirus 五角光参[キンコ](armatus) 石綿海鼠(inornatus) ○Pseudocnus・・・グミ 胡頽子[グミ](echinatus) ○Pseudocolochirus ○Stereoderma・・・ステレオデルマ ○Thyonidium・・・ドロナマコ 泥海鼠(diomedeae) - Psolidae - ○Psolidium ○Psolus・・・マツカサキンコ 松毬光参[キンコ](japonicus) 爺背光参[キンコ](squamatus) 海鞘型爺背光参[キンコ](ascidiiformis) - Phyllophoridae - ○Allothyone・・・チビフクロナマコ チビ黒袋海鼠(multipes) ○Havelockia ○Hemithyone ○Lipotrapeza・・・リポトラペザ ○Neothyonidium・・・ネオチオニディウム 大鼻海鼠(magnum) ○Pentadactyla・・・モグラナマコ 土竜海鼠(japonica) ○Pentamera・・・ペンタメラ ○Phyllothuria・・・グミモドキ 胡頽子[グミ]擬(hypsipyrga) ○Phyrella・・・ハマキナマコ 葉巻海鼠(fragilis) ○Stolus・・・フクロナマコ 袋海鼠(buccalis) ○Thyone・・・チオーネ 白鬚海鼠(benti) - Sclerodactylidae - ○Afrocucumis・・・ムラサキグミモドキ 紫胡頽子[グミ]擬(africana) ○Cladolabes・・・クラドラベス 足裏橙胡頽子[グミ]擬(schmeltzii) ○Eupentacta・・・イシコ 石海鼠[イシコ](chronhjelmi) ○Euthyonidiella・・・ユウチオニディエラ ○Ohshimella ○Pseudothyone ○Sclerodactyla・・・スクレロダクティラ - Paracucumidae - - Placothuriidae - ○Placothuria・・・ウロコナマコ 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |