表紙 目次 | ➶ ■■■ 2017年11月27日 ■■■ やむし…目と口頭部以外はほぼ透明で細長い。しかし、目の存在がはっきりわかる頭があり、胴体と側鰭と尾鰭が存在する点でいかにも魚的な形態。プランクトンとして有名な甲殻類の櫂足に次いで沢山棲息していると言われている、極めてポピュラーな生物。その割には、120種と思ったほどには分化が進んでいないようだ。ボディプランについてはえらく保守的なのである。(淡水には未進出なこともあろうが。) もちろん、深度的な棲み分けはあるが。・・・ 表層(200m 以浅): 硬矢虫,大硬矢虫,フクラ矢虫,鋸矢虫,沿岸矢虫.…大さな目 中層上部(200〜500m): 大矢虫,長目矢虫,琴型矢虫.…小さな目 中層下部(500〜1,000m): クローン矢虫,深海太矢虫,盲目矢虫.…眼色素微量・欠落 どの種にしても、冒頭に書いたように、頭部+胴部+尾部いう構造は全く同じ。目立つのは、大写しにすれば牙に見える"毛顎"を持つ口と小さな目。種の数はそれなりに存在するが、形や色の違いは大きなものではない。ただ、長さに関しては数mm〜4cmと相当なひらきがある。 例外的に底棲タイプ(磯矢虫)もあるが、基本的には海中で浮遊生活を送る種である。ただ、鰭があるので、自律的に餌に向かって突進し、キチン質の堅い鬚で捕獲し丸呑みにする。 そこだけ取り上げれば、魚類と似ていると言えなくもないが、魚が持つ背鰭や尾鰭のように垂直ではなく、前後2対の側鰭と三角形の尾鰭はいずれも水平についている。それに、餌収集器(フィルター)あるいは呼吸器としての鰓は無いし、心臓血管系も備えていない。消化器系は存在するものの、口から直に腸となり、直線的に胴部後端の肛門に繋がっているだけ。従って、魚類と出自が共通とは思えない。 頭・・・目+顎毛+口(歯) 胴・・・腸管 卵巣 前鰭+後鰭 尾・・・精巣 尾鰭 飼育はいかにも難しそうだが、専門家は10年のレベルで実験室で系統を保っているらしい。 → 後藤太一郎 (三重大学教育学部):「ヤムシの魅力 (2010年2月24日)」 (C) 藤原ナチュラルヒストリー振興財団 "ナチュラルヒストリーを学び、究める。" 種の数から見て、環境に応じて細かく棲み分けているのは確かだろうが、どうあれ外洋性臭い場所。従って、滅多にお目にかかれない生物と思っていたが、その気になれば家庭でもお気軽に乾燥標本(底棲の磯矢虫類)を眺めることができるとのこと。そういえば、蛸、烏賊、蟹以外にその手の生物を見かけたことがある。 → チリモン図鑑"ヤムシのなかま" 「チリメンモンスター(R)」(C) きしわだ自然友の会] この虫だが、系統のどの辺りに位置するかはっきりしていなかった。素人的な解釈では、このような場合は、早い時代で分岐した可能性が高いと見なすことになる。つまり、左右相称動物が生まれ、節足動物や軟体動物へと怒涛のように進化が進む動物主流派の初期の頃のボデイプアランを余り変化させずに生きて来た種であると考える訳である。(器質的には魚に似ているようにも思えるから、主流派の前口系ではなく、少数派としてそれなりに繁栄をおさめている脊椎動物に繋がる後口系のイメージも被さる。このことは、前口と後口分岐の時代に生まれた種ということかも。 前口の元祖の位置というのが妥当なところなのだろう。)[→] 尚、カナダ ロッキー山脈のバージェス頁岩で発見されたアミスクウィア(地名由来の命名:無顎魚類化石が発見されたのと同時代か。)[→想像図 by Giant Blue Anteater]は、素人的常識から判断すれば、矢虫のご先祖様以外のなにものでもない。(高校テキストも含め、子孫を残さず絶滅し、現生動物との類縁関係は不明で、未知の動物門の生物であるとの記載が多い。) 外骨格が無いから、ゼラチン様の透明な体躯の生物と推定されているが、そこらはどうだか。構造的にはっきりしているのは、先端に1対の触角。側面に1対と後端に鰭が伸びていること。いかにも浮遊を狙った体形。無棘歯なので毛顎動物ではないということらしいが。矢虫の化石は滅多に見つからないようだから、コレとしたいところ。 ただ、確からしそうな化石はあることにはある。・・・ ("The First Arrow Worm from Lower Cambrian Stratum near Kunming" Chinese Academy of Sciences Oct 22, 2002) →[PGOTO]"CHAETOGNATHA Arrow Worms" (C) Great Barrier Reef Invertebrates 2011 ┼┼【毛顎動物/Chaetognatha】 (矢虫/Arrowworm) ┼┼┼現生矢虫/Sagittoidea…浮遊性(例外あり) ┼┼┼◆無(横断筋)膜筋Aphragmophora ┼┼┼┼┼-Bathybelidae ┼┼┼┼┼┼〇Bathybelos ┼┼┼┼┼┼┼(typhlops) ┼┼┼┼┼-Krohnittidae ┼┼┼┼┼┼〇Krohnitta・・・クローニッタ類 ┼┼┼┼┼┼┼細矢虫(subtilis) ┼┼┼┼┼┼┼アイダ矢虫(pacifica) ┼┼┼┼┼-Pterokrohniidae ┼┼┼┼┼┼〇Pterokrohnia ┼┼┼┼┼┼┼(arabica) ┼┼┼┼┼-Pterosagittidae…(横断筋)膜筋 ┼┼┼┼┼┼〇Pterosagitta・・・ヘラガタヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼篦形矢虫(draco) ┼┼┼┼┼-Sagittidae ┼┼┼┼┼┼〇Flaccisagitta・・・オオヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼フクラ矢虫(enflata)…星状眼色素 ┼┼┼┼┼┼┼大矢虫(hexaptera) ┼┼┼┼┼┼〇Aidanosagitta・・・ヒメカタヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼ナイカイ矢虫(crassa) ┼┼┼┼┼┼┼姫硬矢虫(neglec) ┼┼┼┼┼┼┼太襟矢虫(regularis) ┼┼┼┼┼┼〇Caecosagitta・・・メクラヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼盲目矢虫(macrocephala) ┼┼┼┼┼┼〇Decipisagitta ┼┼┼┼┼┼┼長目矢虫(decipiens) ┼┼┼┼┼┼┼(neodecipiens) ┼┼┼┼┼┼〇Ferosagitta ┼┼┼┼┼┼┼硬矢虫(ferox) ┼┼┼┼┼┼┼大硬矢虫(robusta) ┼┼┼┼┼┼〇Mesosagitta・・・ヒメヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼姫矢虫(minima)…ト字状眼色素 ┼┼┼┼┼┼〇Parasagitta・・・キタヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼北矢虫(elegsns) ┼┼┼┼┼┼〇Pseudosagitta・・・コトガタヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼琴型矢虫(lyra) ┼┼┼┼┼┼┼北琴型矢虫(scrippsae) ┼┼┼┼┼┼┼(maxima) ┼┼┼┼┼┼〇Sagitta・・・ヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼矢虫(bipunctata) ┼┼┼┼┼┼┼(elegans) ┼┼┼┼┼┼┼(tumida) ┼┼┼┼┼┼〇Serratosagitta・・・ノコギリヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼鋸矢虫(pacifica) ┼┼┼┼┼┼┼姫鋸矢虫(pseudoserratodentata) ┼┼┼┼┼┼〇Solidosagitta・・・シンカイフトヤムシ属 ┼┼┼┼┼┼┼深海太矢虫(zetesios) ┼┼┼┼┼┼〇Zonosagitta・・・ベドートヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼沿岸矢虫(nagae)…E字状眼色素 ┼┼┼┼┼┼┼熱帯矢虫(pulchra) ┼┼┼◆(有横断筋)膜筋Phragmophora ┼┼┼┼┼-Eukrohniidae ┼┼┼┼┼┼〇Eukrohnia・・・クローンヤムシ類 ┼┼┼┼┼┼┼クローン矢虫(hamata) ┼┼┼┼┼┼┼(kitoui) ┼┼┼┼┼┼┼(fowleri) ┼┼┼┼┼┼┼(bathypelagica) ┼┼┼┼┼-Heterokrohniidae ┼┼┼┼┼┼〇Archeterokrohnia ┼┼┼┼┼┼┼(rubra) ┼┼┼┼┼┼〇Heterokrohnia・・・ヘテロクロニア類 ┼┼┼┼┼┼〇Xenokrohnia・・・セノクロニア類 ┼┼┼┼┼-Krohnittellidae ┼┼┼┼┼┼〇Krohnittella ┼┼┼┼┼-Spadellidae ┼┼┼┼┼┼〇Spadella ┼┼┼┼┼┼┼磯矢虫(cephaloptera)…底棲 ┼┼┼┼┼┼┼(angulata) ┼┼┼┼┼┼┼(boucheri) ┼┼┼┼┼┼┼(japonica) ┼┼┼┼┼┼〇Bathyspadella ┼┼┼┼┼┼┼(edentata) ┼┼┼┼┼┼〇Paraspadella ┼┼┼┼┼┼┼(gotoi) ┼┼┼┼┼┼┼楓磯矢虫(schizoptera) ┼┼┼┼┼┼〇Calispadella ┼┼┼┼┼┼〇Hemispadella ┼┼┼◇昔矢虫/Archisagittoidea(古生代カンブリア紀中期化石) ┼┼┼┼┼-Amiskwiidae ┼┼┼┼┼┼〇Amiskwia ┼┼┼┼┼┼┼アミスクウィア(sagittiformis) 【バージェス】 ┼┼┼◇n.a.[化石] ┼┼┼┼┼┼○Protosagitta【澄江】<520Mya> ┼┼┼┼┼┼○Eognathacantha【澄江】<520Mya> ┼┼┼┼┼┼↓進化タイプ ┼┼┼┼┼┼○Paucijaculum【米イリノイ】<360-286 Mya> ┼┼┼("Oesia"は擬宝珠虫(半索動物)とした。) (分類一部参照) ママでなく、素人が改編 JODC(日本海洋データセンター)GODAC/JAMSTEC 「動物」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |